状況別の対処 / 手順

社長からのパワハラ対処法:社内に相談先がない会社での動き方

この記事のもくじ
  1. 社長のパワハラが社内で解決しにくい理由
  2. 手順1:社内で解決できない前提で記録を始める
  3. 手順2:社外の公的な窓口に相談する
  4. 手順3:心身を守る・辞める選択を準備する

社長からパワハラを受けていて社内に相談先がないときは、①社内で解決できない前提で記録を始める、②社外の公的な窓口に相談する、③心身を守るために休む・辞める選択肢も並行して準備する、の順で動きます。パワハラ防止の措置は会社の規模を問わず事業主の義務で、厚生労働省の指針は、事業主(法人なら役員)自身による言動も防止の対象に含めています。ただ実際には、社長がトップの会社で社内の窓口が機能することは期待しにくいものです。この記事では、外の力を借りる前提で、何をどの順番でするかを示します。

社長のパワハラが社内で解決しにくい理由

パワーハラスメント(パワハラ)の防止措置は、労働施策総合推進法第31条で事業主に義務づけられ、中小企業も2022年4月1日から対象になりました。指針は、会社が講じるべき措置として、方針の明確化、相談窓口の設置、事後の迅速で適切な対応、相談したことを理由とする不利益な取扱いの禁止などを挙げています。

ところが、社長本人が加害者だと、この仕組みの多くが働きません。

本来の仕組み 社長が加害者のときに起きやすいこと
相談窓口が相談を受ける 窓口が置かれていない、または担当者が社長の部下で動けない
事実確認をして行為者に措置をとる 措置を決める立場の人が行為者本人
被害者と行為者を引き離す 社長と離れられる部署がない
相談を理由とする不利益な扱いを禁じる 相談したことがすぐ社長に伝わり、報復を心配して相談できない

指針は、相談窓口を外部の機関に委託する方法も例に挙げています。まず就業規則や社内の掲示、入社時の資料に、社外の委託窓口や親会社の窓口が書かれていないか確かめてください。見当たらなければ、社内では解決できない前提で次の手順に進みます。

手順1:社内で解決できない前提で記録を始める

社外の窓口に相談するとき、最初に求められるのは「いつ、誰に、何をされたか」という事実です。社長からの言動は、会議や朝礼など人前で起きることも多いため、その場にいた人も書き残します。

  1. 日時・場所・言われた言葉・同席者を、その日のうちにメモする
  2. 社長からのメール・チャット・LINEは、画面の画像とデータの両方で保存する
  3. 給与明細、労働条件通知書、就業規則(ある場合)を手元に控える
  4. 体調の変化や通院の記録も、同じ時系列に書き足す

社員が常時10人未満の会社では、就業規則の作成義務がないため(労働基準法第89条)、規則そのものがないこともあります。その場合は、労働条件通知書や雇用契約書、給与明細が、自分の労働条件を示す主な資料になります。記録の付け方はパワハラの記録の書き方、どんな材料が残せるかはパワハラの証拠集めで詳しく説明しています。

手順2:社外の公的な窓口に相談する

社内に相談先がない人がまず使いやすいのは、厚生労働省の総合労働相談コーナーと、都道府県労働局の**雇用環境・均等部(室)**です。総合労働相談コーナーは全国の労働局や労働基準監督署の中などにあり、予約不要・無料で、パワハラを含む労働問題全般を相談できます。厚生労働省は、会社で対応してもらえない場合や社外で相談したいときに、これらの窓口を案内しています。

相談の先には、法律にもとづく2つの手続きがあります。

  • 労働局長の援助(労働施策総合推進法第36条):会社が措置を講じたかなどをめぐる労働者と事業主の紛争について、労働局長が助言・指導・勧告をする
  • 紛争調整委員会の調停(同法第37条):調停委員が双方の話を聞き、調停案を示して受け入れを勧める

援助や調停を求めたことを理由とする不利益な取扱いも禁じられています(同法第36条第2項・第37条第2項)。ただし、どちらも会社に支払いを命じる手続きではなく、調停案を受け入れるかは当事者が決めます。仕組みの詳細は労働局の助言・指導と調停、窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧で確かめてください。

社長を相手に法的な手段まで考えている場合は、手段ごとの違いを次の記事の社長のパワハラを訴える前に:中小企業で取れる手段と準備の順番で比べています。

手順3:心身を守る・辞める選択を準備する

社長が相手だと、異動で離れることも、社内の誰かに間に入ってもらうことも難しい場合が多く、職場に居続けるほど負担が積み重なります。眠れない、出社前に体調を崩すといった変化があれば、受診して医師に相談し、休むことを優先してください。

辞める選択をとる場合に、知っておきたい基本は次のとおりです。

  • 期間の定めのない雇用(正社員の多く)は、退職の申入れから2週間で雇用が終わる(民法第627条第1項)。会社の承諾は要件ではない
  • 退職の意思は、届いた日が残る方法(メール・郵送など)で伝える
  • 辞める前に、記録や給与明細などの手元の控えと、有給休暇の残日数を確かめておく
手順の早見表:社長からのパワハラで社内に相談先がないとき
段階 すること 使う先
1. 記録 日時・言葉・同席者のメモ、メッセージの保存、労働条件の資料の控え 自分の端末とノート
2. 社外へ相談 状況を話して、使える手続きと順番を聞く 総合労働相談コーナー、雇用環境・均等部(室)
3. 手続き 労働局長の援助、調停の申請を検討 都道府県労働局
4. 休む・辞める 受診、休職の相談、退職の伝え方を決める 医療機関、退職の方法の比較

社長に直接退職を伝えるのが怖い、引き止めや叱責が心配というときは、自分で伝える方法と、第三者に伝えてもらう方法を比べて選べます。違いは退職は自分で伝えるか退職代行を使うかにまとめています。

退職代行を使うなら、選択肢の一つとして次の点を確かめてから決めてください。運営しているのが弁護士(法人)か、労働組合か。未払いの賃金や有給休暇の扱いを会社と交渉する必要があるなら、交渉できる立場の運営形態か。料金に含まれる範囲と追加費用、返金の条件。相談が無料でも依頼は有料であること。運営形態ごとにできることの違いは退職代行の弁護士・労働組合・民間企業の違いで確かめられます。急いで決めず、手順1の記録を手元に残してから動くと、退職後に相談するときにも困りません。

よくある質問

Q. 社員が数人しかいない会社でも、社長のパワハラは対象になりますか?

パワハラ防止の措置は、中小企業でも2022年4月1日から事業主の義務になっていて、いまは会社の規模を問わず対象です。指針は、雇用する労働者だけでなく事業主(法人の場合は役員)自身が行うパワハラも防止の対象に含めています。社内に窓口がなくても、社外の公的な窓口に相談できます。

Q. 労働局に相談したことは社長に知られますか?

総合労働相談コーナーや雇用環境・均等部(室)での相談は、匿名でもでき、プライバシーは守られると厚生労働省は案内しています。一方、労働局長の援助や調停を求める段階では、会社に申し出の内容が伝わり、会社側の話も聞かれることを前提に準備します。どの段階まで進めるかは相談しながら決められます。

Q. 社長に直接やめてほしいと伝えるべきですか?

伝えるかどうかは、身の安全と今後の働き方を考えて決めてください。伝える場合は、口頭より日付の残るメールで、具体的な言動とやめてほしいことだけを短く書くほうが、後の記録になります。怒鳴られる、報復が心配といった状況なら、無理に直接伝えず社外の窓口に先に相談する順番でも構いません。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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