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定年後の再雇用でのパワハラ:年下上司・仕事外しの悩みと相談先

この記事のもくじ
  1. 年下の上司の言動は「地位」で見る:指針の例に当てはめる
  2. 「条件の変更」と「嫌がらせ」は、使う制度が違う
  3. 契約の更新や、辞めさせようとする動きがあるとき
  4. 動く順番:記録、会社の窓口、労働局

再雇用で働く人も、パワハラ指針の対象です。指針の「労働者」は、正社員だけでなくパート・契約社員などの非正規を含む全ての労働者を指します。年下の上司の言動も、判断の軸は年齢ではなく、地位に基づく優越性と、言動の内容・態様です。 賃金が下がる、役職を外れる、担当が変わるといった「条件の変更」と、人格を否定する、仕事を与えない、孤立させるといった「嫌がらせ」は、別に考えます。この記事では、その分け方と、記録・会社への申し出・労働局の相談の順番を書きます。

年下の上司の言動は「地位」で見る:指針の例に当てはめる

パワハラ指針は、パワハラを、職場で行われる①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超え、③就業環境が害されるもの、と定義しています。3つを全て満たす場合が対象です。

「優越的な関係」の例として挙がっているのは、職務上の地位が上位の者の言動、業務上必要な知識や豊富な経験を持ち協力が不可欠な同僚・部下の言動、同僚・部下による集団での行為です。年齢が上か下かは、例に入っていません。再雇用の社員にとって、役職のある年下の上司は、職務上の地位が上位の者にあたります。

再雇用後によく聞く場面を、指針の6類型の例に当てはめると、次のようになります。

早見表:再雇用後の場面と、指針の例との近さ
場面 近い類型 指針の「該当する例」「該当しない例」
会議や連絡から外され、挨拶も返されない 人間関係からの切り離し 同僚が集団で無視して孤立させることは該当する例
人前で、年齢や経歴を侮辱される 精神的な攻撃 人格を否定するような言動は該当する例
繰り返し、大声で威圧的に叱責される 精神的な攻撃 他の労働者の面前での大声での威圧的な叱責の繰り返しは該当する例
嫌がらせのために、仕事を与えない 過小な要求 気に入らない労働者に仕事を与えないことは該当する例
定年前より担当や業務量が軽くなった 過小な要求 能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減することは該当しない例
業務のミスについて、必要な範囲で注意された (精神的な攻撃との境目) 業務上必要かつ相当な範囲の指導は該当しない

表の下から2行目が、再雇用では特に迷いやすい点です。担当や業務量が変わったことが、嫌がらせなのか、再雇用の条件の一部なのかは、再雇用の契約で決まった職務と、実際に与えられている仕事を比べるとはっきりします。契約書や労働条件通知書にある職務内容・勤務日数・時間と、実際の業務を並べてみてください。契約にない雑務ばかりを命じられる、書面と違う仕事を一方的に外されるといった食い違いは、相談で伝える具体的な事実になります。指針の判断要素にも、言動の目的、業務の内容、言動の態様・頻度・継続性が入っています。食い違いは、書面で確認を求める方法もあります。

文例:「再雇用後の担当業務、権限、報告先について、労働条件通知書の記載との関係を、書面で確認させてください。」

どの類型にも当てはまらなくても、パワハラでないと決まるわけではありません。6類型は限定列挙ではなく、個別の事案ごとに総合して判断されます。3要素の考え方は、パワハラとは?3要素と6類型・指導との境目を指針の言葉で整理で確かめられます。

「条件の変更」と「嫌がらせ」は、使う制度が違う

再雇用の賃金や役職が下がることについて、法律は何を言っているかを整理します。

高年齢者雇用安定法第9条は、定年が65歳未満の会社に、65歳までの雇用を確保する措置(定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止)のどれかを求めています。継続雇用制度を導入する場合、希望者全員を対象にしなければなりません。ただし、心身の故障で業務に堪えられない、勤務状況が著しく不良といった、就業規則の解雇事由・退職事由(年齢に係るものを除く)に当たる場合は、継続雇用しないことができます。その場合も、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。

一方で、厚生労働省のQ&Aは、この制度は希望に合う労働条件での雇用を義務づけるものではないと説明しています。会社が合理的な裁量の範囲で条件を示せば、本人と合意できず継続雇用に至らなくても、法違反とはなりません。指針(令和7年告示第84号)は、継続雇用後の賃金について、就業の実態や生活の安定等を考慮して適切なものとなるよう努めることを求めるにとどまります。

つまり、「再雇用で給料が下がった」だけでは、パワハラの話にも、法違反の話にも、直ちにはなりません。ここで使えるのが、待遇差の理由を説明してもらう手続きです。

有期契約で再雇用された人は、短時間・有期雇用労働法の対象です。同一労働同一賃金のガイドライン(平成30年告示第430号。令和8年4月28日に改正)は、定年後に継続雇用された有期雇用労働者との待遇差は、職務の内容や配置の変更の範囲などの違いに応じたものなら認められるとしています。そのうえで、定年後の継続雇用であることだけで、待遇差が直ちに不合理でないと認められるわけではない、とも書いています。個々の待遇の性質や目的に照らして、総合的に判断されます。

同法第14条第2項は、有期雇用労働者から求めがあれば、会社は通常の労働者との待遇の相違の内容と理由を説明しなければならないと定めています。求めたことを理由にした解雇その他の不利益な取扱いは禁止です(同条第3項)。

文例:「再雇用後の基本給と賞与について、同じ部署の正社員との待遇の違いの内容と、その理由を、書面で教えてください。」

説明を受けても納得できない、説明がない、という場合は、労働局長による援助(同法第24条)や調停(同法第25条)を求められます。相談の入口は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーです。窓口の番号や受付時間はパワハラの相談窓口一覧で確かめてください。

契約の更新や、辞めさせようとする動きがあるとき

再雇用は、1年ごとの有期契約で更新していく形が少なくありません。Q&Aは、1年ごとの更新の場合、65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと、65歳までは原則として契約が更新されることが必要だと考えられる、と説明しています。更新しない理由は、客観的に合理的で、社会通念上相当なものであることが求められます。

労働契約法第19条は、反復して更新された契約で更新しないことが無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合、または更新を期待することに合理的な理由がある場合に、期間満了までの更新の申込み(満了後遅滞なくの申込みも含む)に対する拒絶が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でないときは、従前と同じ条件で更新を承諾したものとみなすと定めています。当てはまるかは契約の経緯ごとに判断されます。嫌がらせが続く中で、更新の時期に「今回で終わりにしたい」と言われる場合は、次の点を確かめてください。

  • 更新しない理由は何か。口頭だけでなく、書面でもらえるか
  • 理由に、就業規則の解雇事由・退職事由に当たる内容が挙がっているか
  • 更新を希望していることを、期間満了までに会社に伝えたか(メールなど記録が残る形が確かめやすい)

更新を断られたとき全般の整理は雇い止めとは?契約更新を拒否されたときに確かめる経緯と理由に、「そろそろ辞めては」と持ちかけられたときは退職勧奨をされたらにあります。応じるかどうかは自分で決められます。その場で答えず、書面で条件を受け取ってから考えてください。

定年後の再雇用そのものを断られた場合は、高年齢者雇用確保措置の問題になることがあります。Q&Aによれば、適切な継続雇用制度の導入などがなされていない事実を把握したとき、行政はハローワークを通じて実態を調べ、助言・指導・勧告、企業名の公表を行います。ただし、この法律は会社に制度を整えることを義務づけるもので、個々の労働者の65歳までの雇用を保障するものではないとQ&Aは説明しています。再雇用を拒まれた事情は、制度が整っていないという会社全体の問題として、労働局かハローワークに伝えられます。

動く順番:記録、会社の窓口、労働局

  1. 契約と制度の書類を手元に集める。 再雇用の契約書、労働条件通知書、就業規則の継続雇用の規定、給与明細。定年前と何が変わったかを一覧にします。
  2. 嫌がらせは、事実を記録する。 日時・場所・言われた言葉・周りにいた人・その後に起きたこと。書き方はパワハラの記録の書き方の記入例が使えます。業務の指示が過小や過大に偏っていると感じるなら、パワハラと指導の境目を示す記録のように、指示の内容と量も残してください。
  3. 会社の相談窓口か、人事に伝える。 会社には、相談窓口の整備と、事実関係の迅速で正確な確認が求められています。相談を理由にした不利益取扱いは禁止です。年下の上司本人ではなく、その上の管理者や人事、外部委託の窓口に伝えるほうが、事実が正確に伝わります。
  4. 解決しない場合は、労働局へ。 パワハラの紛争は、労働局長の援助(労働施策総合推進法第36条)と、紛争調整委員会の調停(同法第37条)が使えます。待遇差の説明をめぐる紛争は、先に書いた短時間・有期雇用労働法の援助・調停です。どちらか分からなくても、総合労働相談コーナーで状況を話せば、窓口を案内してもらえます。

公務員の再雇用(再任用)は、民間の労働局の仕組みが使えません。窓口は公務員のパワハラ相談先と対処に整理しています。障害があり、配慮が受けられない悩みを重ねて抱えている場合は、障害者雇用でのパワハラも読んでください。

パートや契約で働く方の嫌がらせは、パートのパワハラ:パート同士・社員からの嫌がらせの相談先でも整理しています。

よくある質問

Q. 再雇用で給料が大きく下がりました。これはパワハラですか?

賃金や勤務日数を定年前から変える再雇用の条件は、それだけではパワハラの3要素に当たるとは言えません。厚生労働省のQ&Aは、会社が合理的な裁量の範囲で条件を示す限り、希望どおりでなくても高年齢者雇用安定法違反にはならないとしています。ただし、同一労働同一賃金のガイドラインは、継続雇用であることだけで待遇差が不合理でないとは認められないとしています。差が気になるときは、会社に待遇の違いの理由を説明するよう求められます。

Q. 年下の上司からの注意は、すべてパワハラになりますか?

なりません。指針は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる指導は該当しないとしています。上司の年齢が自分より下かどうかは、判断の要素に挙がっていません。見るのは、言動の内容と態様です。人格を否定する、人前で繰り返し大声で叱責する、仕事を与えないといった言動が、指針の例に近いかを確かめます。

Q. 会社に相談すると、次の契約を更新してもらえなくなりませんか?

労働施策総合推進法第31条第2項は、相談したことや事実確認に協力したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。更新の拒否が相談を理由にしたものではないか疑わしいときは、更新の可否が決まる前から経緯を記録し、労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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