法的手段の前に / 制度解説

パワハラ裁判の流れ:訴えの提起から判決・和解までと期間の目安

この記事のもくじ
  1. パワハラ裁判とは:誰を相手に何を求めるか
  2. 訴えの提起から判決・和解までの流れ
  3. 期間の目安と終わり方:裁判所の統計で見る
  4. 費用と、裁判を選ぶ前に考えること

パワハラで会社や加害者に損害賠償を求める裁判は、民事訴訟として進みます。訴状を出すと、公開の法廷での口頭弁論と争点の整理が続き、必要に応じて証人や本人の尋問を行い、判決か和解で終わります。最高裁判所の報告書によると、令和6年に終わった労働関係の民事訴訟の平均審理期間は16.1月で、6割余りが和解で終わっています。平均で3か月前後(令和6年は96.7日)で終わる労働審判と比べると、長い時間がかかる手続きです。

パワハラ裁判とは:誰を相手に何を求めるか

パワハラの裁判で多いのは、精神的な苦痛への慰謝料や治療費、休業による損害などの賠償を求める請求です。根拠になる条文は次のとおりで、相手を誰にするかで使う条文が変わります。

相手 主な根拠 内容
加害者個人(上司・同僚) 民法709条・710条 故意や過失で権利を侵害した人の賠償責任。財産以外の損害(精神的苦痛)も対象
会社 民法715条 従業員が事業の執行について与えた損害についての使用者の責任
会社 労働契約法5条(安全配慮義務) 労働者が安全に働けるよう配慮する義務に反したことによる責任

加害者個人と会社の両方を相手にする構成もありえます。労働審判は会社などの事業主しか相手にできないため、個人の責任を問いたいときは訴訟になります。どちらを相手にするかの考え方はパワハラで訴える相手は加害者個人か会社かで整理しています。

訴える裁判所は、請求額が140万円以下なら簡易裁判所、それを超えると地方裁判所です(裁判所法33条)。原則は被告の住所地の裁判所ですが、不法行為による損害賠償は、不法行為があった場所の裁判所にも訴えられます。

訴えの提起から判決・和解までの流れ

流れ図:パワハラの民事訴訟が終わるまで
  1. 訴状と証拠を裁判所に出す(2026年5月21日以後はオンライン提出も可)
  2. 第1回口頭弁論(公開の法廷。相当と認められればウェブ会議)
  3. 争点整理:双方が主張と書証を出し合い、争いのある点を絞る
  4. 証人尋問・当事者尋問(本人尋問)
  5. 判決 / 途中で和解・取下げ
  6. 判決の送達から2週間以内なら控訴できる
  1. 訴状を出す。 請求の内容と理由を書いた訴状に、手数料を納めて出します。2026年5月21日からはオンライン(mints)での提出もでき、弁護士が代理人になる場合は電子での申立てが義務になっています。
  2. 口頭弁論が始まる。 口頭弁論は公開の法廷で行うのが原則です。被告が欠席し、争う姿勢も示さないと、被告に不利な判決が出る可能性があります。
  3. 争点を整理する。 双方が主張書面と証拠(メール、録音の文字起こし、診断書など)を出し、何が争いになっているかを絞り込みます。令和6年の労働関係訴訟では、平均の期日回数は6.4回で、そのうち争点整理の期日が5.3回でした。期日と期日の間隔は平均2.5月です。
  4. 尋問を行う。 出来事の事実に争いがあれば、同僚などの証人尋問や、原告・被告本人の尋問を行います。令和6年の労働関係訴訟で人証調べをした事件の割合は27.5%で、人証調べをした事件では平均3.0人を調べています。
  5. 判決か和解で終わる。 判決のほか、裁判上の和解や取下げで終わることもあります。第一審の判決に不服があれば、判決書の送達から2週間以内に控訴できます。

証拠の集め方はパワハラの証拠集め、同僚に証言を頼むときの進め方はパワハラの証拠になる証言を同僚に頼むときで確かめられます。

期間の目安と終わり方:裁判所の統計で見る

最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」から、令和6年に終わった労働関係訴訟(地方裁判所の第一審)の数字をまとめます。パワハラだけでなく、解雇や賃金などを含む労働関係の訴訟全体の数字です。

項目 労働関係訴訟 民事第一審訴訟全体
平均審理期間 16.1月 9.2月
6月以内に終わった割合 18.0% 58.1%
1年超2年以内 37.6% 16.5%
2年を超えた割合 17.0% —
判決で終わった割合 26.4% 50.5%
和解で終わった割合 62.2% 31.6%

労働関係訴訟の新受件数は令和6年に4,214件でした。人証調べをした事件に限ると、平均審理期間は24.6月まで延びます。つまり、事実に争いがあって尋問まで進むと2年前後かかることもある、というのが公的な数字から読める目安です。一方で、和解で終わる事件が6割を超えており、判決まで行かずに途中で話し合いがまとまる事件も多い手続きです。

労働審判は、平成18年から令和6年までに終わった事件の平均が82.6日です。手続きの違いは労働審判の流れで確かめてください。

費用と、裁判を選ぶ前に考えること

訴えの手数料は、請求額に応じた額に、書面で出すなら2,500円、電子で出すなら1,400円を足した額です(被告が1人の場合。2人以上なら1人増えるごとに2,000円を加算)。郵便費用はこの手数料に含まれるようになりました。

請求額 書面で出す場合 電子で出す場合
100万円 12,500円 11,400円
300万円 22,500円 21,400円
500万円 32,500円 31,400円

(筆者の計算。裁判所の手数料額早見表と照合済み)

お金に余裕がない場合は、訴訟上の救助や、法テラスの民事法律扶助による費用の立替えの制度があります。

裁判を選ぶ前に、次の点を考えておくと、ほかの手段と比べやすくなります。

  • 時間と心の負担。 平均で1年を超え、尋問では自分も法廷で質問に答えます。休職中や治療中なら、主治医とも相談して時期を考えてください。
  • 公開されること。 口頭弁論は公開が原則です。非公開の手続きがよい場合は、労働審判や労働局の調停・あっせんも比べます。
  • 求めることが金銭か。 判決で命じられるのは主に金銭の支払いです。謝罪や配置の変更を求めたいなら、和解の場や会社との話し合いのほうが合うこともあります。
  • 期限。 損害賠償の請求には時効があります。条文はパワハラの時効は何年?で確かめられます。

過去の裁判でどのような事情が重視されたかはパワハラの判例の読み方で、依頼する弁護士の選び方はパワハラを弁護士に相談するときの選び方で確かめてください。

よくある質問

Q. パワハラの裁判は公開されますか?

民事訴訟の口頭弁論は公開の法廷で行うのが原則です。裁判所が相当と認めればウェブ会議で行うこともあります。非公開で進めたい事情がある場合は、非公開の労働審判や労働局の調停・あっせんとの違いも含めて、弁護士に相談して手段を選んでください。

Q. パワハラの裁判は弁護士なしでもできますか?

本人が自分で訴えを起こすこともできます。ただ、令和6年に終わった労働関係訴訟では、双方に訴訟代理人が付いた事件が84.1%、双方とも本人だけの事件は2.1%でした。証拠の出し方や尋問の準備が必要になるため、少なくとも一度は弁護士に見通しを聞いておくと判断しやすくなります。

Q. 裁判の途中で和解することはできますか?

できます。裁判所の案内では、民事訴訟は判決のほか、取下げや裁判上の和解などでも終わります。令和6年に終わった労働関係訴訟では、和解で終わった事件が62.2%で、判決の26.4%を上回っています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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