退職勧奨で辞めたら会社都合になる?離職票と失業保険の確かめ方
この記事のもくじ
退職勧奨に応じて辞めた場合、ハローワークは「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」を、特定受給資格者の範囲に入れています。いわゆる会社都合の扱いに近く、自己都合のような給付制限(待機の後の一定期間、給付がない期間)はかかりません。ただし、離職理由を判定するのはハローワークで、離職票に書かれた理由が事実と違えば異議を述べる必要があります。 この記事では、この区分の中身、自己都合との違い、離職票の確かめ方を順に並べます。
退職勧奨は特定受給資格者の範囲に入る:条件と除外
ハローワークの「特定受給資格者の範囲」では、解雇等により離職した人の区分に、次のものが挙がっています。
| 区分 | 原文の趣旨(ハローワーク) |
|---|---|
| 解雇 | 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職した者 |
| 退職勧奨 | 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者。従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度等に応募して離職した場合は該当しない |
| 嫌がらせ | 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者 |
ポイントは2つです。ひとつは、「直接若しくは間接に」とあるため、上司の口頭の勧めだけでなく、人事や別の担当者を通じた勧めも対象になり得ることです。もうひとつは、早期退職優遇制度への応募は除かれていることです。会社が示した制度が、前から恒常的にあるものか、今回の人員整理などで急に設けられたものかで扱いが分かれる場合があるため、制度の案内書は保管しておきます。
パワハラが原因で辞めた場合の区分と確かめ方は、別の記事「パワハラで退職したときの失業保険:特定受給資格者になる場合と確かめ方」が正本です。この記事は、退職勧奨を受けた場合に絞ります。
自己都合と何が変わるか:待ち時間・日数・加入期間
特定受給資格者になるかどうかで、失業保険の中身は次のように変わります。
| 項目 | 特定受給資格者 | 自己都合(正当な理由なし) |
|---|---|---|
| 給付制限 | なし(待期7日のみ) | 待期7日の後に、離職日が令和7年4月1日以降は原則1か月 |
| 必要な加入期間 | 離職日以前1年間に通算6か月以上 | 離職日以前2年間に通算12か月以上 |
| 所定給付日数(被保険者期間5年以上10年未満・45歳未満) | 30歳未満120日、30〜35歳未満180日、35〜45歳未満180日 | 90日 |
| 所定給付日数(被保険者期間10年以上20年未満・45歳未満) | 30歳未満180日、30〜35歳未満210日、35〜45歳未満240日 | 120日 |
この表が、サイト内の失業保険の比較の正本です。解雇や自己都合との書類の違いは「解雇・退職勧奨・自己都合退職の違い:失業保険と書類で何が変わるか」で見られます。
自己都合の給付制限は、過去5年間に自己都合離職で受給資格決定を2回以上受けている場合は3か月になります。また、ハローワークの手続きのページには、給付制限を2か月と書いた古い記載が残っているため、厚生労働省の令和7年4月施行の説明(原則1か月)を見て確かめます。
給付日数は、年齢と被保険者期間で変わります。上の表は一部の区分だけを抜き出したものです。45歳以上の人や、被保険者期間が1年未満・1年以上5年未満の人を含む全体の表は、ハローワークの「基本手当の所定給付日数」で確かめます。離職日がいつか、被保険者期間は何年かによって、受け取れる日数は表のどの欄になるかが決まります。
離職票の理由を確かめる:署名の前と届いた後
離職理由は、2つのタイミングで確かめられます。
- 離職証明書の署名の前:ハローワークの案内によると、会社がハローワークに出す離職証明書には、離職前に本人が氏名を記載するので、離職理由等の記載内容も確認するよう求められています。会社が「自己都合」と書いた書面に署名を求めたら、事実と違うと伝えて、書き方を直してもらうよう依頼します。
- 離職票が届いた後:離職票に書かれた理由を見て、事実と違えば、求職申込みの際にハローワークに伝えます。
文例(会社への依頼):「退職は、会社からの勧奨を受けて合意したものです。離職証明書の離職理由は、事実のとおり、会社からの退職勧奨を受けたものとして記載してください。」
離職理由に納得できない場合の手順は、ハローワークの案内によると、ハローワークに相談し、ハローワークが事実関係を調査したうえで離職理由を判定する流れです。厚生労働省のQ&Aも、離職票の理由が「一身上の都合」とされているときは、ハローワークで異議を述べ、事業主都合の離職または特定理由離職者への変更認定を求める方法を示しています。判定のための確認資料の一覧はハローワークのページに載っていないため、窓口で何を持参するかを聞いておきます。
持っていくと説明の助けになる記録は、次のとおりです。
- 退職勧奨のメールやメッセージ、面談のメモ(日付・言われた言葉)
- 会社から受け取った合意書、条件提示の書面
- 退職届の控え(「会社の勧めにより」といった記載の有無)
会社が離職票を出さない、連絡が取れないといった場合は、住所地のハローワークに問い合わせるよう案内されています。離職証明書の手順や離職票の読み方は「パワハラ退職を会社都合にするには:離職理由の異議とハローワークでの申し出」に詳しく書いています。
自分から辞めると言った場合:勧奨の記録が残っているか
「辞めたいと思っていたので、自分から退職届を出した」という場合、勧奨を受けたことが書類に残らず、自己都合として扱われやすくなります。退職届の理由欄に「一身上の都合」と書いても、実際は会社の勧奨が先にあったなら、その経緯を窓口に説明できるようにしておきます。勧奨に応じる前に、次の2つを確かめておくと後で困りません。
- 勧奨を受けた事実が、メールや面談メモなどで残っているか
- 合意書や退職届の理由が、事実と食い違っていないか
応じる前の確認項目は「退職勧奨の条件は何を確かめる?離職理由・解決金・有給・時期の10項目」にチェックリストがあります。解雇・退職勧奨・自己都合退職の三つが書類でどう違うかは「解雇・退職勧奨・自己都合退職の違い:失業保険と書類で何が変わるか」で確かめられます。
受給しながら転職活動を進める
特定受給資格者になれば、給付制限なしで、待期7日の後に基本手当を受け取れます。ただし、受給には求職の申込みと、原則4週間に1回の失業認定が必要で、認定対象期間に原則2回以上の求職活動の実績が求められます(初回は1回)。手続きの流れは「失業保険の手続きの流れ:ハローワークでの求職申込みから受給まで」で確かめられます。
受給中の転職活動の進め方には、ハローワークの職業相談のほか、民間の転職支援(転職エージェント)を使う選択肢もあります。使う前に、担当者にどこまで事情を話すか、扱う求人が自分の地域・職種・年代に合うかを確かめます。退職勧奨で辞めた事情をどう説明するかは「退職勧奨を受けた後の転職:不利にならない進め方と時期」にまとめています。
退職代行を使って辞めた場合の離職理由の扱いは、別の整理が必要です。「退職代行で辞めたときの失業保険:離職理由はどう扱われるか」で確かめられます。
国民健康保険の軽減にも関わる
特定受給資格者または、受給資格のある特定理由離職者は、国民健康保険の保険料(税)の算定で、前年の給与所得を100分の30として計算する軽減の対象になります(国民健康保険法施行令29条の7の2)。軽減を受けるには、雇用保険受給資格者証などの書類を持って、住所地の市区町村の国保窓口に申告する流れが一般的で、必要書類は市区町村の案内で確かめます。離職理由が事実どおりに記載されるかどうかは、失業保険だけでなく、この軽減にも関わります。
よくある質問
Q. 退職勧奨に応じて「合意退職」にしたら、自己都合になってしまいますか?
合意して辞めたこと自体が、直ちに自己都合になるわけではありません。ハローワークは、事業主から直接または間接に退職するよう勧奨を受けて離職した人を特定受給資格者の範囲に入れています。離職理由を判定するのはハローワークなので、勧奨を受けた経緯が分かる記録を持って、離職票の理由を確かめます。
Q. 離職票に「一身上の都合」と書かれていたら、もう変えられませんか?
ハローワークの案内には、離職理由に異議がある場合(実際は事業主からの退職勧奨であるのに自己都合退職とされている場合など)はハローワークに相談するとあり、ハローワークが事実関係を調査して離職理由を判定します。そのままにせず、受給の手続きの際に伝えます。
Q. 早期退職優遇制度に応募した場合も、特定受給資格者になりますか?
ハローワークの案内では、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募して離職した場合は、退職勧奨を受けた離職の区分には含まれないとされています。希望退職の募集に応じた場合の扱いは別の区分にあるため、離職票の理由とあわせてハローワークで確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワーク(厚生労働省))
- 失業給付の手続きの流れ(離職証明書の確認・離職理由の異議)(ハローワーク(厚生労働省))
- 基本手当の所定給付日数(ハローワーク(厚生労働省))
- 令和7年4月1日から自己都合離職者の給付制限期間が原則1か月に(厚生労働省)
- 確かめよう労働条件 Q&A「退職勧奨に応じた後の撤回・離職理由」(厚生労働省)
- 雇用保険法 第13条・第21条・第23条・第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民健康保険法施行令 第29条の7の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。