ハラスメントの種類 / 用語

ケアハラとは?介護休業・介護休暇の利用への嫌がらせと相談先

この記事のもくじ
  1. ケアハラとは:介護の制度を使うことへの言動
  2. 介護の制度の中身:法律で決まっている枠
  3. ケアハラに当たりうる言動:指針の典型例を介護の場面で
  4. ケアハラを受けたときの動き方と相談先

ケアハラ(ケアハラスメント)とは、家族の介護のために介護休業や介護休暇、残業の免除などを使おうとした人、または使った人に対する、上司や同僚の嫌がらせを指す呼び方です。法律上は育児・介護休業法第25条の「育児休業等に関するハラスメント」に含まれ、会社には防止のための措置が義務づけられています。相談先は社内の窓口と、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。

ケアハラとは:介護の制度を使うことへの言動

「ケアハラ」は法律の用語ではありません。育児・介護休業法第25条は、育児休業・介護休業その他の「子の養育又は家族の介護に関する」制度の利用に関する言動によって、働く人の就業環境が害されないよう会社に措置を求めています。厚生労働省の指針は、これを「職場における育児休業等に関するハラスメント」と呼び、対象の制度に介護のものを含めています。

指針の対象のうち、介護に関わる制度は次のとおりです。

  • 介護休業
  • 介護休暇
  • 所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限(介護を理由とする場合)
  • 介護のための所定労働時間の短縮措置

行う人は上司または同僚、受ける人は男女を問わず、正社員・パート・契約社員などすべての労働者です。業務分担や安全配慮などの観点から、客観的にみて業務上の必要性にもとづく言動は該当しない、と指針は線を引いています。

なお、「介護ハラスメント」という言葉は、介護の仕事をする人が利用者やその家族から受ける暴言などの意味でも使われます。そちらは顧客等からの言動として扱われ、カスハラとは?定義と2026年10月から会社に課された措置義務の領域です。育児の場面の整理はパタハラとは?男性の育休取得を妨げる言動と会社の義務にあります。

介護の制度の中身:法律で決まっている枠

言われたことが「制度の利用」に関わるかを判断するには、まず使える制度の枠を知っておくのが近道です。

早見表:介護のために使える主な制度(育児・介護休業法)
制度 法律で決まっている枠 条文
介護休業 要介護状態の家族1人につき、3回まで・通算93日まで 第11条・第15条
介護休暇 1年度に5日、対象家族が2人以上なら10日。1日未満の単位でも取れる 第16条の5
介護休暇の申し出への会社の義務 会社は申し出を拒めない 第16条の6
介護のための所定労働時間の短縮等 要介護状態の家族を介護する人に、連続する3年以上の期間で、短縮などの措置を会社が講じる(労使協定で対象外とされた人を除く) 第23条3項
申し出・取得を理由とする不利益取扱い 解雇その他の不利益な取扱いの禁止(介護休業) 第16条

2024年5月の法改正(2025年4月から段階的に施行)で、会社の側の義務も増えています。厚生労働省の改正の概要では、介護離職を防ぐための雇用環境の整備、40歳の時期の早めの情報提供、介護に直面した人への個別の周知と意向確認が事業主の義務とされています。条文では、介護が必要になったと申し出た人に、会社が介護休業などの制度を知らせ、利用の意向を確かめる面談などを行うこと(第21条4項)、40歳に達した年度などに制度の情報を知らせること(同条5項)が定められています。

つまり、「介護が必要になった」と伝えたときに制度の説明すらない、あるいは面談の場で利用をやめるよう言われる、というのは、会社がすべき対応と逆向きです。

ケアハラに当たりうる言動:指針の典型例を介護の場面で

指針の典型例は3つの型に分かれています。限定列挙ではありません。右の列は介護の場面に置き換えた例で、当たるかどうかは事実を確かめたうえで窓口が判断します。

指針の典型例 条件 介護の場面に置き換えると
① 不利益な取扱いの示唆 上司が、相談・申し出・利用を理由に示唆する 介護休業の相談をしたら「休むなら管理職から外れてもらう」と言われた
② 申し出・利用の阻害(上司) 申し出をしないよう言う/取り下げるよう言う 介護休暇の申し出に「親の介護は家族で何とかするものだ。取り下げろ」と言われた
② 申し出・利用の阻害(同僚) 繰り返しまたは継続的に言う 残業免除を申し出たら、同僚から毎日のように「ずるい」「やめてくれ」と言われる
③ 利用したことへの嫌がらせ 繰り返しまたは継続的に、嫌がらせ的な言動・仕事をさせない・雑務だけ 短時間勤務にしてから会議に呼ばれず、雑用だけを回され続けている

上司による①②は一度でも典型例の形に当たる書き方で、同僚による②と③は「繰り返し又は継続的に」が条件です。厚生労働省のパンフレットには介護休業の例も載っています。介護休業を請求すると周囲に伝えたところ、同僚から「自分なら請求しない。あなたもそうすべき」と言われ、「それでも請求したい」と再度伝えたのに同じ発言をされ、取得をあきらめざるを得なくなった、というものです。休む日程を業務と調整するための相談は、それ自体は業務上の必要にもとづく言動になりえます。ただ、調整の話のなかで「取り下げてほしい」と求められたかどうかは区別して記録しておきます。

指針は、ハラスメントの背景に、制度を使う人の分の業務が周囲に偏ることがあると述べ、会社に業務分担の見直しや業務の効率化など業務体制の整備を求めています。同僚の不満が自分に向いている場合も、本来の解決先は業務体制を整える会社だ、という整理ができます。

ケアハラを受けたときの動き方と相談先

  1. 言われた言葉と日時を書き残す:誰が、どの制度について、何と言ったか。同席者も。
  2. 申し出は書面かメールで:介護休業は対象家族が要介護状態にあることと、開始予定日・終了予定日を明らかにして申し出るものと法律で定められています。日付が残る形で出しておきます。
  3. 社内の相談窓口へ:会社には相談窓口を定めて周知し、該当するか微妙な場合も広く相談に応じる義務があります。
  4. 労働局の雇用環境・均等部(室)へ:育児・介護休業等のハラスメントの窓口です。労働局長による援助(第52条の4)、紛争調整委員会による調停(第52条の5)の仕組みがあり、相談や申請を理由とする不利益な取扱いは禁じられています。

文例(上司へのメール):「○月○日の面談で、母の介護のための介護休暇について取り下げるよう言われました。育児・介護休業法にもとづく申し出として、○月○日の取得を改めてお願いします。業務の調整方法についてはご相談させてください。」

記録の付け方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つき、労働局でできることは労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできることで詳しく説明しています。

介護と仕事の両立が難しくなり、辞めることを考える場合もあるでしょう。ハローワークの「特定受給資格者の範囲」には、介護休業等に関する言動で職場環境が悪くなっていることを会社が知りながら措置を講じなかったために離職した人が含まれています。離職理由の確かめ方はパワハラで退職したときの失業保険:特定受給資格者になる場合と確かめ方へ。育児の制度の利用に関する似た悩みは育休明けのマタハラ:降格・配置転換・嫌味を受けたときの整理も参考になります。

よくある質問

Q. 契約社員やパートでも介護休業を取れますか?

期間を定めて雇われている人も対象です。ただし育児・介護休業法第11条は、休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない人に限る、としています。自分が当たるかどうかは契約書の期間と更新の条件で確かめ、迷う場合は労働局の雇用環境・均等部(室)に尋ねてください。

Q. 介護休暇を申し出たら「人が足りないから無理」と断られました。

育児・介護休業法第16条の6は、会社は介護休暇の申し出を拒むことができないと定めています(労使協定で対象外とされた人や、時間単位での取得が業務の性質上難しい業務の人は例外です)。断られた日時と言葉を記録し、社内の相談窓口か労働局に相談してください。断る言動が繰り返されている場合は、ケアハラとしても相談できます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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