職場のパワハラを目撃したら:同僚を助けたいときにできること
職場でパワーハラスメント(パワハラ)を目撃したとき、第三者にできることは主に4つです。その場で安全に流れを切る、本人に声をかけて意向を確かめる、見たことをメモに残す、本人の了解の範囲で会社の窓口に相談する。厚生労働省は、会社の相談窓口が受ける相談には、言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談も含まれると説明しています。見ていただけの立場でも、相談はできるということです。
目撃した人も相談できる:厚生労働省の説明
厚生労働省の「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」は、会社が相談窓口で広く相談に対応するよう求める箇所で、相談には周囲の労働者からの相談も含まれると明記しています。同じパンフレットは、相談したことなどを理由とする不利益な取扱いの禁止についても、周囲の労働者らの相談が対象になると説明しています。法律の条文では、会社は労働者が相談をしたこと、または会社の相談対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとされています(労働施策総合推進法第31条第2項)。
また、パンフレットは、一見特定の人に向けた言動でも、周りの労働者を威圧するための見せしめとして行われていると客観的に認められる場合は、周りの労働者に対するパワハラと評価できる場合もあると注意しています。皆の前で一人が繰り返し怒鳴られ、職場全体が萎縮しているなら、あなた自身の困りごととして相談する道もあります。
国家公務員の場合も、人事院の運用通知が、苦情相談は被害を受けた本人だけでなく、目撃した職員なども行えるとしています。
手順1:その場では、安全に流れを切る
目撃した瞬間にできることは限られます。正面から加害者に抗議すると、矛先が自分に向いたり、言い合いになって被害者の立場が悪くなったりすることがあります。取りやすい方法の一つが、用事を作って場を中断させることです。
- 「〇〇さん、お客様からお電話です」と被害者を呼び出す
- 「課長、確認したい書類があるのですが」と加害者に別の用事を持ちかける
- 自分も近くにいることが分かるように、その場に残って作業を続ける
殴る、物を投げるなど暴力がある場合は、自分が間に入るより、周りの人を呼び、上司や警備に知らせることを優先します。けががある、身の危険が続くときの警察への相談は職場で暴力・脅しを受けたらを見てください。
手順2:本人に声をかけ、どうしたいかを聞く
その日のうちか翌日に、二人で話せる場所で声をかけます。助けたい気持ちが強いほど「すぐ相談しよう」と言いたくなりますが、まず本人がどうしたいかを聞くことが先です。被害を受けた人の中には、大ごとにしたくない、相談したら悪化しそうだと考える人もいます。
文例(最初の声かけ):「さっきの会議のこと、見ていました。大丈夫でしたか。何かできることがあれば言ってください。」
文例(意向を確かめる):「もし会社の窓口に相談するなら、私が見たことを話すこともできます。〇〇さんがどうしたいかを優先するので、今決めなくて大丈夫です。」
本人の答えによって、次の動き方を選びます。
| 本人の意向 | 目撃者ができること |
|---|---|
| 自分で相談したい | 目撃メモを渡す、相談に付き添う、事実確認で聞かれたら見たことを話す |
| 相談は迷っている | 目撃メモだけ残しておく、窓口の情報を伝えておく |
| 大ごとにしたくない | 名前を出さずに職場の状況として相談する選択肢があることを伝え、決めるのは本人に任せる |
話の聞き方や、窓口をすすめるときの言葉選びは友達や同僚からパワハラを相談されたらで詳しく扱っています。
手順3:目撃メモを残す
目撃者の記録は、言い分が食い違ったときに大きな助けになります。パワハラ指針も、相談者と行為者の主張が一致しないときは、第三者からも事実関係を聞き取るなどの措置を会社に求めています。見たことは、その日のうちに次の項目で書いておきます。
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 日時・場所 | 「10/16 14:10ごろ 第2会議室」のように具体的に |
| 誰が誰に | 行為者と被害者の名前、その場にいた他の人 |
| 言葉・行為 | 聞こえた言葉はそのまま書く。聞き取れなかった部分は「聞き取れず」と書く |
| 様子 | 声の大きさ、続いた時間、被害者の反応 |
| 自分の位置 | どこから見聞きしたか(隣の席、ドア越し等) |
| その後 | 被害者に声をかけたか、誰かに伝えたか |
推測や評価(「明らかに嫌がらせだった」など)は書かず、見聞きした事実だけにとどめます。後で陳述書や証言を頼まれたときの考え方はパワハラの証拠になる証言を同僚に頼むときを参考にしてください。
手順4:会社の窓口に相談する
本人の了解が得られたら、社内のハラスメント相談窓口か、上司の上司、人事に相談します。本人の了解がない場合は、本人を特定しない形で職場の状況として伝える方法があります。
文例(本人の了解がある場合):「〇〇課で、△△さんが課長から皆の前で強く叱責される場面を、この1か月で〇回見ました。日時と内容のメモがあります。△△さんの了解を得て相談に来ました。」
文例(本人を特定しない場合):「部署で、特定の人に大声での叱責が繰り返されていて、職場全体が萎縮しています。私自身も業務に集中できなくなっています。状況を確かめていただけないでしょうか。」
相談の最初に、相談したことが行為者に伝わらない形にしてほしいと頼んでおくと安心です。パワハラ指針は、相談者や行為者等のプライバシーを守るために必要な措置を会社に求めています。相談した後で自分や被害者への当たりが強くなったときは、パワハラを相談して悪化したらで対処を整理しています。社内で取り合ってもらえないときの社外の窓口はパワハラの相談窓口一覧にあります。
被害を受けている同僚との関係については同僚からのパワハラへの対処も参考になります。業務外の飲み会での言動が気になる場合は、次に読む飲み会の強要はパワハラ?を見てください。
よくある質問
Q. 本人から「大ごとにしないで」と言われました。それでも窓口に相談してよいですか?
本人の意向はできるだけ尊重したいところです。本人の名前を出さずに「部署で強い叱責が続いている」と職場の状況として相談する方法や、まず目撃メモだけを残しておく方法もあります。暴力やけがなど身の危険がある場合は、本人の意向より安全を優先して上司や警察に相談してください。
Q. 目撃したことを話したら、自分が標的にされないか心配です。
会社の相談対応に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、法律で禁じられています(労働施策総合推進法第31条第2項)。それでも心配な場合は、相談の最初に「相談したことが行為者に伝わらない形にしてほしい」と頼み、相談の日時と担当者を自分でも控えておきます。
Q. 見ていただけの自分にも、何か責任がありますか?
法律は労働者に対し、ハラスメントへの関心と理解を深め、他の労働者への言動に注意を払うよう努めることを求めていますが、これは努力義務で、目撃した人に通報を義務づけるものではありません。できる範囲で動けば十分です。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(相談対応・不利益取扱い禁止の解説、パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文を収録)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について(人事院)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。