パタハラとは?男性の育休取得を妨げる言動の例と、会社の義務・相談先
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パタハラ(パタニティハラスメント)とは、男性が育児休業などの制度を使おうとしたとき、または使ったあとに、上司や同僚から受ける嫌がらせを指す呼び方です。法律上は育児・介護休業法第25条の「育児休業等に関するハラスメント」に当たり、男女を問わず対象で、会社には防止のための措置が義務づけられています。指針は、上司が申し出をしないよう言うこと、取得を理由に不利益を示唆することなどを典型例に挙げています。
パタハラとは:育児・介護休業法25条のハラスメント
育児・介護休業法第25条は、職場で行われる「育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する制度又は措置の利用に関する言動」によって働く人の就業環境が害されないよう、会社に相談体制の整備などの措置を求めています。厚生労働省の指針は、これを「職場における育児休業等に関するハラスメント」と呼び、次のように範囲を示しています。
- 行う人:上司または同僚。
- 受ける人:正社員だけでなく、パート・契約社員などを含む男女の労働者すべて。派遣で働く人は派遣先も措置の対象。
- 該当しないもの:業務分担や安全配慮などの観点から、客観的にみて業務上の必要性にもとづく言動。
対象になる「制度等」は、育児休業(産後パパ育休を含む)、子の看護等休暇、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限、育児のための短時間勤務などで、介護の制度も同じ条文に入っています。介護の場面はケアハラとは?介護休業・介護休暇の利用への嫌がらせと相談先で扱います。
マタハラとの違いは、根拠になる法律です。
| 呼び方 | 主な場面 | 根拠 |
|---|---|---|
| マタハラ | 女性の妊娠・出産、産前産後休業、つわりなどの状態 | 男女雇用機会均等法 第15条 |
| パタハラ | 男性の育児休業・短時間勤務などの利用 | 育児・介護休業法 第25条 |
| 女性の育休取得への嫌がらせ | 育児休業などの利用 | 育児・介護休業法 第25条 |
女性の妊娠・出産そのものへの言動は均等法の領域で、マタハラとは?制度利用への嫌がらせ型・状態への嫌がらせ型を解説にまとめています。
男性の育休でいうと:指針の3つの典型例
指針は典型例を3つに分けています。限定列挙ではないので、ここにない言動でも相談の対象になります。下の表の右の列は、指針の文言を男性の育休の場面に置き換えた例です。当たるかどうかの判断は、会社の窓口や労働局が事実を確かめて行います。
| 指針の典型例 | 条件 | 男性の場面に置き換えると |
|---|---|---|
| ① 解雇その他不利益な取扱いの示唆 | 上司が、相談・申し出・取得を理由に示唆する | 育休の相談をしたら「取るなら次の昇格はないと思え」と言われた |
| ② 申し出・利用の阻害(上司) | 上司が、申し出をしないよう言う/取り下げるよう言う | 「男が育休なんて聞いたことがない。考え直せ」と申出書を返された |
| ② 申し出・利用の阻害(同僚) | 繰り返しまたは継続的に言う(やめてほしいと伝えた後にさらに言うことを含む) | 同僚から何度も「本当に取るの?みんなが迷惑する」と言われ続けている |
| ③ 利用したことへの嫌がらせ | 上司・同僚が繰り返しまたは継続的に、嫌がらせ的な言動、仕事をさせない、雑務だけをさせる | 復帰後、担当していた案件から外され、コピーや片付けだけを任されている |
上司による①と②は「繰り返し」という条件のない書き方です。厚生労働省のパンフレットも、上司が言った場合は1回でも該当しうると説明しています。一方、同僚による②と、③は繰り返し・継続が条件に入っています(本人が意に反することを伝えたのに、さらに言われた場合は、さらに繰り返すことまでは求められません)。
同じパンフレットには、男性の育休に関する典型例が実際に載っています。育休の取得を上司に相談したら「男のくせに育休なんてあり得ない」という趣旨のことを言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になった例と、産後パパ育休の取得を周囲に伝えたら同僚から「迷惑だ」と繰り返し言われた例です。また、上司が個人として申し出を取り下げるよう言うのはハラスメントの問題で、会社として取得を認めないとなれば、そもそも育児・介護休業法の規定に反する問題になる、と整理されています。
指針は、労働者の事情やキャリアを考えて早期の職場復帰を促すことは阻害に当たらないと明記しています。また、制度を使っていない人への言動(例:取得目標のために育休を強要して罵倒する)は、厚生労働省のパンフレットで、パワーハラスメントの3要素で判断するものと説明されています。その考え方はパワハラとは?3要素と6類型・指導との境目を指針の言葉で整理を参照してください。
男性が使える育児の制度:法律で決まっている枠
パタハラかどうかを考える前提として、男性がどの制度を「使ってよいか」を知っておくと、言われたことの意味が見えやすくなります。
| 制度 | 法律で決まっている枠 | 条文 |
|---|---|---|
| 育児休業 | 子が1歳になるまで。2回まで分けて取れる。要件に当たる場合は1歳6か月、さらに2歳になるまで延長できる | 第5条 |
| 出生時育児休業(産後パパ育休) | 子の出生後8週間以内に、4週間(28日)まで。2回まで分けて取れる | 第9条の2 |
| 子の看護等休暇 | 小学3年生修了までの子が1人なら年5日、2人以上なら年10日。病気・けがの世話のほか、予防接種などの予防、学級閉鎖でも使える | 第16条の2 |
| 育児のための短時間勤務 | 3歳未満の子を育て、育児休業中でない人について、会社が措置を講じる(労使協定で対象外とされた人を除く) | 第23条 |
ほかに、会社側の義務として次の決まりがあります。
- 個別の周知と意向確認(第21条):本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た労働者に、会社は育児休業の制度を知らせ、取得の意向を確かめる面談などを行わなければならない。男性が「妻が妊娠した」と伝えた場面も含まれます。
- 取得状況の公表(第22条の2):常時雇用する労働者が300人を超える会社は、育児休業の取得状況を年1回以上公表する。
- 不利益取扱いの禁止(第10条):育児休業の申し出や取得を理由とする解雇その他の不利益な取扱いの禁止。こちらは会社が行う処分(降格・減給・契約打ち切りなど)についての決まりで、第25条は上司・同僚の言動についての決まり、と分けて考えます。
会社に課された義務:防止の措置と、相談を理由とする不利益の禁止
指針は、会社が講じなければならない措置を次のように定めています。従業員の立場では、自分の会社にこれらがあるかを確かめる観点になります。
- 方針の明確化と周知:ハラスメントの内容、育児休業等への否定的な言動が原因や背景になりうること、ハラスメントを行ってはならない方針、そして制度等を利用できることを就業規則や社内報などで示し、管理職を含めて周知する。行った人への懲戒などの対処も定める。
- 相談窓口:あらかじめ定めて周知する(外部への委託も可)。該当するか微妙な場合も広く相談に応じる。
- 事後の対応:相談者と行為者の双方から事実を確かめ、確かめるのが難しければ調停など中立な第三者機関に委ねる。事実が確かめられたら、事案に応じて、被害を受けた人の職場環境の改善や迅速な制度利用に向けた環境整備、行為者への懲戒その他の措置、再発防止を行う(指針が挙げる例)。
- 原因の解消:制度を使う人の周囲に業務が偏らないよう業務分担を見直す、業務を点検して効率化するなど、業務体制を整える。
- プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止の周知:相談したこと、事実確認に協力したこと、労働局に相談・援助の求め・調停の申請をしたことを理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知する。
相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、第25条2項で法律として禁じられています。
パタハラを受けたときの動き方
- 言われた言葉を記録する:日時・場所・言った人・同席者・言葉そのもの。書き方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきが参考になります。
- 申し出は書面かメールで出す:口頭だけだと「申し出はなかった」と言われることがあるため、申し出の日付を残す。
- 会社の相談窓口に伝える:直属の上司が言った本人なら、人事やハラスメント窓口へ。
- 社外の窓口に相談する:都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が育児休業等のハラスメントの窓口です。労働局長による援助(第52条の4)と、紛争調整委員会による調停(第52条の5)の仕組みがあります。窓口の役割は労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできることで詳しく説明しています。
文例(申し出のメール):「育児・介護休業法にもとづき、○月○日から○月○日まで育児休業を取得したく申し出ます。業務の引き継ぎについてはご相談させてください。先日の面談で取得を考え直すよう言われましたが、取得の希望は変わりません。」
取得を理由に職場にいづらくなり、辞めることまで考えている場合は、先に離職理由や次の職場の確かめ方を知っておくと選びやすくなります。妊娠・出産側の整理ですが、マタハラで退職を迫られたら:応じる前に確かめることと転職の考え方の後半が参考になります。
よくある質問
Q. 「パタハラ」という言葉は法律に書かれていますか?
法律や指針に「パタハラ」という語はありません。法律上は育児・介護休業法第25条の「育児休業等に関する言動」による就業環境の悪化で、指針では「職場における育児休業等に関するハラスメント」と呼ばれています。会社の相談窓口や労働局で話すときは、どの制度の利用について何を言われたかを伝えると通じやすくなります。
Q. 繁忙期なので取得時期をずらせないかと上司に聞かれました。これもパタハラですか?
指針は、業務分担や安全配慮の観点から客観的に業務上の必要性がある言動は該当しないとしています。厚生労働省のパンフレットは、該当しない例として、業務体制を見直すために上司が育休をいつからいつまで取るのか確認することや、同僚が自分の休暇と調整するために期間を尋ねて変更を相談することを挙げ、変更の相談は強要しない場合に限る、と付けています。時期の相談そのものと、「申し出をしないよう言う」「取り下げるよう言う」ことは分けて考えます。断っても重ねて取り下げを迫られる、断ると評価に響くと示されるといった場合は、言われた言葉を記録して窓口に相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 育児・介護休業法 第5条・第9条の2・第10条・第16条の2・第21条・第22条の2・第23条・第25条・第52条の4・第52条の5(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 子の養育又は家族の介護を行う労働者の両立のための指針(平成21年厚生労働省告示第509号)第二の十四 令和8年10月1日適用(厚生労働省)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(令和8年10月1日適用時点の指針を収録)(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。