記録と証拠 / Q&A

パワハラを無断で録音してもいい?相手の同意と使い方の注意点

この記事のもくじ
  1. 問題になりやすいのは「録ること」より「録り方」と「使い方」
  2. 当事者による録音と盗聴の違い
  3. 会社が録音を禁止している場合:就業規則の確かめ方
  4. 同意を取って録るときの言い方と、取れないときの備え
  5. 録音を公開してはいけない理由(要約)
  6. 迷ったときの相談先と、録音の渡し方

パワハラを相手に断らずに録音するとき、問題になりやすいのは録ることそのものより、録り方と使い方です。自分が参加している会話を自分で録ること(当事者の録音)は、他人どうしの会話や通話をこっそり聞き取る盗聴とは場面が違います。当事者が自分の会話を録音することを直接罰する条文は、刑法・有線電気通信法・電気通信事業法の該当条(刑法第130条・第230条・第231条、有線電気通信法第9条・第14条、電気通信事業法第4条・第179条)にはありません。一方で、他人の通信を傍受する、録るために他人の場所に入る、録音を公開する、といった行為は別の法律の問題になりえます。会社の就業規則に録音の決まりがある場合も注意が要ります。個別の場面での評価は、弁護士に相談して決めてください。

問題になりやすいのは「録ること」より「録り方」と「使い方」

「無断で録音してもいいか」という問いは、実際には3つの問いに分かれます。誰の会話を録るのか、どうやって録るのか、録ったものをどう使うのか、です。

早見表:無断の録音で問題になりやすい点
分かれ道 例 関係する決まり
自分が参加している会話を自分で録る 上司に呼び出された面談を、ポケットのスマホで録る 直接罰する条文はない。会社の就業規則の決まりは確かめる
自分が参加していない会話を録る 録音機を置いて席を外す、他人どうしの会話をこっそり録る 当事者の録音とは別の問題になりうる
他人の通話・通信を傍受する 他人の電話回線に機器をつないで聞く 有線電気通信法・電気通信事業法の通信の秘密
録るために他人の場所に入る 鍵のかかった部屋に入って録音機を仕掛ける 刑法第130条(住居侵入等)
録音を公開・拡散する SNSに投稿する、職場で聞かせて回る 刑法第230条・第231条、民法の損害賠償

表のいちばん上の、自分が参加している会話を録るケースが、パワハラの記録として多くの人がしている形です。録る前の準備や保存の手順は、パワハラの録音の仕方で説明しています。

相手の同意をとるかどうか

相手に「録音します」と断ってから録る方法もあります。断ると相手が言葉を選ぶようになり、普段の言動が録れなくなるかもしれません。一方で、断ってから録れば、録音をめぐって後で揉める心配は小さくなります。どちらを選ぶかは本人が決めることですが、次の点を比べてみてください。

録り方 よい点 気をつけたい点
断ってから録る 録音そのものをめぐる対立が起きにくい。相手が言動を控えるきっかけになることもある 普段どおりの言動は録れないことがある
断らずに録る 普段どおりのやり取りが残る 会社の規程によっては処分の心配がある。使い方を誤ると問題が大きくなる

当事者による録音と盗聴の違い

日常の言葉で「盗聴」と呼ばれるものには、いくつかの形があります。法律との関係で特に分けて考えたいのは、他人どうしの通信を、当事者でない人が聞き取る行為です。

  • 有線電気通信法第9条は、有線電気通信の秘密を侵してはならないと定め、第14条で違反に2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。
  • 電気通信事業法第4条は、電気通信事業者が取り扱っている通信の秘密を侵してはならないと定め、第179条で違反に2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めています。

これらは「通信の秘密」を守る法律で、他人の通話や通信を盗み聞きする行為を対象にしています。自分がかけた・受けた電話の相手との会話を自分で録る場合とは場面が違います。電話でのパワハラを記録する方法は電話のパワハラを録音・記録する方法で扱っています。

また、録音のために、立ち入りを許されていない部屋や他人の住居に入ることは、刑法第130条の住居侵入等の問題になりえます。録音機を相手の机に仕掛ける、施錠された部屋に入る、といった方法はとらないでください。自分が参加していない会話を録る方法も、当事者の録音とは別の問題になりうるため、パワハラの記録としてはすすめません。

会社が録音を禁止している場合:就業規則の確かめ方

会社によっては、就業規則や情報管理の規程で、職場での録音を禁止したり、許可制にしたりしていることがあります。これは法律ではなく社内の決まりですが、違反すれば懲戒などの処分の対象になりえます。

まず、自分の会社の規程を確かめましょう。労働基準法第106条は、使用者に就業規則を掲示や備え付け、書面の交付などの方法で労働者に周知させるよう定めています。社内の掲示、イントラネット、配布された冊子などで見られるはずです。人事に閲覧を求めることもできます。

確かめるときは、次の点を見ます。

  1. 録音を禁止する決まりがあるか。あるなら、どの場面を対象にしているか(顧客との会話、会議、社内全般など)
  2. 禁止の理由として何が挙げられているか(顧客情報・機密の保護など)
  3. 違反した場合の扱いが書かれているか

規程で録音が禁止されている場合でも、記録の手段は録音だけではありません。その日のうちに書く逐語のメモ、メールやチャットの保存、同僚の証言などで補えます。規程の読み方と代わりの記録の方法は会社がパワハラの録音禁止と言うときで、録音がない場合の補い方はパワハラの録音がないときに残せるもので詳しく扱います。録音していることが会社に知られたときの備えは、パワハラの録音がバレたらを参照してください。

同意を取って録るときの言い方と、取れないときの備え

断ってから録る場合は、相手が構えすぎない言い方を選びます。目的は「自分の記録のため」と事実だけ伝え、相手を責める言葉は添えません。

文例(面談の冒頭):「あとで内容を間違えないように、メモ代わりに録音させてください。」

文例(断られたとき):「分かりました。では、あとで内容をメールで確認させてください。」

断られたからといって、その場で隠して録るかどうかは、会社の規程と自分の状況を見て本人が決めることです。録らないと決めたら、その日のうちに言われた言葉を書き取り、面談の内容をメールで確認すれば、記録は残せます。メールでの確認の文例は会社がパワハラの録音禁止と言うときに載せています。

録音を公開してはいけない理由(要約)

無断かどうかにかかわらず、録音をSNSや動画サイトで公開するのは避けてください。刑法第230条は、公然と事実を示して人の名誉を傷つける行為を、事実が本当かどうかにかかわらず罪とし、民法第709条・第710条は、名誉を侵害した人に損害賠償の責任を負わせます。公開した側が罪や賠償を問われるおそれがあるため、録音は相談先に渡すために使います。条文の一覧と、公開の代わりになる手段はパワハラの録音をSNSで公開していい?で扱っています。

迷ったときの相談先と、録音の渡し方

録音をどう使うか迷ったら、事実を確かめる立場の人に、録音と時刻メモと文字起こしを渡して相談するのが基本の流れです。

相談先 録音を持っていく意味
会社の相談窓口・人事 事実確認の材料として、時刻メモと文字起こしと一緒に示す
労働局の窓口 出来事の流れを説明する材料にする
労働組合 会社との話し合いを組合に頼むときの材料にする
弁護士 録り方を含めて、使えるか・どう出すかを判断してもらう

録音を使って会社に請求したい、訴えたいと考えるなら、録った経緯(いつ、どの場面で、どの機器で)をメモにして弁護士に相談してください。費用の心配がある場合は、パワハラを弁護士に無料相談する方法や法テラスでパワハラを相談する方法があります。窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧にまとめています。スマホでの具体的な録り方はパワハラをスマホで録音する方法で説明しています。

よくある質問

Q. 録音していることが相手にばれたら、どうなりますか?

その場で録音をやめるよう言われたり、後から会社で問題にされたりすることがあります。慌てて言い訳をしたり、その場で消したりせず、「自分の記録のために録っています」と事実を伝えるにとどめましょう。その後の会社の対応や処分の心配への備えは、録音がばれたときの記事で詳しく扱っています。

Q. 録音を相手に聞かせて、謝罪させてもいいですか?

おすすめしません。録音を突きつけて謝罪や約束を求めると、話がこじれたり、こちらの求め方が問題にされたりするおそれがあります。録音は、会社の相談窓口や労働局、弁護士など、事実を確かめる立場の人に渡して使うのが基本です。

Q. 無断で録った録音は、裁判では使えないのですか?

録音を証拠としてどう扱うかは、録り方や内容を含めて、最終的には裁判所が個別に判断します。このサイトでは使えるかどうかを判定しません。録音を使って会社に請求したい、訴えたいと考えている場合は、録音と時刻メモと文字起こしを持って弁護士に相談し、出し方を決めてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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