ハラスメントの種類 / 手順

アカハラを訴える前に:大学の相談窓口・記録・学外の相談先の順番

この記事のもくじ
  1. アカハラを訴える方法は5段階:学内から学外・法的手段へ
  2. ステップ1:相談の前に残しておく記録
  3. ステップ2・3:学内の窓口に相談し、必要なら申立てをする
  4. ステップ4:学外の相談先を立場で選ぶ
  5. ステップ5:法的手段を考えるときの準備

アカハラを訴えるときは、いきなり裁判を考えるより、①記録を残す、②学内の相談窓口に相談する、③必要なら正式な申立てをする、④学外の窓口を使う、⑤法的手段を検討する、という順番で動くと、途中で手段を選び直しやすくなります。大学院生など学生か、大学に雇われている教職員・研究員かで、学外で使える窓口や手続が違う点に注意が必要です。ここでは各段階でできることと準備を示します。訴えが通るかどうかの見込みは、個別の事実によって変わるため、この記事では判断しません。

アカハラを訴える方法は5段階:学内から学外・法的手段へ

「訴える」には、大学に調査と措置を求めることから、裁判所の手続までの幅があります。段階ごとに、何をしてもらえるかと注意点を並べます。

段階 何をしてもらえるか 使える人 注意点
① 記録 ― 全員 後のすべての段階の材料になる。始めるのは早いほどよい
② 学内の相談 話を聞く、助言、指導教員との調整、心身のケアの紹介 学生・教職員 相談だけでは調査が始まらない規程もある
③ 学内の正式な申立て 調査委員会などによる事実の調査、大学としての措置 学生・教職員 相手に申立ての内容が伝わる。手続や期間は規程による
③' 研究不正の告発 盗用などの疑いの調査 研究に関わる人(学外の人も可) 研究成果の無断使用が絡むとき。ハラスメントの申立てとは別の手続
④ 学外の窓口 相談・助言、手続の案内。雇われている人は労働局の援助・調停 立場によって違う 大学に命令する窓口ではない
⑤ 法的手段 損害賠償などの請求、訴訟。雇われている人は労働審判も 学生・教職員(労働審判は雇われている人) 弁護士への相談が前提。期限がある
流れ図:アカハラを訴えるまでの順番
  1. 記録を始める(今日から)
  2. 学内のハラスメント相談窓口に相談する(相談のみで終える選択もできる)
  3. 改善しない → 正式な申立て(調査・措置)/成果の盗用 → 研究不正の受付窓口
  4. 学内で解決しない・相談しにくい → 学外の窓口(学生:法務局・法テラス/雇われている人:労働局)
  5. 損害の回復を求めたい → 弁護士に相談し、法的手段を検討

ステップ1:相談の前に残しておく記録

学内の窓口でも学外でも、最初に聞かれるのは「いつ、誰に、何を言われたか・されたか」です。記憶が新しいうちに、出来事ごとに次の項目を書き残します。書き方の基本はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきが参考になります。

項目 書き方の例
日時・場所 2026年10月20日(火)16時ごろ、研究室のミーティング室
相手と同席者 ○○教授。同席は修士2年の△△さん
言われた言葉・されたこと 言葉はできるだけそのまま書く。要約しない
前後の経緯 何の話の流れでそうなったか(中間報告の後、など)
自分への影響 眠れなかった、翌日のゼミを休んだ、通院した

アカハラに特有の記録もあります。

  • 指導の記録:面談を申し込んだメールと、その返事(または返事がないこと)。原稿を提出した日と、戻ってきた日。
  • 研究への自分の寄与:実験ノート、データファイルの作成日時、共有フォルダの更新履歴、投稿前の原稿の版。成果の横取りを示すときの土台になります。
  • 進路に関するやり取り:退学・休学・移籍を勧められた言葉、推薦書の依頼と返事。
  • 体調の記録:受診した日、診断書、休んだ日。

研究データの持ち出しや複製は、大学の規程で制限されていることがあります。記録のためにデータそのものを持ち出すのではなく、「どのファイルを、いつ、自分が作ったか」を一覧にしておくと、規程との衝突を避けられます。

ステップ2・3:学内の窓口に相談し、必要なら申立てをする

学内の窓口に連絡する前に、大学のハラスメント防止規程を読み、相談と申立ての違い、調査の流れ、申立てができる期間を確かめておきます。最初の連絡はメールにすると、相談した日付が残ります。

文例:「○○研究科修士2年の□□です。指導教員からの言動についてご相談したく、面談の日程をお願いできますでしょうか。今回はまず相談として話を聞いていただきたく、相手方への連絡は、ご相談のうえで判断したいと考えています。」

面談では、次の質問をしておくと、その後の見通しが立ちます。

  1. 今日の相談の内容は、誰まで共有されますか。相手の教員に伝わるのはどの段階ですか。
  2. 正式な申立てをした場合、調査の期間の目安と、結果の知らされ方はどうなりますか。
  3. 調査の間、指導教員を替える、接触しないで済むようにするなどの措置はありますか。
  4. 相談や申立てをしたことを理由にした不利益な扱いについて、規程にどんな定めがありますか。
  5. 学位審査や成績評価に相手の教員が関わる場合、どう扱われますか。

研究成果の盗用が疑われるときは、ハラスメントの窓口とあわせて、研究不正の受付窓口に相談できます。文部科学省のガイドラインは、研究機関に告発の受付窓口を置き、告発の意思を明示しない相談も受けること、告発者が書面・電話・電子メール・面談などの方法を選べるようにすることを求めています。悪意に基づく告発でない限り、告発したことを理由に不利益な取扱いをしてはならない、とも定めています。

ステップ4:学外の相談先を立場で選ぶ

学内で相談しにくい、または相談しても改善しないときは、学外の窓口に移ります。学外の窓口は大学に命令して処分させる場所ではありませんが、手続の選び方や、使える制度を整理してもらえます。

立場 学外の主な窓口 できること
学部生・大学院生 法務省のみんなの人権110番(法務局)、法テラス 人権問題としての相談、法的な手続や相談窓口の案内
雇われている教職員・ポスドク・雇用契約のあるTA・RA 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー 職場のハラスメントの相談。パワハラの措置義務をめぐる会社(大学)との紛争は、労働局長の援助(労働施策総合推進法第36条)や調停(同第37条)の対象
公務員の身分の教職員 人事委員会(公平委員会)など 公務員の苦情相談の手続

番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧にまとめています。法テラスの無料法律相談には収入・資産の条件があり、使い方は法テラスでパワハラを相談するにはで説明しています。

ステップ5:法的手段を考えるときの準備

損害賠償などを求めたいとき、相手の教員個人や大学に対して何を請求できるかは、事実関係によって変わり、判断できるのは弁護士です。相談に行く前に、ステップ1の記録を時系列表にまとめ、学内の相談・申立ての記録(日付、窓口の回答、調査結果の通知)を添えると、限られた相談時間を事実の説明に使えます。準備の一覧はパワハラを弁護士に相談する前の準備を参考にしてください。

大学に雇われている人は、裁判官と労働関係の専門家による労働審判という手続も選択肢になります。労働審判法は、特別の事情がない限り3回以内の期日で審理を終えることを定めています。手段ごとの費用・期間・負担の違いは、パワハラで訴える前に知りたいこと:手段の種類・費用・期間を比較で比べています。アカハラにどんな言動が当たるか、典型例から確かめたいときはアカハラとは?大学で教員から受ける嫌がらせの例と相談先に戻ってください。

よくある質問

Q. アカハラを匿名で訴えることはできますか?

学内のハラスメント窓口で匿名の相談を受けるかは、大学の規程によります。調査では相手の言い分も聞くため、正式な申立てに進むと名前が伝わる場合があります。どの段階で伝わるかを、相談の最初に窓口へ尋ねておきます。研究不正の告発については、文部科学省のガイドラインが、原則は名前を明かして行うものとしつつ、匿名の告発も内容に応じて扱えるとしています。

Q. 卒業や退職をした後でも申し立てられますか?

申立てができる期間や、在籍していない人の申立てを受けるかは、大学の規程で決まっています。法的な手段にも期限があるため、在籍中から記録を残し、離れる前に規程の写しを手元に保存しておくと、後で選べる手段が増えます。

Q. 録音してもいいですか?

先に、大学や研究室の規則に録音の制限がないかを確かめます。録音するなら自分が参加している面談に限り、自分の記録と相談のために使い、SNSなどで公開しないことが前提です。相手の同意と使い方の注意は[パワハラを無断で録音してもいい?相手の同意と使い方の注意点](/rokuon-mudan/)で整理しています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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