法的手段の前に / 手順

労働局のあっせんの流れ:申請書の書き方から当日・合意まで

この記事のもくじ
  1. 労働局のあっせんとは:特徴と向いている紛争
  2. 申請の前に:会社に自分の求めを伝えてあるか
  3. あっせん申請書の書き方:6つの記載項目
  4. 申請から終了までの流れ
  5. あっせん当日の進み方と準備
  6. 合意したとき・打ち切られたとき

労働局のあっせんは、紛争調整委員会のあっせん委員が会社と労働者の間に入り、話し合いでの解決を手伝う手続です。流れは、申請書を出す→労働局長があっせんを委任するか決める→会社に参加の意思を確かめる→あっせん期日→合意か打ち切り、の順で、利用は無料、手続は非公開、期日は原則1回です。令和7年度に処理された4,220件のうち、処理期間が2か月以内だったのは72.6%(3,064件)でした。打ち切りや取り下げも含む数字で、合意できた割合ではありません。

労働局のあっせんとは:特徴と向いている紛争

あっせんは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(個別労働紛争解決促進法)5条に基づく制度です。厚生労働省のパンフレットは、特徴を次のように挙げています。

  • 手続が迅速・簡便:裁判に比べて書面の準備が少なく、申請書と必要に応じた証拠書類で始められる
  • 専門家が担当:弁護士・大学教授・社会保険労務士などの労働問題の専門家が委員を務める
  • 利用は無料:手数料はかからない
  • 非公開:手続は公開されず、当事者のプライバシーは保護される
  • 合意の効力:成立した合意は民法上の和解契約の効力を持ち、あっせん委員が合意文書を作る
  • 不利益取扱いの禁止:申請を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは法律で禁止

対象になるのは、解雇・雇止め・配置転換・労働条件の不利益変更、いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争、退職に伴う研修費用の返還などです。労働者同士の紛争、募集・採用の紛争、裁判中の紛争は対象になりません。会社のパワハラ防止の措置義務をめぐる紛争は調停で扱うので、どちらに当たるかは労働局の調停とあっせんの違いで確かめてください。

令和7年度のあっせんの申請は4,486件で、内容別では解雇が892件、いじめ・嫌がらせが868件の順に多くなっています。いじめ・嫌がらせは、あっせんで扱われる紛争の大きな一角です。

申請の前に:会社に自分の求めを伝えてあるか

パンフレットは、あっせんで扱う「紛争」を、一方の主張に他方が同意せず、主張が一致していない状態と説明しています。相手に一方的な不満を持っているだけで、自分の主張を会社に伝えていない状態は「紛争」に当たらないとも書いています。

そのため、申請の前に、会社(社長・人事・相談窓口など)に何を求めるかを一度は伝え、その返事を記録しておきます。口頭で伝えた場合は、日時・相手・言われたことをメモに残します。メールで伝えるときの書き方は会社にパワハラを相談するメールの書き方が参考になります。

あっせん申請書の書き方:6つの記載項目

申請書の様式は、厚生労働省のサイト・労働局の窓口・総合労働相談コーナーで手に入ります。様式の裏面の説明では、記載する内容は次の6つです。

項目 書くこと 書き方のこつ
①労働者の氏名・住所等 紛争の当事者である労働者 連絡のつく電話番号も
②事業主の氏名・住所等 会社の名称・所在地。勤務先の事業場が本社と違えばその名称・所在地 登記上の会社名と、働いていた店舗・支店の両方
③あっせんを求める事項とその理由 紛争の原因と、相手に求める内容をできる限り詳しく 金額を求めるなら金額と内訳。謝罪・配置の見直しなども書ける
④紛争の経過 原因の発生日(続いている行為なら最後の日)、双方の見解、これまでの交渉 時系列で。欄が足りなければ別紙に
⑤その他参考となる事項 訴訟・労働審判・他の機関の手続の有無、労働組合との紛争の有無など 「利用していない」も明記する
⑥申請人 一方申請か双方申請か 労働者が一人で出すなら一方申請

③と④は、委員が最初に読む部分です。次は、いじめ・嫌がらせの紛争で本人が書く場合の書き方の例です。

文例(③あっせんを求める事項):「○年○月から○年○月まで、同じ係の先輩2名から、業務の連絡を自分にだけ回さない、会議で繰り返し大声で能力を否定するなどの言動を受けた。会社に相談したが配置の見直しがされず、適応障害と診断され○か月休職した。会社に対し、治療費・休業中の収入の減少分・精神的苦痛に対する解決金として○○万円の支払いと、復職時の配置への配慮を求める。」

文例(④紛争の経過):「○年○月○日、課長に口頭で相談。○月○日、人事部にメールで配置の見直しを求めたが、○月○日に『当事者間の問題』と回答された。○月○日、上記の支払いと配慮を書面で求めたが、回答がない。」

経過は、日付を入れた時系列表から書き写すと漏れが減ります。表の作り方はパワハラの時系列表の作り方にまとめています。

提出先は、紛争が起きた時点で働いていた事業場の所在地を管轄する労働局の雇用環境・均等部(室)、または同じ都道府県内の総合労働相談コーナーです。本人が出向いて出すのが望ましいとされていますが、遠方なら郵送もでき、e-Gov の電子申請も使えます。代理人や補佐人を付けるときは、許可申請書を一緒に出します。

申請から終了までの流れ

流れ図:労働局のあっせんの7つの段階
  1. 申請書を雇用環境・均等部(室)か総合労働相談コーナーに提出
  2. 必要に応じて労働局が申請人から事情を聴き、労働局長が紛争調整委員会への委任を決める
  3. あっせん開始の通知が双方に届く
  4. 会社に参加・不参加の意思を確かめる(不参加なら実施せず打ち切り)
  5. あっせん期日を決めて実施(原則1回)
  6. 双方があっせん案を受け入れる、またはその他の合意が成立すれば解決
  7. 合意できなければ打ち切り。ほかの紛争解決機関の説明・紹介を受ける

4の段階で会社が参加しないと、あっせんは開かれずに終わります。令和7年度に処理された4,220件のうち、合意が成立したのは1,141件(27.0%)でした。会社が来なかったときの次の手段は労働局のあっせんを会社が拒否したらで説明しています。

あっせん当日の進み方と準備

当日は、原則として双方が別々の部屋で待ち、あっせん委員がそれぞれの部屋で話を聴いて意見を調整します。厚生労働省は、期日に双方が直接顔を合わせることはないと案内しています。委員は双方の主張の要点を確かめ、必要に応じて参考人の話も聴き、双方が求めた場合には具体的なあっせん案を示します。あっせん案を受け入れるかどうかは自由です。

当日に持っていくものと、決めておくことは次のとおりです。

  • 申請書の控えと、時系列表
  • 証拠のコピー(メール・チャット・録音の書き起こし・診断書・休職の記録など)
  • 求める金額の内訳と、その根拠になる資料(給与明細・領収書)
  • 「ここまでなら受け入れる」という線と、金額以外に求めること
  • 合意書に入れたくない条項(広すぎる口外禁止など)

譲れる線を考えるときの材料として、公的な調査の数字は労働局のあっせんでの解決金で紹介しています。

合意したとき・打ち切られたとき

合意が成立すると、あっせん委員が合意内容を書いた文書を作ります。この合意は民法上の和解契約の効力を持ちますが、パンフレットの比較表では、労働審判や裁判上の和解と違って強制執行はできないとされています。会社が約束どおり払わなければ、合意書をもとに改めて支払いを求める手続を考えることになります。合意書の条項の読み方はパワハラの解決金・示談と合意書の注意点で扱っています。

合意できずに打ち切られたときは、通知を受けた日から30日以内に同じ請求で訴えを起こせば、時効の完成猶予について、あっせんの申請時に訴えたものとみなされます(促進法16条)。通知の日付を控え、労働審判や訴訟を考えるなら早めに弁護士に相談します。

よくある質問

Q. あっせんに弁護士は必要ですか?

厚生労働省のパンフレットは、あっせんでは弁護士の選任は必要ではないと案内しています。本人が申請書を書いて出し、期日にも本人が出席できます。代理人や補佐人を付けたいときは、許可申請書の様式が用意されています。

Q. 在職中にあっせんを申請すると、会社から不利益に扱われませんか?

個別労働紛争解決促進法は、あっせんの申請をしたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁止しています(5条2項)。それでも職場で気まずさを感じる人は多いので、申請の前後の出来事も時系列で記録しておくと、あとで相談するときの材料になります。

Q. パワハラのことでも、あっせんを申請できますか?

会社がパワハラの相談に対応しない、相談を理由に不利益に扱われた、という会社の措置義務をめぐる紛争は、あっせんではなく労働施策総合推進法の援助・調停で扱います。同僚からのいじめや、措置義務に当たらない嫌がらせなどはあっせんの対象です。迷うときは、総合労働相談コーナーで相談すれば手続を案内してもらえます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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