人間関係からの切り離しとは?隔離・別室・集団の無視が当たる例
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仕事を取り上げられて一人だけ別の部屋に移された、自宅で「研修」を続けるよう言われた、同僚全員から話しかけても返事をされない――これらは、厚生労働省のパワハラ指針が6類型の3つ目「人間関係からの切り離し」の例として挙げている内容に近い状況です。指針は、意に沿わない労働者を仕事から外して長期間別室に隔離したり自宅研修させたりすること、一人の労働者を同僚が集団で無視して職場で孤立させることを、該当すると考えられる例に挙げています。一方、新人の育成のための短期間の別室研修などは該当しない例です。分かれ目になるのは「目的」「期間」「人数」で、その3つを記録で示せるかが相談の要になります。
人間関係からの切り離しとは:指針の例と該当しない例
パワーハラスメント(パワハラ)の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、この類型に「隔離・仲間外し・無視」という括弧書きを付けています。2026年10月1日適用時点の本文の例は次のとおりです。
| 区分 | 指針の例 |
|---|---|
| 該当すると考えられる例 | ①自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること |
| ②一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること | |
| 該当しないと考えられる例 | ①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること |
| ②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること |
ほかの類型と同じく、①優越的な関係を背景に、②業務上必要かつ相当な範囲を超え、③就業環境が害される、の3要素を満たすことが前提です。例は限定列挙ではなく、例と少し違う状況でも該当しないとは限らない、と厚生労働省のパンフレットは説明しています。6つの類型を一覧で見たい場合はパワハラ6類型の早見表、3要素の考え方はパワハラとは何かを3要素と6類型で整理した記事を参照してください。
別室・自宅研修:該当する例としない例を分ける4つの点
同じ「別室」でも、指針は該当する例と該当しない例の両方に別室を挙げています。違いは文言の中にあります。
| 確かめる点 | 該当すると考えられる例の文言 | 該当しないと考えられる例の文言 | 記録に残すこと |
|---|---|---|---|
| 目的 | 意に沿わない労働者に対して | 育成のため/通常業務に復帰させるため | 会社が説明した理由(口頭なら日時と言葉) |
| 期間 | 長期間にわたり | 短期間集中的に/一時的に | 開始日、終わりの予定の有無、経過日数 |
| 仕事の中身 | 仕事を外し | 研修等の教育/必要な研修 | 別室で実際にしていること(研修の資料や課題があるか) |
| 対象 | 特定の労働者 | 新規採用者/懲戒処分を受けた労働者 | 同じ扱いを受けている人がほかにいるか |
たとえば「研修」と呼ばれていても、教材も課題もなく、終わりの時期も示されないまま何か月も続いている場合は、名前より中身を記録しておくことが大切です。反対に、入社後2週間の集合研修のように、目的と期間がはっきりしていれば、指針が該当しない例に挙げた形に近くなります。
別室への移動と仕事の取り上げが同時に起きている場合は、退職を促す目的と結びついていることもあります。その場合の整理は追い出し部屋に入れられたときの記録と選択で扱います。仕事を与えられない状態そのものは、6類型では「過小な要求」の例とも重なるため、過小な要求とは何かを例で読む記事もあわせて読むと整理しやすくなります。
同僚からの無視:集団か一人かで扱いが変わる
指針の例②は、同僚が集団で無視する場面です。パワハラの3要素の1つ目「優越的な関係」には、上司からの言動だけでなく、同僚や部下の集団による行為で、抵抗や拒絶が難しいものも含まれると指針は書いています。そのため、上司が関わっていなくても、集団による無視はパワハラの枠組みで相談できます。
一方、同僚一人から無視される場合は、優越的な関係があるといえるかがはっきりしないことがあります。そのときも相談できる先はなくなりません。扱う枠組みが変わるだけです。
| 状況 | 主に使われる枠組み | 労働局での手続 |
|---|---|---|
| 上司による隔離、同僚集団の無視など、パワハラとして会社の措置を求めたい | 労働施策総合推進法 第31条(会社の措置義務) | 労働局長の助言・指導・勧告(第36条)、紛争調整委員会の調停(第37条) |
| 同僚との関係で起きたいじめ・嫌がらせで、会社の対応や扱いをめぐって争いになっている | 個別労働関係紛争解決促進法 | 労働局長の助言・指導(第4条)、紛争調整委員会のあっせん(第5条) |
自分の状況がどちらの手続に当たるかは、総合労働相談コーナーや雇用環境・均等部(室)で事情を話して確かめられます。どちらも相手方は会社で、加害者個人を相手にする手続ではない点は押さえておきましょう。調停とあっせんの違いは労働局の調停とあっせんの違いを比べた記事、同僚からの無視への動き方は職場で集団から無視・仲間外れにされたときの記事と同僚からのパワハラへの対処で扱います。
記録の取り方:「起きなかったこと」を数えられる形に
切り離しは、殴られる・怒鳴られるのと違い、「何もされない」形で進みます。記録では、自分が働きかけたことと、それに対して起きなかったことを対にして書くのがコツです。
| 日付 | 自分がしたこと | 相手と反応 | 外された連絡・会議 | 経過日数 |
|---|---|---|---|---|
| 10/19 | 朝の挨拶、業務の質問1件 | AさんBさんCさん、返事なし | 定例会議の招待が届かず | 別室12日目 |
| 10/20 | 進捗の報告メール | 課長、返信なし | 課のチャットに自分だけ未参加 | 別室13日目 |
- 働きかけと反応を対で書く。 「無視された」ではなく「9時10分、Aさんに〇〇の締切を質問。返事なく席を立った」と書きます。
- 人数と顔ぶれを書く。 指針の例②は「集団で」なので、誰と誰が同じ態度か、自分以外の人には普通に話しているかが材料になります。
- 外された連絡を残す。 会議の招待、チャットのグループ、回覧、飲み会以外の業務連絡など、自分にだけ届かなかったものを、届いた人の範囲と一緒に残します。
- 別室・自宅研修は書面を求める。 命じられた日、命じた人、説明された理由と期間を、メールで確かめておきます。
- 経過日数を数える。 例①は「長期間」なので、何日・何週続いているかを毎日の欄に書きます。
会社に理由を尋ねるときの文例です(自分で送る前提の例です)。
文例:〇〇課長 10月19日に第3会議室での勤務を指示いただいた件で確認させてください。この配置の理由と、予定している期間、その間に私が担当する業務の内容を教えていただけますか。今後の働き方を考えるため、メールでご回答いただけると助かります。
記録しにくい無視の書き方は無視のパワハラを証拠に残す方法、日々の記録の項目はパワハラ記録のテンプレートで詳しく扱います。
記録を持って相談する先
隔離や無視が続くときの次の一手は、「いつから、誰の指示で、どの業務や場所から外されたか」を、自分宛ての確認メールの形で残すことです(例:「本日から〇〇の業務を担当しないと理解してよろしいでしょうか」)。そのうえで社内の窓口に相談し、動かなければ総合労働相談コーナーや都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ進めます。相談を理由とする不利益な取扱いは法律で禁じられています。番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧にあります。
孤立が続くと、出勤前に体が動かない、眠れないといった変化が出ることもあります。そうした状態があるときは、記録と並行して受診や休むことを考えてください。人間関係の次の類型は、こなせない量の仕事を押し付けられる過大な要求です。
よくある質問
Q. 挨拶を返してもらえないだけでも、記録しておく意味はありますか?
あります。1回ごとは小さく見えても、日付と相手と場面を並べると、期間や人数、誰に対してだけ起きているかが見えてきます。指針の例は「集団で」「長期間」といった広がりや長さを含んでいるので、続いている事実を数えられる形で残すことが相談の材料になります。
Q. テレワーク中に、自分だけ部署のチャットや会議の招待から外されました。
オンラインでも、職場の連絡や会議から外されることは、人間関係からの切り離しを考えるときの材料になります。外された日、外されたグループや会議の名前、自分以外のメンバーには届いていた連絡の内容を、画面の写しと一緒に記録しておくと、相談先に経過を説明しやすくなります。
Q. 別室での研修を命じられたとき、その場でどう応じればよいですか?
その場で拒むか受けるかを急いで決めず、理由・期間・研修の内容を尋ね、答えをメールなど文字で残すことを優先してください。指針は新人育成や懲戒後の復帰前の一時的な別室研修を該当しない例に挙げているため、目的と期間の説明が判断の材料になります。応じるかどうかで迷うときは、労働局の総合労働相談コーナーで相談できます。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文と解説を収録)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条・第35条〜第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律 第4条・第5条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。