マタハラとは?制度利用への嫌がらせ型・状態への嫌がらせ型を解説
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マタハラ(妊娠・出産等に関するハラスメント)とは、職場で上司や同僚から、妊娠・出産したことや、産休・母性健康管理などの制度を使うことに関する言動を受け、働く環境が害されることです。男女雇用機会均等法15条は、これを防ぐ措置を会社に義務づけています。厚生労働省の指針は、これを「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」の2つに分けて説明しています。
マタハラとは:均等法15条と指針の定義を簡単に
均等法15条は、職場で女性労働者に対して行われる「妊娠したこと、出産したこと、産前休業を請求したこと、その他の妊娠・出産に関する事由に関する言動」で就業環境が害されないよう、会社に相談体制の整備などの措置を求めています。対象の事由は均等法施行規則2条の4に並んでいます。
指針(平成28年厚生労働省告示第312号)による整理は次のとおりです。
- 行為者は上司または同僚です。
- 業務分担や安全配慮などの観点から、客観的にみて業務上の必要性に基づく言動は、マタハラに当たらないとされています。
- 対象はパート・契約社員など非正規を含めた、会社が雇うすべての女性労働者です。派遣社員は派遣先も対象です。
- 「職場」には、ふだん働いている場所以外でも、業務を行う場所が含まれます。
厚生労働省のパンフレットは、妊娠の状態や制度の利用と、嫌がらせとなる行為との間に因果関係があるものがハラスメントに当たる、と説明しています。単に厳しい言動があるだけでなく、「妊娠したから」「制度を使ったから」という結びつきがあるかが要点です。
2つの型:制度等の利用への嫌がらせ型・状態への嫌がらせ型
| 制度等の利用への嫌がらせ型 | 状態への嫌がらせ型 | |
|---|---|---|
| 何に関する言動か | 妊娠・出産に関する制度や措置を使うこと(使おうとすること) | 妊娠した・出産したという状態、つわりなどの症状 |
| 対象 | ①母性健康管理措置(妊婦健診の時間確保など)②坑内業務・危険有害業務の就業制限 ③産前休業 ④軽易な業務への転換 ⑤時間外・休日労働、深夜業などの制限 ⑥育児時間 | ①妊娠 ②出産 ③就業制限で業務に就けないこと ④産後の就業制限・産後休業 ⑤つわり・妊娠悪阻・切迫流産・出産後の回復不全などで働けない・能率が下がったこと |
| 典型例(指針) | 上司が解雇などの不利益をほのめかす/上司が請求しないよう・取り下げるよう言う(同僚は繰り返し・継続的に)/利用したことで繰り返し・継続的に嫌がらせをする | 上司が解雇などの不利益をほのめかす/上司・同僚が繰り返し・継続的に嫌がらせをする |
制度等の利用への嫌がらせ型には、3つのパターンがあります。
- 不利益の示唆:制度の利用を相談・請求・利用したことで、上司が解雇その他不利益な取扱いをほのめかす。パンフレットの例は「休みを取るなら辞めてもらう」。上司による直接の言動なら1回でも該当します。
- 利用の阻害:上司が請求しないよう、または取り下げるよう言う。同僚の場合は繰り返し・継続的に言うこと(本人が意に反すると伝えた後にさらに言うことを含む)。客観的にみて、一般的な労働者なら利用をあきらめざるを得ない状況になる言動を指します。
- 利用後の嫌がらせ:利用したことで、上司・同僚が繰り返し・継続的に嫌がらせ的な言動をする、仕事をさせない、雑務ばかりさせる。
状態への嫌がらせ型は、妊娠したことやつわりで休んだことなどを理由に、上司が不利益をほのめかす(1回でも該当)、または上司・同僚が繰り返し・継続的に嫌がらせをするものです。パンフレットは、言葉だけでなく、必要な仕事の情報を与えない、これまで出ていた会議に参加させないといった行為も含まれると説明しています。
具体的な言葉の例を場面ごとに知りたい人はマタハラになりうる発言の例へ進んでください。
マタハラに当たらない言動:業務上の必要性に基づくもの
指針とパンフレットは、次のような言動は業務上の必要性に基づくもので、マタハラに当たらないとしています。
- 業務体制を見直すため、上司が育児休業をいつからいつまで取るのか確認する
- 業務状況を考えて、上司が「次の妊婦健診はこの日は避けてほしいが調整できるか」と確認する(強要しない場合に限る)
- 同僚が自分の休暇との調整のために休業の期間を尋ね、変更を相談する(強要しない場合に限る)
- 長時間労働をしている妊婦に、上司が業務分担を見直して残業を減らそうと提案する
- 「つわりで体調が悪そうだが、少し休んだ方が良いのではないか」と配慮する
ただし、パンフレットは「労働者の意を汲まない一方的な通告」はハラスメントになる可能性があると注意しています。「調整できるか」と聞かれるのと、「健診はこの日にしないで」と決めつけられるのとでは意味が違います。配慮のつもりの言葉でも、本人の希望を聞かずに仕事を外すことが続けば、整理の仕方が変わります。
会社による「不利益取扱い」とは別の規定(均等法9条)
マタハラを考えるとき、誰が何をしたかで、使う規定が分かれます。
| 区別 | 根拠 | 中身 |
|---|---|---|
| 上司・同僚の言動(ハラスメント) | 均等法15条(措置義務) | 会社は、防止の方針の周知・相談窓口・事後の対応などの措置をとる |
| 会社としての解雇・降格などの扱い | 均等法9条3項(不利益取扱いの禁止) | 妊娠・出産、産休、母性健康管理措置などを理由とした解雇その他不利益な取扱いをしてはならない |
| 妊娠中・産後1年以内の解雇 | 均等法9条4項 | 解雇は無効。ただし会社が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明したときは別 |
| 男女の育休・時短などをめぐる言動 | 育児・介護休業法25条 | 育児休業等に関するハラスメントの措置義務(男女とも対象) |
| 会社としての育休などを理由とする扱い | 育児・介護休業法10条など | 育児休業の申出・取得などを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止 |
指針は、事業主が行う妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは「既に法第9条第3項で禁止」されていると明記しています。厚生労働省のパンフレットは、不利益取扱いの例として、解雇、契約の更新をしないこと、退職や非正規への変更の強要、降格、減給・賞与の不利益な算定、昇進・昇格での不利益な評価、不利益な配置の変更などを挙げています。
産休・育休から戻った後の降格や配置転換に悩んでいる場合は育休明けのマタハラで、妊娠中のつわりや通院への嫌味は妊娠中のマタハラで、退職を迫られている場合はマタハラで退職を迫られたらで詳しく扱います。男性の育休をめぐる言動はパタハラとは、介護のための休みはケアハラとはを読んでください。
会社がとるべき措置と、相談先
指針は、パワハラやセクハラと同じく、方針の明確化と周知、相談窓口、事後の迅速で適切な対応、プライバシー保護と不利益取扱いをされない旨の周知を会社に求めています。それに加えて、マタハラに特有の措置があります。
- 制度等を利用できることの周知。 方針と一緒に、妊娠・出産に関する制度を利用できる旨を明確にし、周知します。
- 原因や背景を解消する措置。 指針は、つわりなどで周囲の業務負担が増えることがマタハラの要因の一つになるとして、業務分担の見直しや業務の効率化など、業務体制の整備を会社に求めています。
相談先の順番は、社内の相談窓口・人事のほか、社外では都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。厚生労働省は、ハラスメントの相談は匿名でも可能で、無料と案内しています。均等法・育介法には、労働局長による紛争解決の援助と、紛争調整委員会の調停の仕組みもあります。窓口の連絡先はパワハラの相談窓口一覧に、雇用環境・均等部(室)でできることは労働局のハラスメント相談窓口にまとめています。ほかのハラスメントとの違いを全体で見たい人は職場のハラスメントの種類一覧が入口になります。
よくある質問
Q. マタハラは1回言われただけでも当たりますか?
型によって違います。上司が解雇などの不利益な取扱いをほのめかす言動は、1回でも該当すると厚生労働省のパンフレットは説明しています。一方、嫌がらせ的な言動や雑務ばかりさせることは「繰り返し又は継続的」なものが該当し、やめてほしいと伝えた後にさらに言われた場合は回数を問わないとされています。
Q. マタハラとパタハラの違いは何ですか?
マタハラは主に妊娠・出産した女性への言動で、男女雇用機会均等法15条の対象です。男性が育児休業などを取ろうとして受ける言動は、育児・介護休業法25条の「育児休業等に関するハラスメント」として扱われ、一般にパタハラと呼ばれます。
Q. 妊娠中や産後に解雇されたら、マタハラとは別の決まりがありますか?
あります。妊娠・出産を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、均等法9条3項で禁じられています。妊娠中と産後1年以内の解雇は、9条4項により無効で、会社が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明したときは別です。上司や同僚の言動への措置義務である15条とは、別の規定です。
出典・参考にした公的な情報
- 男女雇用機会均等法 第9条・第15条・第17条・第18条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 男女雇用機会均等法施行規則 第2条の2・第2条の4(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 育児・介護休業法 第10条・第25条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 妊娠・出産等に関するハラスメント指針(平成28年厚生労働省告示第312号)令和8年10月1日適用(厚生労働省)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(令和8年10月1日適用時点)(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。