状況別の対処 / 手順

パワハラ加害者の更生:言動を変えたい人のための具体的な方法

この記事のもくじ
  1. パワハラ加害者の更生は、言い方の置き換えから始まる
  2. 言い方の置き換え表:指針の例から逆算する
  3. 手順:毎日の言動を変える6ステップ
  4. 研修・産業医・カウンセリングの使い方
  5. 被害を訴えた人への接し方の注意

自分の言動がパワーハラスメント(パワハラ)だと指摘され、変わりたいと考えたときに最初に取り組むのは、性格を直そうとすることではなく、言い方と指導の手順を、指針が「該当しない」とする形に置き換えることです。同時に、怒りが高ぶった場面で一度その場を離れる決まりを作り、研修・産業医・カウンセリングなど第三者の目を入れて続けます。被害を訴えた人への接し方には、関係を悪くしないための注意があります。この記事では、置き換えの型、毎日の手順、使える相談先、相手への接し方を順に整理します。

パワハラ加害者の更生は、言い方の置き換えから始まる

労働施策総合推進法32条4項は、労働者にも、ハラスメントへの関心と理解を深め、他の労働者への言動に必要な注意を払うよう努めることを求めています。変わろうとすることは、この努力の中身そのものです。

何を目指して変えるかは、パワハラ指針の定義から逆算できます。指針は、パワハラを「優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」とし、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示や指導は該当しないとしています。つまり更生のゴールは「部下に何も言わなくなること」ではなく、業務に必要なことを、相当な方法で伝えられるようになることです。

指針が「精神的な攻撃」に当たると考えられる例として挙げているのは、人格を否定するような言動、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責の繰り返し、他の労働者の面前での大声での威圧的な叱責の繰り返し、能力を否定し罵倒する内容のメールを複数人宛てに送ることなどです。反対に、再三注意しても遅刻などが改まらない人や重大な問題行動をした人に一定程度強く注意することは、該当しないと考えられる例に挙がっています。違いは強さそのものより、何に向けた言葉か(行動か、人格か)、どの場で、どれだけの時間・回数かにあります。指導の線の引き方はパワハラと指導の違いを見分ける5つの視点でも整理しています。

言い方の置き換え表:指針の例から逆算する

自分が使いがちな言い方を書き出し、右の列の形に置き換えて練習します。左の列は指針で「該当すると考えられる例」に近い言い方、右の列は業務上の必要に絞った言い方です。

置き換え表:パワハラになりうる言い方と、業務に絞った伝え方
場面 置き換えたい言い方 置き換えた伝え方 変えた点
ミスをしたとき 「何回言えば分かるんだ。お前は使えない」 「〇〇の数字が3か所違っていた。次からは提出前にこの表で照合してほしい」 人格の評価をやめ、事実と次の方法だけを言う
皆の前で 大声で「こんなものを出すな」 「後で5分だけ時間をもらえますか」と言い、別室で伝える 場所を変え、人前で叱らない
長い説教 1時間以上、過去の失敗まで並べる 伝えることを3点までに絞り、10分以内で終える 時間と回数に上限を置く
メールで 能力を否定する文面を部署全員に送る 本人宛てに、修正点と期限だけを書く 宛先を本人に限る、評価の言葉を書かない
目標を課すとき 「できないなら辞めろ」 「期限までに難しい部分はどこか。手伝いが要るところを教えてほしい」 脅しをやめ、必要な支援を聞く
仕事を任せないとき 気に入らない部下に仕事を回さない 担当を変えるなら、理由と期間を本人に説明する 業務上の理由を言葉にする

置き換えるときの共通の型は、「事実(何が起きたか)」「影響(業務にどう響いたか)」「求めること(次にどうしてほしいか)」の3つだけを話すことです。「いつも」「お前は」「だから〇〇なんだ」で始まる言葉が出そうになったら、その時点で人格の評価に入りかけている合図です。パワハラになりうる言葉の型はパワハラになりうる言葉の例を場面別にまとめた一覧で確かめられます。

手順:毎日の言動を変える6ステップ

置き換え表を覚えるだけでは、忙しい場面で元の言い方に戻ります。次の手順を、少なくとも数か月は続けるつもりで回します。

  1. **指摘された言動を、日時ごとに書き出す。**会社の事実確認で示された内容と、自分の記憶を並べます。言い訳を書く欄は作らず、「何を言ったか・したか」だけにします。
  2. **きっかけを特定する。**締め切り前、会議で反論されたとき、同じミスが続いたときなど、強い言い方が出やすい場面を書き出します。
  3. **「離れる」決まりを作る。**声が大きくなりそうだと感じたら、「確認してから改めて話します」と言ってその場を離れる、と先に決めておきます。怒りへの対処を扱う考え方はアンガーマネジメントと呼ばれ、研修や書籍もありますが、要は「怒った状態で指導を始めない」仕組みを作ることです。
  4. **指導は要点を文字で残す。**口頭で伝えた後、修正点と期限だけを本人宛てのメールやチャットで送ります。自分の言い方を後から見直す材料にもなります。
  5. **1対1の密室を避ける。**評価面談や注意の場には、可能なら別の管理職や人事担当に同席してもらいます。
  6. **定期的に第三者から振り返りを受ける。**上長や人事、研修の担当者に、月に1回など頻度を決めて、職場の雰囲気や自分の言動の変化を聞きます。

この手順は、自分ひとりの決意より、他人に見える形にしたほうが続きます。会社に「再発防止のためにこの手順で取り組みたい」と伝えて、振り返りの相手を一緒に決めてもらうのも一つの方法です。

研修・産業医・カウンセリングの使い方

ひとりで変われるか不安なときは、第三者の手を借ります。使える場所は目的ごとに分かれます。

目的 使える場所 そこでできること・注意
パワハラの定義と、会社のルールを学び直す 会社のハラスメント研修 指針は、再発防止の措置として研修の再実施を挙げ、望ましい取組としてコミュニケーションの円滑化のための研修も挙げている
怒りやストレスが体調に出ていないかを見てもらう 産業医、医療機関 治療が必要かは医師が判断する。眠れない・動悸がするなどがあれば早めに受診する
言動を変える取り組みを続ける支えがほしい 会社のEAP(従業員支援プログラム)、民間のカウンセリング 相談の中身がどこまで会社に伝わるかを、使う前に確かめる
仕事の悩みを匿名で話したい 厚生労働省の「こころの耳」の電話・SNS・メール相談 働く人・家族・人事労務担当者が対象。ハラスメントに当たるかの判断や法律相談はしない

研修が法律上どこまで義務なのかはハラスメント研修は義務かを整理した記事、会社のEAPで話した内容が会社に伝わる範囲は会社のEAPカウンセリングの守秘の整理で確かめられます。指導そのものが怖くなってしまった場合は、パワハラが怖くて指導できない管理職へが次の参考になります。

被害を訴えた人への接し方の注意

変わろうとする気持ちが強いほど、相手に直接伝えたくなります。しかし、相手にとっては接触そのものが負担になることがあります。次の点を守ってください。

  • **謝罪は会社を通して申し出る。**直接呼び出す、個別にメッセージを送ることは避け、謝罪の場を設けるかどうかは会社に相手の意向を確かめてもらいます。
  • **業務上の接点は最小限に、記録が残る形で。**配置転換などで接点が残るなら、指示はメールやチャットで、第三者が見られる形にします。
  • **評価や担当の変更は、自分だけで決めない。**相談したことを理由に相手を不利に扱うことは、労働施策総合推進法31条2項で会社に禁じられています。自分が評価者なら、評価の扱いを人事と相談して決めます。
  • **周りに経緯を話して回らない。**自分の言い分を広めることは、相手の特定や二次的な被害につながります。

会社への申し出の例:「〇〇さんへの私の言動について、反省しています。〇〇さんの意向に沿う形で謝罪の機会をいただけるなら、そうしたいと考えています。直接の連絡は控えていますので、意向の確認をお願いできますでしょうか。」

すでに懲戒などの処分を受けている、あるいは受けるかもしれない段階なら、処分の仕組みはパワハラ加害者の処分の種類と懲戒の段階で、退職を求められている場合はパワハラ加害者として退職を迫られたときに確かめることで確かめてください。被害を訴えた側から見た謝罪の考え方はパワハラ加害者に謝罪してほしいときの整理にまとめています。

よくある質問

Q. パワハラ加害者向けの更生プログラムや治療はありますか?

労働施策総合推進法やパワハラ指針には、加害者向けの更生プログラムの定めはありません。会社の研修、社内の産業医や相談窓口、民間の研修やカウンセリング、医療機関など、目的ごとに使える場所を組み合わせることになります。怒りが抑えられない、眠れないなど心身の不調があるなら、まず医療機関に相談して、治療が要るかどうかを医師に判断してもらってください。

Q. 謝れば、許してもらえますか?

謝罪を受け入れるかどうかは相手が決めることで、謝ったことで関係が元に戻るとは限りません。パワハラ指針は、事実が確認された場合の措置の例に行為者の謝罪を挙げていますが、それは会社の対応の一部として行われるものです。直接謝りに行く前に、謝罪の場を設けるかどうかを会社に相談し、相手の意向を確かめてもらう順が安全です。

Q. 指導が怖くなって、部下に何も言えなくなりました。どうすればいいですか?

パワハラ指針は、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示や指導はパワハラに当たらないとしています。言わなくなるのではなく、事実・期限・改善の方法を具体的に伝え、人格や能力全体の評価に広げない、という形に変えることが目標です。指導の線の引き方は、指導できなくなった管理職向けに整理した記事で詳しく扱っています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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