状況別の対処 / 手順

パワハラで異動したいとき:異動希望の伝え方と会社が配慮すべきこと

この記事のもくじ
  1. パワハラで異動を希望できる根拠:指針の「被害者への配慮」
  2. 異動を申し出る前の準備
  3. 異動希望の伝え方:面談とメールの文例
  4. 異動の打診を受けたときに確かめること
  5. 異動が認められないときの次の手

パワーハラスメント(パワハラ)をする上司から離れるために異動したいときは、起きた事実と体調・仕事への影響を示したうえで、「異動」か「接点を減らす別の方法」を具体的に希望として伝えます。 厚生労働省のパワハラ指針は、事実が確認できた場合に会社がとる被害者への配慮の例として、行為者と被害者を引き離すための配置転換を挙げています。ただし、会社が実際にどの措置をとるかは事案ごとに判断されるため、希望すれば異動が約束されるわけではありません。この記事では、申し出の準備、伝え方の文例、打診を受けたときに確かめることを順に説明します。

パワハラで異動を希望できる根拠:指針の「被害者への配慮」

労働施策総合推進法 第31条は、会社にパワハラを防ぎ、起きたときに適切に対応する措置を義務づけています。その中身を示すパワハラ指針は、事実が確認できたときに速やかに行う被害者への配慮の措置として、次の例を挙げています。

  • 被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助
  • 被害者と行為者を引き離すための配置転換
  • 行為者の謝罪
  • 被害者の労働条件上の不利益の回復
  • 管理監督者や産業保健スタッフなどによる、被害者の心の不調への相談対応

また、行為者に対する措置の例にも、懲戒と並んで「配置転換」が入っています。つまり「離れる」方法は、自分が動く、相手が動く、同じ部署のまま接点を減らす、の3通りがありえます。

上司から離れる3つの形:それぞれの長所と気をつけたい点
形 長所 気をつけたい点
自分が異動する 会社が決めやすく、早く実現することがある 慣れた仕事・人間関係を手放す。異動先での評価がゼロから
加害者が異動する 自分の仕事を続けられる 会社が事実を確認してからになりやすく、時間がかかる
同じ部署で接点を減らす 異動の時期を待たずにできる 報告先の変更・席の移動・業務連絡の書面化など、実際に守られるかの確認が要る

どれを望むかは、自分が今の仕事を続けたいか、どれくらい急ぐかで決めます。今すぐできる接点の減らし方はパワハラ上司と距離を置く方法で紹介しています。

異動を申し出る前の準備

異動の希望は、準備の度合いで通りやすさが変わります。申し出る前に、次の5つをそろえておきます。

  1. 記録:いつ・誰から・何をされたかを、日付と言葉で書いたもの。時系列表にしておくと面談で渡せます(パワハラの時系列表の作り方)
  2. 影響:眠れない、通院を始めた、ミスが増えたなど。診断書があれば、提出するかどうかは自分で決められます
  3. 希望の優先順位:第1希望(例:別の課への異動)、第2希望(例:報告先を別の管理職に変える)、譲れない点(例:通勤時間がこれ以上延びないこと)
  4. 社内の制度:就業規則や人事制度に、自己申告や異動希望の制度があるか。相談窓口はどこか
  5. 伝える相手:相談窓口、人事、上司の上司のどこに出すか。加害者本人を通さない経路を選ぶ

体調の面から配置の配慮を求めたいときは、産業医の面談を使う方法もあります。産業医に伝えることはパワハラを産業医に相談するときの伝え方にまとめています。

異動希望の伝え方:面談とメールの文例

面談では、事実→影響→希望の順で、2〜3分で話せる長さにまとめます。異動だけを求めると「人員の都合で難しい」で話が終わりやすいので、異動までのあいだの対応もあわせて頼みます。

面談での例:「○○課長から、今年5月以降、週に何度か会議の場で強い言葉で叱責を受けています。日付と言われた言葉は記録してきました。最近は眠れない日が続き、先月から通院しています。課長と離れて働けるよう、異動を希望します。異動がすぐに難しい場合は、それまでのあいだ、報告先を別の方に変えていただくなど、課長と一対一になる場面を減らしていただけないでしょうか。」

面談のあとは、同じ内容をメールで送って記録にします。

メールの例:件名「本日の面談内容の確認(異動の希望について)」/本文「本日はお時間をいただきありがとうございました。本日お伝えした内容を確認のためお送りします。1. ○○課長からの言動について、相談窓口にご相談した件です。2. 体調への影響があり、通院しています。3. 課長と離れて働けるよう、異動を希望します。4. 異動までのあいだ、報告先の変更など課長との接点を減らす対応をお願いしたいと考えています。認識に違いがあればご指摘ください。」

社内の相談窓口や人事への相談の進め方は、次のパワハラを人事に相談する方法で詳しく扱っています。

異動の打診を受けたときに確かめること

会社から異動の案が示されたら、すぐに返事をせず、条件を確かめます。

確かめる項目 尋ね方の例
仕事の内容・職種 「異動先ではどのような業務を担当しますか」
勤務地・通勤時間 「勤務地と勤務時間に変更はありますか」
賃金・役職・評価 「給与や役職、評価の扱いは変わりますか」
加害者との接点 「異動先の業務で、○○課長と関わる場面はありますか」
異動先への説明 「異動の理由は、異動先にどこまで伝わりますか」
期間 「一時的な配置ですか。元の部署に戻る可能性はありますか」

指針は、相談者のプライバシーを守る措置も会社に求めています。異動先にどこまで事情を伝えるかは、自分の希望を言っておくとよいでしょう。

一方で、相談した後に、望んでいない遠方への転勤や降格を伴う異動を示されることもあります。労働施策総合推進法 第31条2項は、相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。示された異動がこれに当たるかどうかは事情によるので、自分で結論を出さず、打診の日付と内容を記録して社外の窓口に相談してください。嫌がらせとしての転勤・異動を命じられたときの考え方は嫌がらせの転勤・異動を命じられたらにあります。

異動が認められないときの次の手

「人員に余裕がない」「事実が確認できるまで動かせない」と言われることもあります。その場合は、異動以外の配慮(報告先の変更、席の移動、業務連絡をメールにする)を改めて求めます。加害者の謝罪を求めたいときはパワハラ加害者に謝罪してほしいときを参考にしてください。

それでも会社が何もしないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談し、会社に対する助言・指導・勧告を求めることができます。外へ出す前に確かめることはパワハラを相談しても会社が対応しないときにまとめています。セクハラで加害者と離れたい場合は、根拠となる法律が男女雇用機会均等法になるのでセクハラを受けたときの対応の5ステップを読んでください。

異動の希望を伝えたあとは、会社が事実確認を始めることがあります。次の記事パワハラのヒアリングで被害者が準備すること:聞かれる項目と伝え方で、聞かれる項目と伝え方を確かめておけます。

よくある質問

Q. 異動を希望すると「逃げた」と評価されて、昇進に響きませんか?

異動の希望を出したこと自体で評価を下げるかどうかは会社の運用によりますが、ハラスメントの相談をしたことを理由に不利益な扱いをすることは法律で禁じられています。希望を出すときは、パワハラの相談とあわせて申し出たことをメールで残しておくと、後で評価が下がったときに経緯を示しやすくなります。

Q. 被害を受けた自分ではなく、加害者を異動させてほしいと言ってもいいですか?

言ってかまいません。パワハラ指針は、事実が確認できたときの行為者への措置の例として配置転換を挙げています。自分が今の仕事を続けたい理由(担当している顧客や専門性など)を添えて、「どちらが動くかも含めて検討してほしい」と伝えると、会社が選べる案が広がります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

パワハラを人事に相談する方法:面談で伝える順番と動かないときの次

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