パワハラとは・判断の材料 / 制度解説

職場のハラスメント実態調査(令和5年度):パワハラ経験19.3%、その後は

この記事のもくじ
  1. 調査の概要:いつ、誰に聞いた調査か
  2. 受けた人の割合:パワハラ19.3%・カスハラ10.8%・セクハラ6.3%
  3. どんなパワハラを、誰から、どこで受けたか
  4. 受けた後どうしたか:「何もしなかった」が最多
  5. 会社は気づいたか、知った後どう対応したか
  6. 数字を、自分の次の一歩に使うには

厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度、2024年5月17日公表)では、過去3年間に勤務先でパワーハラスメント(パワハラ)を受けたと答えた人は19.3%でした。受けた後の行動は「何もしなかった」が36.9%で最も多く、その理由は「何をしても解決にならないと思ったから」が65.6%です。勤務先がパワハラを知った後に「特に何もしなかった」と答えた人も53.2%いました。この記事は、調査の条件を確かめたうえで、経験の割合・行為者・その後の行動・会社の対応の数字を順に読みます。

調査の概要:いつ、誰に聞いた調査か

数字を読む前に、誰に聞いた結果なのかを押さえます。労働者の数字はインターネットのモニター調査なので、「日本の労働者全体の割合」ではなく「調査に回答した労働者のうちの割合」です。

項目 企業調査 労働者調査(一般)
対象 全国の従業員30人以上の企業・団体 全国の企業・団体に勤める20〜64歳の男女(経営者・役員・公務員を除く)
方法・時期 郵送(Web回答可)、2023年12月 インターネット調査、2024年1月
回答数 7,780件(回収率31.1%) 8,000人

このほか、妊娠・出産した女性1,000人、育児の制度を利用しようとした男性500人、就職活動等の経験者1,000人に別に聞いています。2025年8月15日に正誤表が出ており、就活等セクハラの行為者の割合などが訂正されています。厚生労働省の委託でPwCコンサルティング合同会社が実施しました。

受けた人の割合:パワハラ19.3%・カスハラ10.8%・セクハラ6.3%

過去3年間に勤務先で受けた割合は、パワハラ19.3%、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント、カスハラ)10.8%、セクシュアルハラスメント(セクハラ)6.3%でした。パワハラは男女で大きな差がなく、セクハラは女性8.9%・男性3.9%です。

業種で見ると、パワハラは建設業26.8%、複合サービス業22.5%、教育・学習支援業と医療・福祉がともに20.6%で高めです。カスハラは生活関連サービス業・娯楽業16.6%、卸売業・小売業と宿泊業・飲食サービス業がともに16.0%でした。

注目したいのは会社の取り組みとの関係です。勤務先がハラスメントの予防・解決に「積極的に取り組んでいる」と答えた人のパワハラ経験は15.2%、「あまり取り組んでいない」と答えた人では35.1%でした。調査は因果関係を示すものではありませんが、取り組みの差と経験の差が並んで出ています。

特別に聞いた人たちでは、妊娠・出産した女性のうちマタハラ等を受けた人が26.1%、育児休業等の制度を利用しようとした男性のうちハラスメントを受けた人が24.1%でした。就活等のセクハラは、インターンシップ中が30.1%、それ以外の就職活動中が31.9%です。ハラスメントの種類ごとの違いは職場のハラスメントの種類一覧で整理しています。

どんなパワハラを、誰から、どこで受けたか

受けたパワハラの内容で最も多いのは精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)で48.5%、次いで過大な要求が38.8%でした。男性は精神的な攻撃と過大な要求が、女性は人間関係からの切り離しと個の侵害が相対的に高く出ています。

項目 結果(パワハラ)
内容 精神的な攻撃 48.5%、過大な要求 38.8%
行為者 上司(役員以外)65.7%、会社の幹部(役員)24.7%
受けた場所 通常働いている場所 88.6%、次いで勤務時間外・休日の電話やメール 6.0%

セクハラの行為者は上司51.1%・同僚22.1%、カスハラの行為者は顧客等が82.3%でした。6類型それぞれの意味と例はパワハラ6類型の早見表で確かめられます。

受けた後どうしたか:「何もしなかった」が最多

パワハラを受けた人(1,546人)の行動は、「何もしなかった」36.9%が最多で、次が「家族や社外の友人に相談した」19.3%でした。セクハラでは「何もしなかった」が51.7%とさらに高く、カスハラでは「社内の上司に相談した」38.2%が最多です。

図解:ハラスメントを受けた後の行動と、何もしなかった理由
種類 最も多い行動 何もしなかった理由「何をしても解決にならないと思った」
パワハラ 何もしなかった 36.9% 65.6%
セクハラ 何もしなかった 51.7% 52.7%
カスハラ 社内の上司に相談した 38.2%(何もしなかった 35.2%) 56.1%

心身への影響は、パワハラでは「怒りや不満、不安などを感じた」68.5%、「仕事に対する意欲が減退した」61.1%でした。なお「会社を退職した」という回答は、退職後に転職・再就職した人だけが対象で、いま働いていない人は調査に入っていません。退職した人の割合は実際より小さく出る可能性がある、という条件つきで読みます。

会社は気づいたか、知った後どう対応したか

勤務先がハラスメントを「認識していた」と答えた割合は、パワハラ37.1%、セクハラ23.9%、カスハラ59.2%でした。勤務先が知っていたと答えたパワハラの被害者(573人)のうち、知った後の勤務先の対応が「特に何もしなかった」は53.2%です。勤務先の判断は「あったともなかったとも判断せず、あいまいなまま」が61.4%で、パワハラと認めた後の対応も「何もしなかった」28.7%、「会社として謝罪した」18.5%でした。

企業側の回答はやや違って見えます。過去3年間にパワハラの相談があった企業は64.2%で、相談があった企業のうち該当する事案があったのは73.0%でした。パワハラの予防・解決の取り組みを「実施している」企業は95.2%(99人以下の企業88.4%、1000人以上98.3%)で、多いのは相談窓口の設置と周知です。窓口の置き場所は社内のみ55.7%、社内と社外の両方41.2%、社外のみ3.0%でした。取り組み上の課題は「ハラスメントかどうかの判断が難しい」59.6%が最多です。

一方、労働者調査では勤務先のパワハラの取り組みが「特にない」と答えた人が62.4%でした。企業と労働者では聞いた相手も聞き方も違うので、「会社の回答が誤り」と読むのではなく、窓口などの制度があっても働く人に知られていない可能性がある、と受け止めるのが妥当です。

数字を、自分の次の一歩に使うには

調査からは、「何をしても変わらない」と感じて動かない人が多い一方、会社が知っても動かない、あるいは判断を保留する例も少なくない、という姿が見えます。だからこそ、相談するなら会社任せにせず、自分の手元に材料を残しておくことが役に立ちます。

  1. 会社の窓口がどこにあるかを確かめる:就業規則、社内ポータル、入社時の資料。社外の窓口に委託している会社もあります。窓口の使い方は社内のハラスメント相談窓口の使い方へ。
  2. 出来事を日付ごとに書き残す:言われた言葉、場所、居合わせた人。方法はパワハラの証拠集めの手順にあります。
  3. 相談した日と回答を残す:会社が「あいまいなまま」にしたときに、社外の窓口で経緯を示せます。
  4. 社外の窓口も選択肢に入れる:都道府県労働局や総合労働相談コーナーなどの番号と時間はパワハラの相談窓口一覧に集めています。

労働局に寄せられた相談の件数そのものはパワハラ・いじめの相談件数の記事で、裁判で会社の対応がどう評価されたかはパワハラ事例の読み方の記事で扱っています。

よくある質問

Q. 「5人に1人がパワハラを受けている」というのは本当ですか?

令和5年度の実態調査で、過去3年間に勤務先でパワハラを受けたと答えた人は19.3%でした。ただし、インターネット調査に回答した20〜64歳の労働者8,000人のうちの割合で、全労働者を数えた値ではありません。使うときは「過去3年間」「調査の回答者のうち」を添えます。

Q. 最新の実態調査はいつのものですか?

2026年10月時点で厚生労働省のページに掲載されている最新版は、令和5年度の委託事業として行われ、2024年5月17日に公表された報告書です。前回は令和2年度で、次の調査が公表されたら数字は差し替わります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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