状況別の対処 / Q&A

パワハラ上司は処分される?懲戒の流れと処分されないときの選択肢

この記事のもくじ
  1. パワハラ上司は処分される?法律と指針の仕組み
  2. 懲戒までの流れ:相談から処分の決定まで
  3. 処分の結果は被害者に知らされる?
  4. 処分されないとき・事実が確認されないときの選択肢

パワーハラスメント(パワハラ)をした上司が処分されることはあります。ただし、処分するかどうか、どの程度の処分にするかは、会社が就業規則に基づいて決めます。 被害を受けた人が処分の中身を決めることはできません。法律(労働施策総合推進法)が定めているのは、会社にパワハラを防ぎ、起きたときに対応する措置を義務づけることで、行為者個人の処分を命じる規定ではありません。厚生労働省のパワハラ指針は、事実が確認できたときの行為者への措置として「懲戒その他の措置」を挙げています。処分されないときも、会社に別の措置を求めたり、都道府県労働局の援助や調停を使ったりする道があります。

パワハラ上司は処分される?法律と指針の仕組み

労働施策総合推進法 第31条は、会社(事業主)に、パワハラで就業環境が害されないよう相談に応じ適切に対応するための体制の整備その他の措置を講じることを義務づけています。指針は、その措置の中身を具体的に示しています。処分に関係する部分を抜き出すと次のとおりです。

指針の措置 処分との関係
方針の明確化 パワハラを行った者には厳正に対処する方針と、対処の内容(懲戒規定など)を就業規則などに定めて周知する
事実関係の確認 相談者と行為者の双方から事実を確かめる。主張が食い違えば第三者からも話を聞く
行為者への措置 事実が確認できたら、就業規則などに基づく懲戒その他の措置、配置転換、謝罪などを行う
被害者への配慮 関係改善の援助、引き離すための配置転換、労働条件の不利益の回復、心の不調への相談対応など
再発防止 方針の再周知や研修。事実の確認に至らなかった場合も行う

つまり、会社の義務は「処分すること」そのものではなく、事実を確かめ、確認できたら行為者と被害者の双方に適切な措置をとることです。懲戒はその選択肢の一つという位置づけです。

懲戒までの流れ:相談から処分の決定まで

上司の処分は、多くの場合、次のような順で進みます。会社によって手順の細部は就業規則や社内規程で決まっています。

相談から処分の決定まで(一般的な流れ)
  1. 被害者が相談窓口・人事などに相談する
  2. 会社が相談者・行為者から話を聞き、必要なら同僚など第三者からも聞く
  3. 集めた話や記録から、会社が事実を認定する
  4. 就業規則の懲戒規定に照らして、処分をするか・どの種類にするかを検討する
  5. 処分を決めて行為者に伝える。あわせて配置などの措置を決める
  6. 被害者への配慮と再発防止の措置をとる

処分には就業規則の根拠が要ります。労働基準法 第89条は、常時10人以上の労働者がいる会社に就業規則の作成と届出を義務づけ、制裁(懲戒)の定めをする場合は、その種類と程度を書くよう定めています。さらに労働契約法 第15条は、懲戒が、行為の性質や態様などに照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないときは、権利の濫用として無効になると定めています。

このため会社は、事実がはっきりしないまま重い処分をすることには慎重になります。被害を受けた側から見ると「軽すぎる」と感じる処分になることもあります。たとえば減給の処分には、労働基準法 第91条で、1回の額が平均賃金の1日分の半額まで、総額が1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1までという上限があります。懲戒の種類や処分前の自宅待機の扱いはパワハラ加害者の処分の種類で説明しています。

処分の結果は被害者に知らされる?

指針は、会社に相談者・行為者のプライバシーを守る措置も求めています。そのため、行為者にどんな処分をしたかを、被害者にどこまで伝えるかは会社の判断になり、詳しく知らされないこともあります。

それでも、自分に関わることは尋ねてかまいません。尋ねるときは、処分の中身よりも「事実が確認されたか」「自分の働く環境がどう変わるか」に絞ると、会社も答えやすくなります。

尋ね方の例(メール):「先日ご相談した○○課長の件について、調査の結果、事実が確認されたかどうか、また今後、私の業務や席の配置、課長との接点についてどのような対応をとっていただけるかを教えていただけますでしょうか。今後のために記録として残したいので、メールでご回答いただけると助かります。」

返事は口頭でもらうことが多いので、聞いた内容をその日のうちにメールで送り返し、記録にしておきます。処分の有無にかかわらず、上司と離れたいときの伝え方は次のパワハラで異動したいときの伝え方にあります。

処分されないとき・事実が確認されないときの選択肢

「処分はしない」「事実は認められなかった」と言われたときに、確かめることと次の手段を状況ごとに並べます。

状況 会社に確かめること 次の手段
調査が始まらない・返事がない 誰が担当で、いつまでに何をするのか パワハラを相談しても会社が対応しないとき
事実は認められないと言われた 誰から話を聞いたか。再発防止の措置はとるのか 労働局の調停(指針は、確認が難しいときに中立な第三者機関に委ねることも挙げている)
事実は確認されたが処分なし・軽い 被害者への配慮(配置・接点の変更)は何をするのか 配置の変更を求める、労働局に相談する
相談した後に自分の扱いが悪くなった 変化の理由 パワハラを相談して悪化したときの対処

社外では、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。労働施策総合推進法 第36条により、労働局長は当事者から援助を求められたとき、助言・指導・勧告ができます。第37条により、調停を申請すると、労働局長が必要と認めるときに紛争調整委員会が調停を行い、調停案を示して受け入れを勧めることがあります。どちらも、会社が措置を講じたかをめぐる労働者と会社の間の話し合いを助ける仕組みで、上司個人に処分を命じる制度ではありません。調停案を受け入れるかどうかも当事者が決めます。仕組みの詳細は労働局の助言・指導と調停の仕組みを読んでください。

これとは別に、第42条は、第31条1項・2項などに違反している会社に厚生労働大臣が勧告をしたのに従わないときは、その旨を公表できると定めています。会社が措置義務を果たしていない場合の仕組みで、労働局長の援助や調停とは別の話です。上司個人の責任(損害賠償など)を問うかどうかは、会社の措置とは別の話で、弁護士に相談して考えることになります。モラハラについて同じ疑問がある人は職場のモラハラ加害者は処分される?も参考にしてください。

処分の先に、会社の外へ問題を出すことを考えるなら、次の記事パワハラを告発する方法:社内通報・外部窓口・報道の違いと注意点で通報先ごとの違いを確かめてください。

よくある質問

Q. 会社に「上司を処分してほしい」と伝えてもいいですか?

伝えてかまいません。ただ、処分をするかどうか、どの程度にするかを決めるのは会社です。処分の希望と合わせて、事実確認をしてほしいこと、上司との接点を減らしてほしいこと、再発を防いでほしいことも伝えておくと、処分の結論にかかわらず求められる対応が残ります。

Q. パワハラをしたのが社長や役員の場合も、処分の対象になりますか?

労働施策総合推進法 第32条は、事業主(法人の場合は役員)自身もパワハラ問題への関心と理解を深め、労働者への言動に必要な注意を払うよう努めなければならないと定めています。ただ、懲戒を決める立場の人が行為者になるため、社員のように就業規則で処分する流れには乗りにくく、社内で処分を求めるのは難しいことが多いです。その場合は、社外の公的な窓口に相談することを考えます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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