パワハラ加害者に謝罪してほしいとき:求め方と会社の措置の関係
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パワハラの加害者に謝罪してほしいときは、会社に対して、措置の一つとして謝罪の機会を設けるよう求めるのが基本の道です。厚生労働省の指針は、パワハラの事実が確かめられた場合の被害者への配慮や行為者への措置の例として「行為者の謝罪」を挙げています。ただし、どの措置をとるかは事案ごとに会社が決めるので、謝罪が約束されるわけではありません。求めるときは、謝罪の形(対面・書面・会社経由)と場の条件まで具体的に伝え、謝罪の場には一人で臨まない工夫をしておきます。
パワハラの謝罪は、会社の措置の一つとして求められる
会社は、労働施策総合推進法第31条にもとづき、パワハラを防ぐ措置をとる義務を負っています。指針は、相談を受けて事実が確かめられたときの対応として、次の例を示しています。
| 措置のまとまり | 指針が挙げる例 |
|---|---|
| 被害者への配慮 | 関係改善に向けた援助、引き離すための配置転換、行為者の謝罪、労働条件上の不利益の回復、メンタルヘルス不調への相談対応 |
| 行為者への措置 | 就業規則等にもとづく懲戒その他の措置、引き離すための配置転換、被害者への謝罪 |
ここから言えるのは、謝罪を求めることは「わがまま」ではなく、会社がとりうる措置の中にあるということです。一方で、指針は例を挙げているだけで、会社にどれを選ぶかの幅があります。事実確認がまだなら、謝罪より先に事実確認の進み具合を尋ねるのが順番です。ヒアリングの準備はパワハラのヒアリングで被害者が準備すること:聞かれる項目と伝え方にまとめています。
法律の面では、加害者個人の責任は損害の賠償が基本です(民法第709条・第710条)。名誉を傷つけられた場合に限っては、裁判所が損害賠償に代えて、またはそれとともに、名誉を回復するのに適当な処分を命じられる規定もあります(第723条)。ただ、職場の謝罪を実現する現実的な道は、まず会社の措置を通すことです。
謝罪の形を選ぶ:対面・書面・会社経由
謝罪といっても、形はいくつかあります。自分の気持ちと体調に合うものを選んで、会社に伝えます。
| 形 | 良い点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 対面(会社の担当者が同席) | 相手の態度を直接確かめられる | 顔を合わせること自体がつらい場合がある。時間と同席者を決めておく |
| 書面(謝罪文) | 何について謝ったのかが文字で残る | 中身があいまいだと、何を認めたのか分からない文になる |
| 会社経由で伝えてもらう | 相手と接しなくてすむ | 相手の言葉がそのまま伝わるとは限らない |
| 謝罪は求めない | 相手と関わらずにすむ | 担当替えや再発防止など、別の措置は求められる |
書面の謝罪を求めるときは、「何について」の部分が大切です。「不快な思いをさせたなら申し訳ない」のような、行為を特定しない文面では、謝罪の意味が薄れます。会社に、謝罪の対象となる言動(日時・内容)を事実確認の結果に沿って特定してほしいと伝えておく方法があります。
会社への求め方と文例
謝罪の求めは、相談窓口や人事を通して、メールなど記録に残る形で出します。加害者に直接連絡して求めるのは、言い合いになったり、逆に責められたりするおそれがあるので避けたほうが無難です。
メールの例:「人事部 ○○様 先日の事実確認では、ご対応いただきありがとうございました。今後の措置について、一点お願いがあります。△△さんから、9月の会議での発言について謝罪を受けたいと考えています。形としては、人事部の方に同席いただいたうえでの対面か、書面での謝罪を希望します。対面の場合は、30分以内とし、私の側から退席できるようにしていただけますか。ご検討の結果をお知らせください。」
文例のポイントは次の3つです。
- 何について謝ってほしいのかを、事実確認の対象と結びつける
- 形(対面・書面)と、場の条件(同席者・時間・退席の自由)を書く
- 回答を求める。会社が謝罪の機会を設けない場合は、その理由を尋ねる
会社が「謝罪は個人の問題なので」と取り合わない場合も、指針が措置の例に挙げていることを添えて、改めて検討を求めることができます。それでも動かないときの考え方はパワハラを相談しても会社が対応しないとき:外へ出す前に確かめることを見てください。
謝罪の場に一人で臨まない工夫
対面の謝罪の場は、気持ちが揺れやすい場です。思っていた謝罪と違ったり、相手が言い訳を始めたりすることもあります。次の準備をしておくと、自分を守りやすくなります。
- 同席者を決める。 人事の担当者など、会社側の立会人を求める。加入している労働組合があれば、組合の担当者の同席を相談する
- 席と動線を決める。 相手と向かい合わず、出入口に近い席に座れるようにしてもらう
- 時間の上限を決める。 終わりの時刻を先に共有しておく
- 途中で退席する合図を決める。 同席者に「気分が悪くなったら席を立つ」と伝えておく
- その場で決めない。 異動・退職・示談・合意書の話が出ても、持ち帰ると伝える
- 記録を残す。 謝罪の言葉と、その場で決まったことを、終わった後に会社と確かめ合う
話し合いの場の記録の残し方(録音や議事メモの確認)は、前の記事パワハラの話し合い・面談に臨む前に:同席者・録音・議事メモの準備で詳しく扱っています。謝罪の次に気になる加害者の処分は、次の記事パワハラ上司は処分される?懲戒の流れと処分されないときの選択肢で確かめられます。
加害者が謝らないとき、謝罪では終わらせたくないとき
会社が機会を設けても、加害者が謝らない、あるいは形だけの謝罪で終わることもあります。そんなときに、避けたいことと、代わりにとれる道を分けておきます。
避けたいこと
- 脅すような言い方で謝罪文や土下座を求めること。脅迫や暴行を用いて義務のないことをさせると、強要の罪(刑法第223条)にかかわりうる
- 「謝らないなら晒す」と言うこと、実際にSNSで公表すること。内容が本当でも、公然と事実を示して名誉を傷つければ名誉毀損(刑法第230条)に問われるおそれがある
代わりにとれる道
- 謝罪とは別の措置(担当替え、席の変更、行為者への措置、再発防止)を会社に求める。処分の流れはパワハラ上司は処分される?懲戒の流れと処分されないときの選択肢へ
- 加害者と離れたいなら、自分の側の異動を希望する道もある。伝え方はパワハラで異動したいとき:異動希望の伝え方と会社が配慮すべきことにまとめている。加害者の側が退職を求められる場面は、加害者向けの記事パワハラ加害者として退職を迫られたら:応じる前に確かめることで扱っている
- 加害者個人や会社に責任を問うことを考えるなら、相手の選び方をパワハラで訴える相手は加害者個人か会社か:責任の種類を整理で確かめ、弁護士に相談する
謝罪を受けても、受けなくても、それで自分の受けたことの重さが変わるわけではありません。謝罪を求めるかどうか迷う気持ちも含めて、記録を続けながら、自分にとって職場がどうなれば安心して働けるのかを考えておくと、会社に求めることがはっきりします。
よくある質問
Q. 謝罪を受けたら、許さなければいけませんか?
謝罪を受けることと、許すこと・水に流すことは別のことです。謝罪の場で「これで終わりにしましょう」と言われても、その場で同意する必要はありません。担当替えや再発防止など、謝罪とは別に求めたい措置があれば、謝罪の前後に会社へ書面で伝えておきます。
Q. 謝罪の場で、合意書や念書への署名を求められたらどうしますか?
その場では署名せず、書面を持ち帰りたいと伝えて構いません。合意書には、今後の請求をしないといった条項が入っていることがあります。持ち帰った書面は、弁護士や労働組合など第三者に見てもらってから判断すると安心です。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第709条・第710条・第723条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第223条・第230条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。