相談先と窓口 / 制度解説

フリーランスのハラスメント相談先:業務委託でも使える窓口と法律

この記事のもくじ
  1. 業務委託でも対象になる:フリーランス法14条のハラスメント対策
  2. 相談先と申出先の使い分け
  3. 「業務委託」でも労働者に当たる場合
  4. 相談の前に残しておく記録

業務委託で働くフリーランスでも、ハラスメントを相談できる窓口と、発注する側に対策を求める法律があります。2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の14条は、従業員を使う発注事業者に、セクハラ・妊娠出産に関する言動・取引上の優越的な関係を背景にした言動によるハラスメントを防ぐ体制の整備を義務づけています。相談先は、弁護士に無料で相談できるフリーランス・トラブル110番と、法律違反を申し出る**都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)**が中心です。働き方の実態が会社員に近い場合は、労働者として労働基準監督署などの窓口も使えます。

業務委託でも対象になる:フリーランス法14条のハラスメント対策

会社員のパワーハラスメント(パワハラ)を防ぐ労働施策総合推進法31条は、事業主が雇用する労働者を守る規定です。業務委託で働く人はその外側にいたため、フリーランス法に別の規定が置かれました。誰と誰の関係に適用されるかは、法律の定義で決まります。

用語(2条) 中身
特定受託事業者(守られる側) 業務委託の相手方である事業者で、①従業員を使用しない個人、または②代表者1人のほかに役員がおらず、従業員も使用しない法人
特定業務委託事業者(義務を負う側) 業務委託をする事業者で、①従業員を使用する個人、または②役員が2人以上いるか、従業員を使用する法人
業務委託 物品の製造・加工、プログラム・映像・デザイン・文章などの情報成果物の作成、役務の提供を、事業のために他の事業者に委託すること

14条1項は、特定業務委託事業者に、次の3つの状況にならないよう、相談に応じ適切に対応するための体制の整備その他の必要な措置を講じることを求めています。

早見表:フリーランス法14条が対象にするハラスメント
号 対象になる言動 会社員の場合に近い制度
1号 性的な言動への対応を理由に業務委託の条件で不利益を与える、または性的な言動で就業環境を害する 職場のセクハラ(男女雇用機会均等法11条)
2号 妊娠・出産に関する事由に関する言動で就業環境を害する 妊娠・出産等に関するハラスメント(同法15条)
3号 取引上の優越的な関係を背景とした言動で、業務を遂行するうえで必要かつ相当な範囲を超えたものにより就業環境を害する パワハラ(労働施策総合推進法31条)

3号の言い回しは、会社員のパワハラの3要素(優越的な関係・業務上必要かつ相当な範囲を超える・就業環境が害される)に対応しています。厚生労働省の指針(令和6年厚生労働省告示第212号)はこれを「業務委託におけるパワーハラスメント」と呼び、①〜③をすべて満たすものとしたうえで、適正な指示や、通常の取引行為としての交渉の範囲内の話合いは該当しないと書いています。「優越的な関係」には、発注事業者そのものの言動のほか、契約担当者や成果物の確認・検収をする人の言動も含まれます。

指針の例のうち、業務委託ならではのものを抜き出すと次のとおりです。例は限定列挙ではなく、個別の事情で判断が変わりうるとされています。

指針の類型 該当すると考えられる例 該当しないと考えられる例
精神的な攻撃 契約どおり納品したのに、正当な理由なく報酬を払わない・減額することを、度を超して繰り返し示唆する、または威圧的に迫る 事業者間の通常の取引として、取引条件の変更を協議する
過大な要求 明確な検収基準を示さずに、嫌がらせのために受領を何度も拒み、やり直しを強要する 検収基準を示したうえで、基準に届かない部分を示してやり直しを指示する
過小な要求 気に入らない相手に、嫌がらせのために契約で予定していた業務や役割を与えない 発注数が減ったため、契約の範囲内で依頼する業務量を減らす
人間関係からの切り離し 発注元の社員が集団で無視し、事業所で孤立させる 契約を適切に進めるため、短期間集中的に別室で業務の研修をする

指針は、発注事業者が相談窓口をあらかじめ定め、業務委託の契約書面やメールに窓口の連絡先を書くなどして周知することを求めています。メールやアプリで相談を受け付ける場合は、相談した人が受け付けられたと認識できる仕組みにすることも求めています。契約時の書面やメールに相談窓口の記載がないかを、まず見直してみてください。

14条2項は、相談したことや、相談への対応に協力して事実を述べたことを理由に、契約の解除その他の不利益な取扱いをすることを禁じています。

あわせて知っておきたいのが、会社員向けのパワハラ指針の「望ましい取組」です。指針は、個人事業主など雇用する労働者以外の人への言動についても、会社が同様の方針を示し、相談に適切に対応するよう努めることが望ましいとしています。発注元の会社にハラスメント相談窓口があるなら、業務委託の立場でも使えるかを問い合わせる価値があります。社内窓口の使い方は社内のハラスメント相談窓口の使い方で扱っています。

相談先と申出先の使い分け

フリーランスの相談先は、「話を聞いて整理してもらう」窓口と、「法律違反を申し出て行政に動いてもらう」窓口に分かれます。

振り分け表:フリーランスのハラスメントの相談先
窓口 運営 使う場面 できること
フリーランス・トラブル110番(0120-532-110、平日9:30〜16:30。メール・ビデオ通話の受付もあり) 厚生労働省の委託で第二東京弁護士会 まず相談したい、どの法律の問題か知りたい 弁護士による相談(無料・匿名可)、和解あっせん(無料・非公開)
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) 厚生労働省 14条のハラスメント対策や、相談を理由にした不利益取扱いについて申し出たい 申出(17条)を受けた調査、勧告(18条)
公正取引委員会・中小企業庁 国 報酬の減額、支払いの遅れ、条件を書面で示さないなど取引の問題 申出(6条)を受けた調査と措置
労働基準監督署「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」 厚生労働省 契約は業務委託でも、働き方が会社員と変わらない 労働基準法などの違反の相談
警察 都道府県警察 殴られた、脅された 被害の相談、被害届

フリーランス・トラブル110番は、雇用されている人ではなく、発注事業者から仕事を受けたときのトラブルを扱う窓口で、ハラスメントも相談の対象に挙げています。相談担当の弁護士は代理人として交渉はしませんが、和解あっせんという話し合いの手続きを無料で使えます。メールの返事は数営業日かかるので、急ぐときは電話を使います。

労働局への申出は、相談とは性格が違います。17条は、特定受託事業者が厚生労働大臣に違反の事実を申し出て、適当な措置を求めることができると定め、申出があれば必要な調査を行うとしています。違反が認められれば、厚生労働大臣は是正や防止の措置を勧告でき(18条)、14条に関する勧告に正当な理由なく従わないときは、その旨を公表できます(19条3項)。また、取引の問題で公正取引委員会などに申し出たことを理由に、取引を減らす・止めるなどの不利益な取扱いをすることは6条3項で禁じられています。

暴力や脅しを受けた場合は、契約の形に関係なく警察に相談できます。番号の使い分けは職場で暴力・脅しを受けたときの110番と#9110にまとめています。

「業務委託」でも労働者に当たる場合

契約書の名前が「業務委託」でも、働き方によっては労働基準法の「労働者」に当たることがあります。厚生労働省は、労働者に当たるかどうかは契約の形式や名称にかかわらず、実態を勘案して総合的に判断されると説明しています。判断で見られる主な点は次のとおりです。

  • 仕事の依頼や指示を断る自由があるか
  • 仕事の進め方について、細かく指揮命令を受けているか
  • 働く場所や時間を決められ、拘束されているか
  • 自分の代わりに他の人に仕事をさせることができるか
  • 報酬が、指揮命令を受けて働いたこと自体への対価として払われているか
  • 事業者としての独立性(機材や費用の負担など)があるか、特定の発注者の専属に近いか

当てはまる項目が多いと感じたら、2024年11月1日から全国の労働基準監督署に置かれた「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」で相談できます。受付は平日8時30分〜17時15分です。労働者に当たる場合は、使用者である会社が労働施策総合推進法31条のパワハラ防止の措置を講じる対象になり、労働局の雇用環境・均等部(室)での助言・指導や調停も使えるようになります。派遣で働いている場合の相談先は派遣社員のパワハラ相談先を見てください。

相談の前に残しておく記録

フリーランスの相談では、会社員より「取引の条件」の記録が重みを持ちます。次のものを手元にそろえておくと、どの窓口でも話が早く進みます。

  • 契約書、発注書、発注のメールやチャット。フリーランス法3条は、業務委託をしたら直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメール等で示すことを求めています
  • ハラスメントにあたる言動があった日時、場所(オンライン会議・チャット・現場など)、言われた言葉そのもの
  • チャットやメールの画面。送信日時と相手のアカウント名が写る形で保存する
  • 断った後や相談した後に起きた変化(発注量の減少、報酬の減額、契約更新の拒否)と、その連絡の文面
  • 発注元の担当者や窓口に相談した日と、そのときの返答
  • 体調の変化や受診の記録

発注元に相談するときの文例:「〇月〇日のオンライン会議で、御社の〇〇様から『この程度の仕事しかできないなら報酬は払えない』と、他の参加者の前で言われました。その後も同様の発言が続いており、業務を続けることに支障が出ています。御社でのハラスメントの相談窓口と、今後の対応の流れを教えてください。」

記録をまとめた準備の仕方はパワハラ相談の準備チェックリストで、電話以外の方法で相談したいときの窓口はパワハラをオンラインで相談できる窓口の比較で整理しています。会社員として雇われている人の相談先の全体は労働局のハラスメント相談窓口(雇用環境・均等部(室))から確かめられます。

よくある質問

Q. 発注してきたのが従業員のいない個人事業主でも、フリーランス法のハラスメント対策の対象になりますか?

フリーランス法14条の義務を負うのは「特定業務委託事業者」で、個人なら従業員を使用する人、法人なら役員が2人以上いるか従業員を使用する法人です。従業員のいない個人から受けた仕事は、14条の対象から外れます。その場合でも、フリーランス・トラブル110番でトラブル全般を相談でき、暴力や脅しがあれば警察に相談できます。

Q. ハラスメントを相談したら、契約を打ち切られました。

フリーランス法14条2項は、相談したことや、相談への対応に協力して事実を述べたことを理由に、契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。打ち切りの連絡の文面と時期、相談した日を記録し、労働局の雇用環境・均等部(室)への申出や、フリーランス・トラブル110番への相談を検討してください。打ち切りの理由が相談にあたるかどうかの判断は、窓口や弁護士に事実を示して見てもらうものです。

Q. フリーランス・トラブル110番の弁護士に、相手との交渉まで頼めますか?

頼めません。相談に応じるのは弁護士ですが、相談担当の弁護士が代理人になる、相手方と直接交渉する、代理人を紹介する、といったことはしないと案内されています。話し合いの場がほしいときは同じ窓口の和解あっせん(無料・非公開)を、代理人を立てたいときは弁護士会の法律相談を使います。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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