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パワハラを相談したら解雇された:不利益取扱いの禁止と動き方

この記事のもくじ
  1. 相談した人の解雇について、法律が定めていること
  2. 解雇を言い渡されたら、最初の1週間にすること
  3. 相談と解雇の関係を見てもらうための時系列表
  4. 相談先と使い分け:労働局・弁護士・労働審判
  5. 辞めたくないとき・辞めたいときの注意

パワハラを会社に相談した後に解雇を言い渡されたとき、法律は会社に対し、相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています(労働施策総合推進法31条2項)。ただし、あなたの解雇がそれに当たるかは、解雇理由と相談の時期など事実を見て判断される事柄です。この記事では、いま確かめておくこと、時系列で整理する方法、労働局の援助・調停と弁護士の使い分けを説明します。

相談した人の解雇について、法律が定めていること

労働施策総合推進法31条は、パワハラ防止の措置義務を会社に課す条文です。2026年10月1日の改正で条番号が変わり、改正前は第30条の2でした。その2項は、労働者が会社に相談したこと、または会社の相談対応に協力して事実を述べたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めています。厚生労働省の指針も、会社が不利益取扱いを行わない旨を定めて周知するよう求めています。

押さえておく点は三つです。

  • 禁じられているのは、相談・協力を「理由とする」扱いで、すべての解雇が対象になるわけではない
  • 労働局に援助を求めたこと(36条2項)、調停を申請したこと(37条2項)を理由とする不利益取扱いも、別に禁じられている
  • 条文は会社の義務を定めたもので、個別の解雇が無効になるか、損害賠償が認められるかは、裁判所などが判断する

解雇が有効かどうかは、労働契約法16条の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」でも見られます。相談との関係と、解雇理由の合理性の両方を、材料をそろえて窓口に持ち込むのが現実的な進め方です。解雇一般の考え方は「不当解雇とは?解雇の有効性の考え方と通知されたらすぐすること」で説明しています。

解雇を言い渡されたら、最初の1週間にすること

  1. その場で署名・返事をしない:「分かりました」と答えると、合意による退職と受け取られるおそれがある。解雇通知書は、受け取ったことだけを記す。
  2. 解雇の理由を書面で求める:解雇の予告をされた後は、退職日までに解雇理由証明書を請求できる(労基法22条2項)。即日解雇で退職日までの間がないときは、退職後に退職証明書で解雇の理由を請求します(同条1項)。理由が相談と無関係と説明されても、書面に残すことで後の確認ができる。
  3. 予告の有無を確かめる:30日前の予告か、予告手当があるかを見る(労基法20条)。手当を受け取っても、解雇に同意したことにはならない。
  4. 相談の記録をすべて保存する:社内窓口へ出したメール、面談の日時、人事の回答、事実確認で聞かれた内容。
  5. 日付つきで時系列を書き出す:下の表の形で、相談から解雇までを並べる。

会社に送るメールの例:「○月○日付で解雇を告げられました。解雇の理由と、解雇に至った経緯を書面でご提示ください。私は○月○日に、○○部長の言動について社内窓口へ相談しており、○月○日には人事部の事実確認に応じています。これらの対応と今回の解雇の関係についても、会社のお考えを教えてください。」

文面は感情的な表現を避け、事実と質問に絞ります。返事が来ないこと自体も、後の相談で説明できる記録になります。

相談と解雇の関係を見てもらうための時系列表

理由がどう書かれていても、いつ何が起きたかを並べると、窓口の担当者や弁護士は状況をつかみやすくなります。

時系列表の例:相談から解雇まで
日付 出来事 裏づけ
○月○日 上司の言動を社内窓口に相談 窓口へのメール
○月○日 人事の事実確認に応じ、上司の発言を説明 面談メモ、日程メール
○月○日 直属の上司から「余計なことをした」と言われた 日付つきの記録ノート
○月○日 評価面談で、前回の標準評価から低評価に変わった 評価シート、面談メモ
○月○日 解雇を口頭で告げられた。理由は「業績・協調性」 通知書、解雇理由証明書

表の各行に、裏づけになる資料(メール、メモ、書面)を添えます。相談の前の勤務評価や、会社が挙げる理由に関わる注意・指導の経過も並べておくと、理由との関係を見るときに役立ちます。時系列表の作り方は「パワハラの時系列表の作り方:相談や申立てで使える経緯書の書き方」、日々の記録の付け方は「パワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つき」を参考にしてください。

相談先と使い分け:労働局・弁護士・労働審判

窓口・手続 向いている問題 ポイント
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) 相談したことを理由とする不利益取扱い、会社の措置の問題 労働局長の援助(助言・指導・勧告)や調停(37条)がある。匿名の相談も可
総合労働相談コーナー どの窓口が合うか分からない、解雇そのものの相談 無料・予約不要。解雇の有効性はあっせんの対象
弁護士 解雇の無効、金銭での解決、交渉・労働審判の代理 時系列表と資料を持参する
労働審判(裁判所) 解雇をめぐる会社との紛争を、原則3回以内の期日で解決 相手は会社。申立ては弁護士に依頼するのが一般的

令和7年度の厚生労働省の資料では、労働局長による紛争解決の援助の申立てが1,675件受理されました。うち「相談を理由とした不利益取扱い」は53件です。令和7年度の是正指導のうち、相談を理由とした不利益取扱い(当時の条番号は30条の2第2項)に当たるものは6件でした。この制度が使われた実績はありますが、援助は助言・指導・勧告、調停は調停案の受諾勧告までで、どちらも会社に支払いを命じる強制力はありません。金銭や復職を求めるなら、解雇そのものの争いとして、あっせん、労働審判、弁護士への相談が候補になります。どの手続が合うかは、まず窓口に事情を伝えて相談します。

窓口の比較は「不当解雇の相談先:労基署・労働局・弁護士でできることの違い」、会社の対応が悪化したときの全体像は「パワハラを相談して悪化したら:報復・不利益な扱いへの対処」で扱っています。窓口の番号は「パワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表」にあります。

辞めたくないとき・辞めたいときの注意

解雇を争いたいときは、退職届や、退職に同意する書面を出さないことが大切です。解雇が通知された後に、会社から「退職扱いにする」という書類への署名を求められたら、内容を確かめて、その場で署名せず持ち帰ります。

辞める気持ちが固まっているときも、離職票の離職理由が会社都合になっているかを確かめます。解雇を理由に離職した人は、失業保険で特定受給資格者になる場合があります。

契約社員で、解雇ではなく更新を拒否された場合は「雇い止めとは?契約更新を拒否されたときに確かめる経緯と理由」で、更新の経緯と理由の確かめ方を整理しています。時効がある請求もあるので、期限は「パワハラの時効は何年?損害賠償と労災の期限を条文で確認」で確かめてください。

解雇されても辞めたくないときに、復職を求める道と金銭で終える道を比べる材料は不当解雇で復職を求めるか金銭で解決するか:選ぶための材料にあります。

よくある質問

Q. 会社は「パワハラの相談とは関係ない」と言っています。どうすればよいですか?

会社が別の理由(能力、勤務態度、業績など)を挙げることは珍しくありません。大切なのは、解雇理由を書面で出してもらい、相談した日・事実確認を受けた日・解雇を告げられた日を並べて、理由と時期の関係を見てもらうことです。関係の有無は、記録を示して労働局や弁護士に判断を求めます。

Q. 相談したのは社内の窓口だけで、労働局には何も言っていません。それでも使えますか?

31条2項は、会社に相談したこと、会社の事実確認に協力して事実を述べたことを理由とする不利益取扱いを禁じています。労働局に言っていなくても対象になります。解雇の後で、雇用環境・均等部(室)に相談して構いません。

Q. 解雇ではなく、契約を更新しないと言われました。同じ扱いになりますか?

条文が禁じるのは「解雇その他不利益な取扱い」で、更新の拒否も不利益な扱いの一つとして問題にされうる場面です。ただし有期契約の更新拒否は、労働契約法19条の考え方で別に確かめる点があります。「雇い止めとは?契約更新を拒否されたときに確かめる経緯と理由」で整理しています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

不当解雇とは?解雇の有効性の考え方と通知されたらすぐすること

パワハラを相談して悪化したら:報復・不利益な扱いへの対処

不当解雇の相談先:労基署・労働局・弁護士でできることの違い

雇い止めとは?契約更新を拒否されたときに確かめる経緯と理由