パワハラとは・判断の材料 / 用語

「優越的な関係」とは?同僚・部下からでもパワハラになりうる場面

この記事のもくじ
  1. 「優越的な関係」とは:指針の定義と3つの例
  2. 同僚からの言動が「優越的な関係」に当たりうる場面
  3. 部下・後輩からの言動が当たりうる場面
  4. 社長・取引先・派遣先など、相手ごとの整理
  5. 関係がはっきりしないときに残しておく記録

「優越的な関係」とは、パワハラの3要素の1つ目で、厚生労働省の指針では、言動を受ける人が行為者に対して抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係をいいます。上司と部下の関係が典型ですが、それだけではありません。

指針は、同僚や部下からの言動でも、①業務に必要な知識や豊富な経験を持ち、その人の協力がないと仕事が円滑に進まない場合や、②同僚・部下が集団で行い抵抗や拒絶が難しい場合を、優越的な関係を背景とした言動の例に挙げています。このページでは、その例を職場の具体的な場面に置き換えて整理します。

「優越的な関係」とは:指針の定義と3つの例

指針が「優越的な関係を背景とした」言動の例として挙げているのは、次の3つです。

指針の例 典型的な関係 確かめる点
職務上の地位が上位の者による言動 上司、上司の上司、役員、社長 評価・配置・仕事の割り振りに影響する立場か
同僚または部下による言動で、業務上必要な知識や豊富な経験を持ち、その協力を得なければ業務の円滑な遂行が困難なもの 業務を一人で把握している先輩、長く勤めるベテラン、システムを管理する担当者 その人の協力がないと自分の仕事が進まないか
同僚または部下からの集団による行為で、抵抗または拒絶することが困難なもの 複数の同僚、部署のグループ、部下たち 人数や同調の様子から、一人で言い返せる状況だったか

ポイントは、肩書の上下だけで決まらないことです。逆に、上司からの言動でも、優越的な関係のほかに②業務上必要かつ相当な範囲を超えているか、③就業環境が害されているか、の2つの要素がそろって初めて指針のいうパワハラになります。3要素の全体はパワハラとは?3要素と6類型・指導との境目を見てください。

同僚からの言動が「優越的な関係」に当たりうる場面

同僚との間には職務上の上下がないため、「同僚からではパワハラにならない」と思われがちです。指針の2つ目と3つ目の例に置き換えると、次のような場面が考えられます。

知識・経験で頼らざるを得ない同僚の場合

  • 業務の手順やお客様の情報を一人で把握している先輩が、質問しても「自分で考えろ」と言うだけで教えず、ミスが出ると周りに聞こえるように責める。
  • 長く勤めるベテランが、新しく来た人にだけ引き継ぎ資料を渡さず、仕事が回らない状態にしておく。

こうした場面では、相手の協力がないと業務が進まないため、言い返したり拒んだりしにくい関係が生まれます。記録では「相手が持っている知識・権限」と「それがないと何ができないか」を具体的に書いておくと、関係の説明がしやすくなります。

同僚が集団で行う場合

指針は、人間関係からの切り離しの「該当すると考えられる例」として、一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させることを挙げています。複数人が同調して話しかけない、業務連絡のグループから外す、といった行為は、一人ひとりは同じ立場でも、集団になることで抵抗が難しくなります。同僚からの言動への具体的な動き方は同僚からのパワハラへの対処:上下関係がなくても相談できる場合にまとめています。

部下・後輩からの言動が当たりうる場面

部下から上司への言動も、指針の例の範囲に入りえます。

  • 異動してきた管理職に対し、業務に詳しい部下たちが必要な情報を渡さず、会議で集団で反発を続けて仕事を進められなくする。
  • 社内システムに詳しい若手社員が、操作の分からない年上の上司を周りの前でたびたびあざけり、頼まれた設定作業を理由なく拒む。

一方で、部下が上司の指示に意見を言う、改善を提案する、といった行為は、業務上必要な範囲のやりとりで、指針の例とは性質が違います。立場が上だと「自分が我慢すべきだ」と考えて相談が遅れやすいため、早めに記録を始めることが大切です。部下からの言動に絞った説明は逆パワハラとは?部下からの嫌がらせも指針の対象になる場面で扱っています。

社長・取引先・派遣先など、相手ごとの整理

相手が社内の上司・同僚・部下以外のとき、どの枠組みで考えるかが変わります。

早見表:言動の相手ごとに使う枠組み
言動の相手 主に照らし合わせるもの 補足
上司・役員・社長 パワハラ指針(職務上の地位が上位の者) 社長・役員の言動も「職務上の地位が上位の者」に当たりうる
同僚・先輩 パワハラ指針(知識・経験、集団の例) 当てはまらない場合も、いじめ・嫌がらせとして相談できる
部下・後輩 パワハラ指針(知識・経験、集団の例) 意見や提案と、業務を妨げる言動を分けて記録する
顧客・取引先の担当者・施設の利用者 カスハラ指針(顧客等の言動) 2026年10月1日から会社の措置義務
派遣先の社員(自分が派遣労働者) パワハラ指針 派遣元に加えて派遣先も措置を講じる立場

社長が行為者の場合、社内の窓口が社長に近い人で構成されていて相談しにくいことがあります。その場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーなど、社外の窓口から始める方法があります。取引先の担当者からの言動は、カスタマーハラスメント(カスハラ)の指針が「顧客等」に取引先の担当者を含めているため、そちらの枠組みで考えます。詳しくはカスハラとは?定義と2026年10月から会社に課された措置義務を見てください。

関係がはっきりしないときに残しておく記録

「相手は同僚で、知識の差もそれほどない」「一人からの言動だ」というときは、優越的な関係があるかどうかの判断が難しくなります。その場合でも、次の点を記録に残しておくと、相談先が判断する材料になります。

  1. 相手の立場と、自分の仕事への影響力(評価に関わるか、仕事を割り振るか、業務の知識を握っているか)
  2. 言動に加わった人数と、周りの反応(同調した人、笑っていた人、止めた人)
  3. 断れなかった・言い返せなかった理由(その場の状況を具体的に)
  4. 言動の日時・内容・回数(記録の書き方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきを参照)

指針は、会社の相談窓口に対し、パワハラに当たるか微妙な場合も広く相談に対応するよう求めています。また、3要素がそろわない嫌がらせでも、労働局の総合労働相談コーナーでは職場の「いじめ・嫌がらせ」として相談でき、厚生労働省は個別労働紛争解決制度の対象となる紛争の例に「いじめ・嫌がらせ」を挙げています。優越的な関係の次は、2つ目の業務上必要かつ相当な範囲とは?パワハラ3要素の2つ目を例で解説、その次に3つ目の「就業環境が害される」とは?3要素の3つ目の解説の順で確かめてください。

よくある質問

Q. 同期の同僚から毎日嫌味を言われています。上下関係がなくても相談できますか?

相談できます。指針は、同僚からの言動でも、業務に必要な知識や経験があって協力が欠かせない相手の場合や、集団で行われ抵抗が難しい場合を「優越的な関係」の例に挙げています。当てはまらない場合でも、会社の相談窓口や総合労働相談コーナーで、職場のいじめ・嫌がらせとして相談する道があります。

Q. 社長や役員からの言動もパワハラの対象になりますか?

指針は、会社が防止の措置を講じる対象として、雇用する労働者だけでなく事業主(法人の場合は役員)が行う職場のパワハラも挙げています。社長自身が行為者で社内の窓口が機能しにくい場合は、都道府県労働局など社外の相談先を早めに視野に入れると動きやすくなります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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