法的手段の前に / Q&A

労働局のあっせんを会社が拒否したら?打ち切り後に選べる手段

この記事のもくじ
  1. 会社はあっせんを拒否できる?参加が任意である理由
  2. 拒否されたときにまずすること
  3. 打ち切り後に選べる手段
  4. 30日以内の提訴の特例と時効
  5. あっせんを申請する前に、拒否に備えてできること

労働局のあっせんは、会社が参加を拒否すると開かれずに打ち切りになります。あっせんは当事者の話し合いを助ける制度で、相手に参加を強制する仕組みがないためです。令和7年度に処理された4,220件のうち、一方が参加しないことによる打ち切りは2,006件(47.5%)でした。打ち切られても、労働審判や訴訟などの手段は残り、通知から30日以内に訴えを起こせば、時効の完成猶予について、あっせんの申請時に訴えたものとみなされます。

会社はあっせんを拒否できる?参加が任意である理由

厚生労働省のパンフレットの流れ図では、あっせんの開始通知を受けた一方の当事者が、参加する意思がないと表明した場合、あっせんは実施せず打ち切りになると書かれています。同じパンフレットの比較表でも、相手方の手続への参加は「任意(不参加の場合には手続終了)」とされています。

裁判所の手続と比べると、違いがはっきりします。

手続 相手が来ないとき(厚生労働省パンフレットの比較表)
労働局のあっせん 任意。不参加なら手続は終わる
労働審判 正当な理由なく出頭しなければ過料
民事訴訟 主張書面を出さず欠席すると、原告の主張を認めたものとみなされる可能性がある

会社が不参加を選ぶ理由は、事情によってさまざまです。労働政策研究・研修機構の調査(2015年公表)では、2012年度に4つの労働局で扱ったあっせん853件のうち、被申請人(多くは会社)の不参加で終わったのは332件(38.9%)でした。同機構が2025年に公表した、令和5年度に4労働局で処理された解雇型の事案485件の調査でも、被申請人の不参加は207件(42.7%)で、合意成立は180件(37.1%)でした。令和7年度の厚生労働省の資料でも、合意の成立率は平成28年度の39.4%から27.0%へ、双方が参加した割合は56.8%から45.4%へと下がっています。あっせんを申請するときは、会社が来ない場合の次の手を先に考えておくと、打ち切られても慌てずに済みます。

拒否されたときにまずすること

  1. 打ち切りの通知の日付を控える:30日以内の提訴の特例の起算日になる。
  2. 申請書と提出した資料を保管する:あっせん申請書の「求める事項」と「紛争の経過」は、次の手続や弁護士への相談でもそのまま使える。
  3. 時効の期限を確かめる:損害賠償の請求には期限がある。考え方はパワハラの時効は何年かを条文で確認で整理している。
  4. 専門家に相談する:労働審判や訴訟を考えるなら、弁護士に申請書と証拠を見せて手段を選ぶ。費用が心配なら法テラスや弁護士会の相談を使う。
  5. 職場での出来事の記録を続ける:申請したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは法律で禁止されている(促進法5条2項)。申請後の配置や評価の変化も記録しておく。

弁護士に相談するときは、次のように最初に伝えると話が早く進みます。

文例:「職場のいじめについて労働局のあっせんを申請しましたが、○月○日に会社の不参加で打ち切りの通知を受けました。申請書と時系列表、証拠のコピーを持ってきました。労働審判や訴訟を使えるか、費用と期間を含めて相談したいです。」

打ち切り後に選べる手段

比較表:あっせんが打ち切られた後の主な手段
手段 相手の参加 費用 期間の目安(公的資料) 向いている場面
労働審判(地方裁判所) 正当な理由のない不出頭は過料 申立ての手数料と郵便料。弁護士を付けることが多い 平均3.2か月(令和6年速報値) 会社を相手に金銭の解決を求めたい
民事訴訟 欠席すると不利な判断の可能性 手数料。弁護士を付けることが多い 平均16.1か月(地裁・令和6年速報値) 加害者個人も相手にしたい、争いが複雑
少額訴訟(簡易裁判所) 被告は通常の手続への移行を求められる 手数料 原則1回の期日で審理 60万円以下の金銭の請求
労働局の調停 受諾は任意 — — 会社がパワハラの相談に対応しない等の措置義務の紛争
労働組合(社外の合同労組を含む) 会社との交渉 組合費など — 職場の改善や交渉を続けたい

期間の目安は厚生労働省のパンフレットの比較表の値です。労働審判は、裁判官と労働関係の専門家が審理し、特別の事情がない限り3回以内の期日で終える手続で、話し合いがまとまらなければ審判が出ます。流れは労働審判の流れ、手段全体の比べ方はパワハラで訴える方法は6つで扱っています。

もとの悩みが、会社がパワハラの相談に対応しない、相談したら不利益に扱われた、という内容なら、あっせんではなく労働施策総合推進法の調停の対象になります。調停も受諾は強制されませんが、調停案の受諾勧告まである点が違います。どちらに当たるかは労働局の調停とあっせんの違いで確かめてください。少額訴訟の要件は少額訴訟でパワハラの慰謝料は請求できるか、組合への相談はパワハラを労働組合に相談する方法を参照してください。

30日以内の提訴の特例と時効

個別労働紛争解決促進法16条は、あっせんが打ち切られた場合に、申請人が通知を受けた日から30日以内に、あっせんの目的になった請求について訴えを起こしたときは、時効の完成猶予について、あっせんの申請時に訴えがあったものとみなすと定めています。

注意したいのは、あっせんを申請しただけで時効が止まるわけではないことです。特例が使えるのは、打ち切り後30日以内に訴えを起こした場合です。たとえば、時効の期限が近いのにあっせんの準備に時間をかけ、打ち切り後も動かずにいると、特例の外に出てしまいます。期限が近いと感じたら、あっせんを待たずに弁護士に相談してください。

あっせんを申請する前に、拒否に備えてできること

  • 会社が話し合いに応じそうか見ておく:社内の相談で会社がどんな態度だったかを振り返る。まったく応じない会社なら、初めから労働審判を考える人もいる。
  • 申請書を次の手続にも使える形で書く:日付・相手・内容・証拠を具体的に。書き方は労働局のあっせんの流れで説明している。
  • 証拠を手元に集めておく:あっせんでは申請書と必要に応じた証拠書類で足りるが、裁判では主張を証拠で示す必要がある。
  • 自分の目的をはっきりさせる:お金・謝罪・職場の改善・円満な退職のどれを優先するかで、次の手段が変わる。

会社が拒否したことで「もう打つ手がない」と感じる人もいますが、あっせんは入口の一つにすぎません。自分で抱え込まず、総合労働相談コーナーや弁護士に、打ち切りの通知を持って相談してみてください。

よくある質問

Q. 会社があっせんを拒否したことは、あとの裁判で不利に扱われますか?

あっせんへの参加は法律上の義務ではなく、厚生労働省も不参加なら手続は終了すると案内しています。不参加を理由に罰則が科される仕組みではありません。裁判で不参加がどう評価されるかは事案ごとの判断になるので、気になる場合は弁護士に確かめてください。打ち切りの通知は、話し合いを求めた経緯の記録として保管しておきます。

Q. 会社が拒否したら、労働基準監督署が代わりに動いてくれますか?

労働基準監督署は、労働基準法などの違反に対して指導・監督をする機関で、あっせんの代わりに話し合いを仲介する所ではありません。残業代の未払いなど法律の違反の疑いがあれば、別に相談や申告ができます。何を扱えるかは労働基準監督署ができることの早見表で確かめてください。

Q. 会社が「弁護士を通してほしい」と言ってきた場合は?

あっせんには参加しないが、代理人どうしなら話し合う、という意味のことがあります。相手に弁護士が付いたなら、こちらも弁護士に相談して、交渉に進むか、労働審判などの手続を使うかを決めるのが一般的な流れです。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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