パワハラを弁護士に相談する前の準備:持参する資料と聞くことリスト
パワハラを弁護士に相談する前にそろえるのは、①出来事を日付順に並べた時系列表、②録音・メール・メモなどの証拠、③会社に相談したやり取り、④雇用契約書や給与明細などの書類、⑤通院や休職の記録、の5つです。相談で聞くことは、「見込みの根拠」「費用」「期間」「進め方の方針」の4点に絞ります。相談時間は限られているので、資料は1枚の時系列表を軸に並べ、質問はメモにして持っていくと、説明だけで時間が終わるのを防げます。
予約の段階で伝えることと、確かめること
弁護士会の法律相談センターや法律事務所に予約するときは、相談したい内容をひと言で伝えます。たとえば大阪弁護士会の相談センターでは、予約の際に「相談したい内容」「希望の日時」「希望の相談センター」「名前」「連絡先」の5点を伝えるよう案内しています。
パワハラの相談では、これに加えて相手方になる会社の名前と、加害者の名前を予約の時点で伝えておくと話が早く進みます。弁護士法25条は、相手方の協議を受けて賛助した事件などについて、弁護士が職務を行ってはならないと定めています。会社と関わりのある弁護士は、この規定や利益の対立を避けるきまりで、依頼を受けられないことがあります。事前に伝えておけば、相談当日に断られる事態を避けられます。
予約のときに確かめておくことは、次の4つです。
- 相談時間は何分か、延長できるか
- 相談料はいくらか、無料になる条件はあるか
- 対面・電話・オンラインのどれで相談できるか
- 事前に資料を送っておけるか
弁護士は、弁護士法23条により、法律に別段の定めがある場合を除いて、職務上知った秘密を守る義務を負っています。社内の出来事や心身の状態を具体的に話しても、弁護士の側から会社に伝わる仕組みではありません。
持参する資料のチェックリスト
資料は、多ければよいわけではありません。弁護士が見たいのは、「何が、いつ、どのくらい続いたか」と「それを裏づけるものがあるか」です。次の表を使って、手元にあるものに印をつけていってください。
| 資料 | なぜ必要か | 用意の仕方 |
|---|---|---|
| 時系列表(A4で1〜2枚) | 出来事の全体を短時間で伝える | 日付・誰が・何を言った(した)か・自分の対応・証拠の有無を1行ずつ |
| 録音・動画 | 発言の内容と口調を示す | 元データは保存したまま、コピーと再生位置のメモ |
| メール・チャット・LINE | 指示や暴言の日時と送り主を示す | 送信日時と相手が分かる画面、可能なら元データの書き出し |
| 日記・メモ | 録音がない出来事を補う | その日のうちに書いたものか、後から書いたものかを分けておく |
| 会社への相談の記録 | 会社がどう対応したかを示す | 相談した日、相手、伝えた内容、会社の回答(メール・面談記録) |
| 就業規則・ハラスメント防止規程 | 社内の手続と処分の決まりを確かめる | 社内のイントラネットなどで本人が閲覧できるもの |
| 雇用契約書・労働条件通知書・給与明細 | 雇用の形と賃金を確かめる | 直近数か月分と、変更があった時期の分 |
| 人事上の書類(評価・辞令・注意書) | 不利益な扱いの有無を確かめる | 交付された日付が分かる形で |
| 診断書・通院の領収書・休職の書類 | 心身への影響と期間を示す | 初診日と診断名が分かるもの |
時系列表の書き方はパワハラの時系列表の作り方、日々の記録の残し方はパワハラの記録の書き方に記入例があります。証拠が少ないと感じても、相談をあきらめる理由にはなりません。何が足りないかを弁護士に見てもらうこと自体が、相談の目的の一つです。
労働局などの公的な窓口への相談と準備を共通にしたいときは、パワハラ相談の準備チェックリストも使えます。弁護士相談では、その準備に「人事上の書類」と「お金に関する書類(給与明細・通院費)」を足すのがポイントです。
相談で聞くことリスト:見込みの根拠・費用・期間・方針
質問は、次の4つのまとまりで用意します。紙に書いて持参し、答えをその場でメモしてください。
1. 見込みの根拠
- 手元の証拠で、どの事実を示せそうか。足りない点は何か
- これから集められる証拠は何か。在職中にできることは何か
- 責任を問う相手は会社か、加害者個人か、両方か
2. 費用
- 相談料・着手金・報酬金・実費・日当はそれぞれいくらか
- 交渉から労働審判、訴訟へ進んだときに追加の費用がかかるか
- 法テラスの立替えや、保険の弁護士費用特約が使えるか
3. 期間
- 選べる手段(交渉・労働局の調停・労働審判・訴訟)ごとの期間の見通し
- 請求できる期限(時効)がいつ来るか
4. 進め方の方針
- 在職を続けたい・退職したいという希望が、進め方にどう影響するか
- 会社に最初に連絡するのはいつ、どんな方法か
- 依頼した場合、職場での日常の連絡はどうすればよいか
聞き方に迷ったら、次のような言い方で切り出せます。
例:「この記録で、どの出来事なら示せそうか、逆にどこが弱いかを教えていただけますか」
例:「交渉だけで終わった場合と、労働審判まで進んだ場合で、費用と期間はどのくらい違いますか」
費用の項目の意味と見積りの確かめ方はパワハラの弁護士費用の内訳、保険の特約が使えるかは弁護士費用特約はパワハラに使える?で確かめられます。
期限は早めに聞いておきたい項目です。民法724条は、不法行為の損害賠償請求権について、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年の期限を定め、724条の2は、人の生命や身体を害する場合は3年を5年としています。自分の事案でどの期限がいつ来るかは事情によって変わるので、相談の早い段階で確かめてください。
相談のあとの決め方
相談を受けたからといって、その場で依頼する必要はありません。法テラスも、法律相談を受けたら依頼しなければならないわけではなく、時間をおいて検討することもできると案内しています。相談のメモを読み返し、次の3点がはっきりしているかで決めると、迷いが減ります。
- 見込みについて、根拠つきの説明を受けられたか
- 費用の見積りを、書面で受け取れるか
- 連絡の取り方(担当者、返事までの日数、方法)に無理がないか
別の弁護士の意見も聞きたいときは、ほかの事務所や弁護士会の相談を使えます。弁護士会の相談センターには、「セカンドオピニオン相談」を用意しているところもあります。依頼先を選ぶときの確認項目はパワハラを弁護士に相談するときの選び方にまとめました。収入や資産が一定以下なら、法テラスでパワハラを相談するにはで説明している無料法律相談も選択肢です。窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧に載せています。
よくある質問
Q. 録音データはどうやって持っていけばいいですか?
元のファイルはスマートフォンやパソコンに残したまま、コピーをUSBメモリなどに入れて持参するのが扱いやすい方法です。全部を聞いてもらう時間はないので、問題の発言がある箇所の日時と再生位置(何分何秒)、発言の書き起こしを1枚にまとめておくと、相談の場で要点を伝えられます。
Q. 会社の資料をコピーして持っていってもいいですか?
自分あてのメールや自分の給与明細などと違い、顧客情報や社外秘の資料を持ち出すと、就業規則上の問題になることがあります。持ち出す前に、何を・どの範囲で保存するかを相談の場で聞くのが安全です。判断の目安は[パワハラの証拠保全](/shouko-hozen/)にまとめています。
Q. 家族に代わりに相談してもらえますか?
扱いは相談先によって違います。たとえば大阪弁護士会は、原則として本人からの相談としたうえで、本人が体調などで来られない場合は相談を受けるものの、その場で依頼を受けることはできないと案内しています。オンラインや電話での相談を用意している弁護士会もあるので、本人が参加できる方法を先に探してみてください。
出典・参考にした公的な情報
- 弁護士法 第23条・第25条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相談の流れ(予約の際に伝えること)(大阪弁護士会 総合法律相談センター)
- よくあるご質問(セカンドオピニオン相談・代理の人の相談)(大阪弁護士会 総合法律相談センター)
- 労働トラブルでお困りの方へ(法テラス)(日本司法支援センター)
- 民法 第724条・第724条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。