公務員は退職代行を使える?辞職の承認と弁護士運営が必要な理由
公務員も退職代行を使えますが、民間と同じ感覚では進められません。民間の会社員は、民法第627条1項で退職を申し入れてから2週間で退職が成立します。公務員は、辞職を申し出て、任命権者が承認することで退職が成立します。承認する側とのやり取りが避けにくく、そこが調整や交渉になりそうなときは、弁護士運営の退職代行が選択肢になります。辞職願を出して承認を待つだけなら、自分で進める方法もあります。
公務員の退職は「辞職の承認」で成り立つ
国家公務員(一般職)の辞職は、人事院規則8-12第51条に定めがあります。職員から書面で辞職の申出があったときは、任命権者は、特に支障のない限り、これを承認するものとされています。退職は、承認によって成立する形です。
民間との違いを並べると、次のようになります。
| 項目 | 民間(期間の定めがない雇用) | 公務員(国家公務員一般職の例) |
|---|---|---|
| 退職の成立 | 申入れから2週間で終了 | 書面の申出に対し、任命権者が承認 |
| 根拠 | 民法第627条1項 | 人事院規則8-12第51条 |
| 日数の定め | 2週間 | 規則に日数の定めなし |
| 相手が拒んだとき | 申入れが届けば終了 | 「特に支障のない限り承認」とされる(承認されないときは理由と手続きを人事担当に書面で確かめる) |
注意したいのは、承認する権限を持つのは任命権者で、退職代行の事業者ではないという点です。事業者が「代わりに承認を得る」ことはできません。
地方公務員は、地方公務員法に辞職の明文規定がなく、各自治体の規則などによって、辞職願の出し方が決まっています。国と同じく辞職願を出し、任命権者が承認する形になるのが一般的ですが、自分の自治体の規則(「職員の任用に関する規則」など)で確かめます。
所属がどこかによって、窓口が変わります。
- 国家公務員(一般職):所属府省の人事担当、人事院
- 地方公務員:自治体の人事担当、人事委員会・公平委員会。市町村の消防職員や、公立学校の教員も、地方公務員として扱われます
- 自衛官:特別職の国家公務員で、人事院の制度の対象ではありません。自衛隊を辞めたい:自衛官は辞められる?退職の承認と退職代行の扱いで扱います
なぜ弁護士運営を軸に考えるのか
民間の退職代行は、運営形態で、できることが分かれます。民間企業は退職の意思を伝える範囲にとどまり、労働組合は組合員のために使用者と交渉する権限を持ちます。違いの全体は退職代行の弁護士・労働組合・民間企業の違い:交渉できる範囲を比較にあります。
公務員の辞職で弁護士運営を軸に考える理由は、次の3点です。
- 承認をめぐるやり取りが生じやすい:辞職の申出を伝えるだけなら、民間企業の退職代行も本人の意思を伝える使者の範囲でできます。しかし、承認の可否や時期、退職日をめぐって任命権者と調整や交渉になると、弁護士法第72条により、弁護士でない者は報酬目的で代理や和解などを業とすることができません
- 辞職を強要された場合に備えられる:国家公務員では、辞職を強要された場合の辞職承認処分が、人事院への審査請求の対象に含まれます。不利益処分の審査請求は、処分説明書を受け取った翌日から3か月以内に行う決まりです(国家公務員法第90条の2)。こうした手続きは、弁護士が扱える領域です
- 労働組合型は、民間と同じには考えられない:一般職の国家公務員や地方公務員の団体は、法律上「職員団体」という別の枠組みで扱われます(国家公務員法第108条の2、地方公務員法第52条)。労働組合運営の退職代行が公務員の辞職に対応しているかは、運営者ごとに書面で確かめる必要があります
これは、公務員が弁護士運営でなければ辞められないという意味ではありません。自分で辞職願を出して辞めることもできます。弁護士運営を軸にするのは、承認をめぐって任命権者と調整が必要になりそうなときです。弁護士の退職代行の範囲は弁護士の退職代行でできること:未払い賃金・有給の交渉が要る場合で確かめられます。
辞職の手続きと、退職後のお金
流れは、次の順になります。
- 身分の確認:国家公務員か、地方公務員か、企業職員・会計年度任用職員か。窓口と規則が変わります
- 辞職願の準備:書面で出します。提出先と様式は、所属の人事担当に聞くか、規則で調べます
- 承認を待つ期間の過ごし方:承認までの日数に定めはありません。有給が残っていれば、承認までの期間に使えるかを確かめます
- 退職日までの引継ぎと貸与品の返却:IDカード、鍵、公用のPCなどを返します
- 退職手当と社会保険:共済組合、年金、健康保険の切り替えを確かめます
退職後のお金で押さえたいのが、失業給付です。雇用保険法第6条は、国や自治体に雇用される人のうち、退職手当などの給与が雇用保険の給付を超えると認められる人で省令の定める人を、適用除外にしています。そのかわり、国家公務員退職手当法第10条には、勤続12月以上などの条件で退職し、受け取った退職手当が雇用保険の基本手当に満たない場合に、差額を「失業者の退職手当」として支給する定めがあります。地方公務員は、各自治体の退職手当条例が根拠です。
辞職を強要された場合の相談先は、国家公務員なら人事院の審査請求、地方公務員なら人事委員会・公平委員会の苦情相談です。総務省の令和7年度調査では、地方公務員の苦情処理の新規相談は2,570件で、うちパワーハラスメントが681件と最も多くなっています。
民間企業のように2週間で成立するわけではないことを前提に、まず自分の身分と、窓口の確認から始めてください。パワハラが理由の公務員の辞職願の出し方は公務員がパワハラで退職するとき:辞職願の出し方と承認の流れで扱っています。
公務員の辞職で、運営者に確かめておきたい点は次のとおりです。
公立学校の教員の辞職は教員が退職代行を使うときで、私立と公立の違いも含めて扱っています。
よくある質問
Q. 公務員が辞職願を出せば、2週間で辞められますか?
民間の「2週間」は当てはまりません。国家公務員は、書面で辞職を申し出ると、任命権者が特に支障のない限り承認する扱いで、承認によって退職が成立します。日数の定めは規則にありません。地方公務員は自治体の規則で定められているため、所属する自治体の規則を調べます。
Q. 公務員が失業保険をもらえないというのは本当ですか?
雇用保険は、国や自治体に雇われる人のうち、退職手当などが雇用保険の給付を上回ると認められる人を適用除外にしています。そのかわり、勤続12月以上などの条件で退職手当の差額が支払われる制度があります。国家公務員は国家公務員退職手当法第10条、地方公務員は各自治体の条例で確かめます。
Q. 辞職を強要されたと感じたときは、どこに相談できますか?
国家公務員は、辞職を強要された場合の辞職承認処分が、人事院への審査請求の対象に含まれます。地方公務員は、人事委員会・公平委員会の苦情相談や審査請求があります。期限が短いので、早めに確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 人事院規則8-12(職員の任免) 第51条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国家公務員法 第61条・第89条〜第92条の2・第108条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不利益処分審査請求(辞職を強要された場合の辞職承認処分を含む)(人事院)
- 国家公務員退職手当法 第10条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 雇用保険法 第6条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方公務員法 第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 令和7年度 措置要求及び審査請求の状況等に関する調査(地方公務員)(総務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。