カスハラ対策義務化で会社は何をする?従業員が確かめたい措置の中身
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カスハラ対策義務化とは、2026年10月1日に施行された改正労働施策総合推進法第33条により、全ての事業主に顧客等からのカスハラを防ぐ措置が義務づけられたことを指します。会社がすべきことは、指針で大きく5つ(方針と対処の内容の明確化・周知、相談窓口、事後の迅速で適切な対応、抑止のための措置、プライバシー保護と不利益取扱いをしない旨の周知)に整理されています。従業員は、就業規則や社内の掲示でこれらがあるかを確かめ、なければ上司・人事に尋ね、動かないときは労働局に相談できます。
カスハラ対策義務化の中身:会社が講じる5つの措置
根拠は労働施策総合推進法第33条と、厚生労働省の「カスタマーハラスメントに関する指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)です。カスハラの定義そのものはカスハラとは?定義と2026年10月から会社に課された措置義務にまとめ、この記事では会社の措置を、従業員の側から見て確かめる形で整理します。
| 措置 | 指針に書かれていること | 従業員が確かめる点 |
|---|---|---|
| ① 方針と対処の内容 | カスハラには毅然と対応し、労働者を保護する方針を明確にして周知する。対処の内容をあらかじめ定めて周知する(方針を顧客等に知らせることも被害の防止に効果的とされる) | 就業規則・社内規程・掲示・研修資料に方針と対応手順が書かれているか |
| ② 相談窓口 | 相談窓口を定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする。上司に当たる管理監督者を担当に定めることや、他のハラスメントの窓口と一体で置くことも考えられる | 誰に・どの方法で相談するかを知っているか |
| ③ 事後の対応 | 事実を確かめ、被害を受けた人への配慮と再発防止を行う | 相談したあと、何がいつ行われるか |
| ④ 抑止のための措置 | 特に悪質なものへの対処方針を定め、対処できる体制を整える | 警察への通報や警告などの判断を誰がするか |
| ⑤ 併せて講じる措置 | プライバシーの保護と、相談・協力・労働局への相談等を理由に不利益な取扱いをしない旨の周知 | 相談しても評価や配置で不利にならないと明示されているか |
措置を講じるとき、会社は消費者の権利や、障害者差別解消法の合理的配慮にも留意するよう求められています。医療や介護のように法律でサービスの提供が義務づけられている業種や、生命・心身の健康に重大な影響が及ぶ場面への留意も、指針に書かれています。
職場で確かめたい「対処の内容」:一人で抱えないための決まり
従業員にとって最も身近なのが、①の「対処の内容」です。指針は、会社があらかじめ定めて周知しておく対処の例として、次を挙げています。
- 管理監督者などに直ちに報告し、指示を仰ぐ
- 可能な限り一人で対応させない。必要に応じて管理監督者などが代わって対応する
- 顧客等とのやり取りを録音・録画する(個人情報保護法などを守る)
- 十分に説明しても繰り返し要求が続く場合は、一定の時間がたったら退店を求める・電話を切る
- 暴行・傷害・脅迫など犯罪に当たりうる言動は警察へ通報する
- 本社・本部などへ情報を共有する
- 法的な手続きが必要な場合は法務部門などと連携し、弁護士に相談する
| 確かめること | はい/いいえ |
|---|---|
| カスハラに毅然と対応し従業員を守る、という方針が文書になっている | |
| 現場で困ったときに誰へ報告するかが決まっている | |
| 一人で対応させず、交代や複数対応をする手順がある | |
| 通話や接客を録音・録画するかどうか、そのルールが決まっている | |
| 何分・何回で対応を打ち切るか、退店や電話の終了の基準がある | |
| 警察へ通報する判断を誰がするかが決まっている | |
| カスハラの相談窓口が周知されている | |
| 相談しても不利益な扱いをしないと明示されている |
「いいえ」が多い場合も、それだけで違反と決まるわけではありません。ただ、指針の例と見比べて足りない点を上司や人事に具体的に尋ねる材料になります。厚生労働省のQ&Aは、業界団体が作ったマニュアルを配るだけでは措置を講じたことにはならず、自社の実情に合わせて方針と対処の内容を定めて周知する必要がある、という考え方を示しています。
相談窓口と事後の対応:相談したら会社は何をするか
指針は、相談を受けた会社が行う事後の対応を次のように定めています。
事実の確認:管理監督者などがその場で状況を確かめる、周囲の労働者から話を聞く、録音・録画を確かめる、必要で可能な場合は行為者からも聞く。確かめるのが難しい場合は、労働局の調停など中立な第三者機関に委ねることも挙げられています。
被害を受けた人への配慮:
- 管理監督者などが代わって対応する
- 行為者から引き離す、担当を替える、複数人で対応する
- 引き離すための配置転換
- メンタルヘルス不調への相談対応
- 犯罪に当たりうる言動の警察への通報、弁護士への相談
再発防止:方針の再周知に加え、商品・サービスや接客の問題を改善すること。カスハラの事実がはっきりしなかった場合でも、再発防止の措置は講じるものとされています。
被害を受けた側として、会社にどう伝えて何を求めるかはカスハラ被害を受けたときの対処:記録・報告・会社に求める対応で文例つきで説明しています。
抑止のための措置:悪質なケースへの備え
第33条で新しく「抑止のための措置」が明記されました。指針は、特に悪質と考えられるものへの対処方針をあらかじめ定めて周知し、対処できる体制を整えることを求め、例として次を挙げています。
- 警察への通報
- 警告文の発出
- 法令の範囲内での商品の販売やサービス提供の停止
- 出入り禁止
- 民事保全法にもとづく仮処分命令の申立て
これらは例であり、どれを使うかは会社が定めます。厚生労働省のQ&Aは、改正法は会社に措置を義務づけたもので、顧客に対する新しい法的な権利や権限を会社に与えたものではないと説明しています。「法律で出入り禁止にできるようになった」という理解は正確ではありません。医療・介護・教育などの現場の事情は、介護現場のカスハラ:利用者・家族からの暴言・セクハラへの対応などの職種別の記事で扱っています。
会社が動かないとき:確かめ方と社外の相談先
方針も窓口も見当たらない、相談しても放置される、という場合は、次の順で動けます。
- 文書で尋ねる:口頭より、日付の残るメールで尋ねるほうが後で経緯を示せます。
- 労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する:カスハラの措置義務に関する相談先です。会社と従業員の紛争には、労働局長の助言・指導・勧告(第36条)と、紛争調整委員会の調停(第37条)が使えます。
- 行政の関与:厚生労働大臣(労働局)は会社に報告を求め(第45条)、助言・指導・勧告を行い、勧告に従わない場合は会社名を公表できます(第42条)。
文例(人事・上司へのメール):「カスハラ対策が事業主の義務になったと聞きました。当店で顧客から威圧的な言動を受けた場合の報告先と対応の手順、相談窓口、通話を録音するかどうかの決まりを教えていただけますか。手順書があれば共有をお願いします。」
相談したことや労働局に相談・申請したことを理由とする不利益な取扱いは、第33条2項・第36条2項・第37条2項で禁じられています。窓口の役割は労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできることで説明しています。
よくある質問
Q. 従業員が数人の小さな店や会社も、カスハラ対策の義務がありますか?
あります。厚生労働省は2026年10月1日からカスハラ対策が「全ての事業主の義務」になったと案内しており、規模による猶予は設けられていません。指針は、相談の担当者に上司に当たる管理監督者を定めることや、外部の機関に相談対応を委託することを例に挙げています。小さな職場では、そうした形で規模に合った窓口を定めることになります。
Q. 取引先の社員からのカスハラで、相手の会社が事実確認に協力してくれない場合は?
法第33条3項は、他の会社から措置への協力を求められたら応じるよう努めると定めています。厚生労働省のQ&Aは、相手の会社が協力に応じない場合、都道府県労働局に相談でき、労働局が協力に応じるよう助言するなどの対応をとるとしています。まずは自社の窓口から相手の会社に協力を求めてもらうよう頼みます。
出典・参考にした公的な情報
- 労働施策総合推進法 第33条・第36条・第37条・第42条・第45条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- カスタマーハラスメントに関する指針(令和8年厚生労働省告示第51号)(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメント関係指針の解釈事項Q&A(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。