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パワハラ退職を会社都合にするには:離職理由の異議とハローワークでの申し出

この記事のもくじ
  1. 「会社都合」はハローワークが決める:判定の仕組みと違い
  2. パワハラで辞めたときに当たりうる基準と、当たらない例
  3. 離職票-2の書き方と申し出の手順
  4. 持っていく資料のチェックリスト
  5. 判定に納得できないとき・辞める前にできること

パワハラで辞めたのに離職票が「自己都合」になっていても、離職理由を最終的に決めるのは会社ではなく、あなたの住所を管轄するハローワークです。離職票-2の離職理由欄(⑦欄)で自分の主張する理由に○を付け、具体的事情記載欄に経緯を書き、離職者署名欄(⑰欄)に署名して、確かめられる資料を持って受給手続きで申し出ます。上司や同僚からの「故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせ」による離職は特定受給資格者(いわゆる会社都合)の範囲に入っていますが、当たるかどうかはハローワークが事実を確かめて判定します。この記事では、その申し出の手順と持っていく資料を順番に示します。

「会社都合」はハローワークが決める:判定の仕組みと違い

厚生労働省の判断基準のリーフレットは、離職理由の判定を次の順で行うと説明しています。①事業主が主張する理由を離職証明書の⑦欄で把握し、②離職者が主張する理由を離職票-2の⑦欄で把握する。そのうえで、それぞれの主張を確かめられる資料で事実を確認し、最終的に安定所(ハローワーク)が慎重に判定する、という流れです。事業主の主張だけで決まるものではないので、会社が「一身上の都合」と書いていても、本人が別の理由を主張する余地があります。

「会社都合」は日常の言い方で、雇用保険の制度上は「特定受給資格者」と呼びます。自己都合との主な違いは次のとおりです。

会社都合(特定受給資格者)になると、①受給資格に必要な被保険者期間が短くなる(離職日以前1年間に通算6か月以上)、②原則1か月の給付制限がかからない、③所定給付日数が長くなる場合がある、④国民健康保険料の軽減の対象になる、の4点が変わります。日数と保険料の表を含む比較は、パワハラで退職したときの失業保険:特定受給資格者になる場合と確かめ方にまとめています。この記事では、判定に異議を申し出る手順に絞ります。

自己都合の給付制限は、令和7年4月以降の離職で原則1か月ですが、過去5年間に2回以上自己都合で離職している場合などは3か月になります(ハローワークの案内)。

パワハラで辞めたときに当たりうる基準と、当たらない例

判断基準のうち、パワハラなど職場の言動に関わる主な項目は次のとおりです。どれも「当たる可能性がある項目」で、当たるかの判定はハローワークが行います。

  • 上司・同僚等からの嫌がらせ:上司、同僚等の「故意」の排斥または著しい冷遇もしくは嫌がらせを繰り返し受けたことによる離職。例として、特定の個人を対象とする配置転換や給与体系等の変更が挙げられています。
  • セクハラの放置:事業主や人事担当者、雇用環境・均等部(室)などの公的機関に相談していたのに、一定期間(おおむね1か月)たっても事業主が必要な改善措置を講じなかったために離職した場合など。
  • 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの放置:上司や同僚からの言動について事業主に相談していたのに、必要な措置が講じられなかったために離職した場合。
  • 退職勧奨:事業主から直接または間接に退職を勧められて離職した場合(以前から恒常的にある早期退職優遇制度への応募は除く)。
  • 長時間労働:離職前6か月の間に、3か月連続で45時間、1か月で100時間、または2〜6か月平均で月80時間を超える時間外・休日労働があった場合。

一方で、リーフレットには「管理者が、部下の職務上の失態があった場合等に注意、叱責することは通常起こり得ることから、そのことだけをもってはこの基準には該当しません」とも書かれています。申し出では、一度きりの注意ではなく、繰り返し・特定の人を狙った扱いだったことが伝わるように事実を並べることが大切です。

体調を崩して辞めた場合は、別の区分の「特定理由離職者」(心身の障害・疾病などで離職した人)に当たることがあります。給付制限はかかりませんが、所定給付日数は一般の離職者と同じです。診断書の使い道はパワハラ退職に診断書は必要かで扱っています。

離職票-2の書き方と申し出の手順

離職票-2が届いたら、ハローワークに行く前に次の順で書き込みます。

  1. 事業主の記載を確かめる:⑦欄の左側の事業主記入欄で、どの理由に○が付いているか、具体的事情記載欄(事業主用)に何と書かれているかを読みます。
  2. 異議がある理由に○を付ける:離職者記入欄のうち、自分が主張する理由の□に○を付けます。嫌がらせによる離職なら、「事業主又は他の労働者から就業環境が著しく害されるような言動(故意の排斥、嫌がらせ等)を受けたと労働者が判断したため」の欄が目安です。
  3. 具体的事情記載欄(離職者用)に経緯を書く:離職に至った原因と経緯を、日付と出来事を中心に短く書きます。異議がない場合は「同上」と書きます。
  4. ⑰欄に署名する:記載した内容をもう一度確かめてから、離職者氏名を記入します。
  5. 住所地のハローワークで申し出る:求職の申込みと受給手続きの際に、離職理由に異議があることを窓口で伝え、資料を出します。必要に応じて、ハローワークから事情を聞かれたり資料の提示を求められたりします。

具体的事情記載欄は、たとえば次のような形で書けます(○の部分は自分の事実に置き換えます)。

記載の形:「令和○年○月ごろから、上司○○から、他の社員の前で『○○』と言われることが繰り返しあった。○月○日に人事部の○○さんに相談したが、配置などの変更はなかった。その後も同様の言動が続き、体調を崩したため○月○日に退職した。」

注意点が一つあります。リーフレットは、離職理由について偽りの申告をして受給すると、受け取った額の返還に加えて納付を命じられ(いわゆる3倍返し)、詐欺罪などで処罰されることもあると警告しています。事業主が虚偽の離職理由を書いた場合も同じく対象です。書くのは、記録で示せる事実だけにします。離職票そのものが届かないときは、次の記事の離職票が届かないときの会社への請求とハローワークへの相談の手順が先です。

持っていく資料のチェックリスト

判断基準は、嫌がらせによる離職について「特定個人を対象とする配置転換、給与体系等の変更があった場合には、配置転換の辞令(写)、就業規則、労働契約書、賃金台帳など」を持参資料に挙げ、ここに載っていない資料も可能であれば持ってくるよう求めています。手元にあるものを次の表で点検します。

早見表:主張する離職理由ごとの持参資料
主張する理由 判断基準に例示された資料 あわせて持っていくとよいもの
上司・同僚等からの嫌がらせ 配置転換の辞令(写)、就業規則、労働契約書、賃金台帳 日時・相手・言動の記録、メールやチャットの写し、録音の記録、社内窓口に相談した日と相手のメモ
セクハラ・マタハラの放置 (事業主や公的機関に相談した事実が要件の一部) 相談した日・相談先・会社の回答の記録
退職勧奨 希望退職募集要綱(写)、応募の事実が分かる資料 面談の日時と発言のメモ、勧奨のメール
長時間労働 タイムカード、賃金台帳、給与明細書 業務用PCのログ、退勤時の連絡の記録
心身の不調による離職 (特定理由離職者の区分) 医師の診断書など、病気で離職したことが分かるもの

記録がばらばらなときは、時系列の一覧に直してから持っていくと窓口で伝わりやすくなります。まとめ方はパワハラの時系列表の作り方、何が証拠になるかはパワハラの証拠になるものにあります。

判定に納得できないとき・辞める前にできること

ハローワークの判定(失業等給付に関する処分)に不服があるときは、雇用保険法69条により雇用保険審査官に審査請求ができ、その決定にも不服があれば労働保険審査会に再審査請求ができます。審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から3か月を過ぎるとできなくなります(正当な理由で間に合わなかった場合は例外。労働保険審査官及び労働保険審査会法8条)。出し方は、判定を受けたハローワークの窓口で確かめます。

まだ在職中で、これから辞める人は次の点を先に確かめておくと、申し出のときの材料が増えます。

  • 退職届の文面:離職票-2の記載方法のリーフレットでは、「労働者の個人的な事情による離職」の資料に退職願(写)が挙げられています。嫌がらせを理由に辞めるなら、その事実と食い違わない書き方にしておきます。理由の書き方はパワハラで辞めるときの退職届の書き方で整理しています。
  • 退職勧奨を受けた場合:勧奨に応じた経緯を記録に残します。離職票の扱いは退職勧奨で辞めたら会社都合になるかにあります。
  • 会社や外部窓口に相談した記録:セクハラ・マタハラの基準では「相談していたのに措置がなかった」ことが要件の一部です。相談先はパワハラの相談窓口一覧を見てください。
  • 退職代行を使う場合:離職理由の扱いは退職代行で辞めたときの失業保険で扱っています。

離職理由の判定は、手当の日数だけでなく国民健康保険料の軽減にもつながります。手続きの全体の順番は退職手続きのチェックリストで確かめてください。

よくある質問

Q. 会社に離職票の離職理由を書き直してもらう必要はありますか?

書き直しを頼むことはできますが、応じてもらえなくても手続きは進められます。離職理由を最終的に判定するのは住所地のハローワークで、離職票-2の離職者記入欄に自分の主張を書いて申し出れば、事業主と本人の両方の主張を資料で確かめてから判定されます。会社とのやり取りに疲れているなら、ハローワークでの申し出を先にして構いません。

Q. 記録や証拠が少なくても異議を申し出られますか?

申し出ること自体はできます。判断基準のリーフレットでも、持参資料は「お持ちの場合」とされています。ただし判定は資料による事実確認のうえで行われるため、手元のメモ・メール・社内に相談した記録など、日付の入ったものを少しでも多く集めて持っていくほうが主張が伝わります。

Q. 異議を申し出たことは会社に知られますか?

離職理由の判定は、事業主の主張と離職者の主張の両方を把握して行う仕組みなので、ハローワークが会社側に事情を確かめることはありえます。主張の中身は事実に沿って、日時と出来事を中心に書いておくと、確認の場面でも食い違いが起きにくくなります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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