退職代行を使う人は誰?公的な数字で分かることと、使う前の自己確認
退職代行を使う人について、年齢層や利用者数を示す公的な統計は、確かめられた範囲ではありません。分かるのは、帝国データバンクが2025年10月に公表した事業者側の調査と、調査が挙げる市場が広がった背景です。この記事では、確かめられる数字だけを示し、そのうえで、使うことを考える人に多い典型の状況と、使う前に自分に問いかけたいことを整理します。
数字で分かること:事業者側の調査
帝国データバンクの「主要『退職代行サービス』動向調査」(2025年10月24日公表)は、企業データベースや開示資料、口コミサイトなどから退職代行を展開する事業者を拾い、集計したものです。分かる範囲は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 退職代行を展開する事業者 | 全国で少なくとも52法人 |
| 運営形態の内訳 | 民間経営が約6割、弁護士法人が3割強 |
| 設立から10年以内の法人 | 52法人のうち39法人(75.0%) |
| 設立から5年以内の法人 | 17法人(32.7%) |
利用者の数や年齢、利用の理由を集めた調査ではありません。この調査が示すのは、市場に事業者が増え、新しい会社が多いことです。事業者の数が増えたことと、使う人の特徴は別の話なので、混ぜて読まないようにします。
同じ調査は、市場が広がった背景として、人手不足で転職しやすくなったこと、職場のトラブルを避けたい人がいること、退職までの期間を短くしたい人がいることを挙げています。年齢層について知りたいときは、事業者のサイトで「調べた人数・時期・対象」を確かめます。景品表示法は、実際より著しく優良だと示す表示を禁じています(第5条)。「利用者の8割が満足」といった数字は、根拠を示せるはずの表示です。出どころの分からない数字を、自分が使ってよいかの判断材料にしないでください。
退職代行の利用を考える人に多い典型の状況
統計の代わりに、利用を考える場面を整理します。次のどれかに当てはまると、自分で伝える以外の方法を調べる人が多い状況です。
- 上司や会社に言い出せない:叱責や威圧が怖く、退職の話を切り出すだけで動悸がする、眠れないほど悩むといった状態。パワハラが背景にあるときに多い形です。
- 引き止めが強く、話が進まない:「後任が見つかるまで」「人が足りない」と言われ、退職届を受け取ってもらえない。
- 体調が悪く、出社が難しい:出社そのものが負担で、会社と直接やり取りする余力がない。
- 会社と条件の話し合いが必要で、一人では不安:有給の消化、未払い賃金、退職日の食い違いなど。
- 次の仕事や予定が決まっていて、日程に余裕がない:入社日が決まっている、引っ越しが決まっているなど。
状況1〜3は、「会社と話すこと自体」がつらい人、4は「条件の話し合い」が負担な人の悩みです。この2つは必要な対応範囲が違います。条件の話し合いが要るかどうかは、退職代行で交渉が必要になるのはどんなとき?有給・未払い賃金・退職日で見分けられます。
使う前に自分に問いかけたいこと
「自分のような人が使ってよいのか」と迷うときは、次の問いに答えてみてください。使うか使わないかの正解を決める問いではなく、必要な範囲を絞るための問いです。
- 会社に退職の意思を伝えるだけなら、手紙やメールなど自分でできる方法があるか
- 伝えたあとの会社とのやり取りを、自分で担えるか。無理なら、誰かに頼めるか
- 有給・賃金・退職日・損害賠償のうち、争いになりそうなものはあるか
- 公務員、契約期間のある契約社員、業務委託など、一般的な正社員と違う立場か
- 辞めたあとに、離職票や保険の手続きなどで会社とのやり取りが残ることを知っているか
自分で伝える方法との比較は退職は自分で伝えるか退職代行を使うか:費用・手間・リスクの比較にあります。退職自体は、期間の定めのない雇用であれば、申入れから2週間で成立します(民法第627条1項)。代行はその連絡を代わる手段で、辞める権利を与えるものではありません。
使わない選択肢や、別の窓口もある
つらさの原因が、退職そのものより職場の状況にあることもあります。退職代行は「辞める」ための手続きなので、辞めたいかどうかが決まっていない段階では、相談先を先に使う選択もあります。
- 辞めるかどうか決めかねているなら、公的な窓口で整理する(パワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表)
- 休むことを考えるなら、主治医や会社の制度を確かめる
- 辞めると決めているが、会社と直接話したくないなら、退職代行を含め複数の手段を並べる
使うと決めたときの選択肢として、弁護士運営と労働組合運営があります。条件のやり取りが要るなら、この2つが候補になります。
家族に話す場面は退職代行を使うことを親・家族にどう話す?で扱っています。
申込みの前に押さえる注意点
使うと決めた場合も、サービスにできないことがあります。その整理は退職代行にできないこと:運営形態別の限界と、使う前に確かめる注意点にまとめています。運営形態ごとの違いは退職代行の弁護士・労働組合・民間企業の違い:交渉できる範囲を比較で比べられます。
迷っていること自体は、特別なことではありません。使う人の特徴より、自分の状況でどこまでの対応が要るかを基準にして、運営者と契約範囲を書面で確かめてください。
よくある質問
Q. 退職代行を使う人の年齢層は分かりますか?
年齢層別の利用者数は、公的な統計や帝国データバンクの調査では確かめられませんでした。事業者のサイトに「20代が多い」などの数字が出ていても、調べた人数と時期が書かれているかを見ます。数字の根拠が示されていなければ、判断材料にはしません。
Q. 自分のような理由でも、退職代行を使ってよいのでしょうか?
退職は、民法の上で会社の承諾が要件になっておらず、辞める意思を伝えることに、特別な資格は要りません。使うかどうかは、会社に自分で伝えられるか、条件の話し合いが要るかで決めます。理由の重さで資格が決まるサービスではありません。
Q. 退職代行は、使う人が少数派でも安全なサービスですか?
使う人が多いか少ないかは、安全かどうかの根拠になりません。運営者が弁護士か労働組合か民間企業か、契約の範囲がどこまでか、を申込み前に確かめることが安全の土台です。
出典・参考にした公的な情報
- 主要「退職代行サービス」動向調査(帝国データバンク)
- 民法 第627条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不当景品類及び不当表示防止法 第5条・第7条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。