家族がパワハラを受けているとき:支える声かけと、してはいけないこと
この記事のもくじ
家族がパワハラを受けているようだと気づいたら、最初にすることは、原因を問い詰めることでも会社に抗議することでもなく、本人が安心して休める場所を家の中につくることです。話を否定せずに聴き、励ますより「心配している」と気持ちを伝え、眠れない・食べられない状態が続くなら受診を後押しします。家族が会社へ直接乗り込むのは、本人の選べる道を狭めることがあるので、家族は家族にしかできない支え方に回るのが近道です。
家族がパワハラを受けているときに、最初にすること
夫や妻、成人した子どもが職場でつらい思いをしていても、家族には自分から話さないことがよくあります。まずは、話の内容より様子の変化に気づくことから始めます。厚生労働省のこころの耳は、ストレスのサインとして次のような変化を挙げています。
| 面 | 家族が気づきやすい変化の例 |
|---|---|
| こころ | 憂うつそう、イライラしやすい、やる気が出ない様子 |
| 体 | 食欲が落ちた・やせた、寝つきが悪い、朝早く目が覚める |
| 行動 | 人との交流を避ける、飲酒や喫煙が増えた、身だしなみに構わなくなった |
こうした変化が10日から2週間以上続く場合は、こころの不調のサインかもしれないとされ、様子を見ても以前と違う状態が続くなら、病院への受診を勧めてみるよう案内されています。気づいたら、次の順番で関わります。
- 様子が違うことを、責めずに伝える:「最近、夜あまり眠れていないみたいで心配」
- 話したくなるまで待つ:その場で話さなくても、「いつでも聞く」と伝えておく
- 話し始めたら、最後まで聴く:途中で意見や解決策を挟まない
- 家で休める時間を守る:家事の分担を一時的に変える、休日の予定を減らす
こころの耳の家族向けページも、話を聴くこと、否定せずに本人がいちばん伝えたいことを理解しようとすること、話したがらないときは無理に聞き出さず見守ることを、家族にできることとして挙げています。
支える声かけの例と、控えたい言葉
声かけで大切なのは、本人の受け止め方を正しいか間違っているかで判断しないことです。家族から見て「その程度で」と感じる出来事でも、本人にとっては毎日積み重なった結果かもしれません。
| 場面 | かけたい言葉の例 | 控えたい言葉の例 | 控えたい理由 |
|---|---|---|---|
| 話を聞いたとき | 「話してくれてありがとう。それはつらかったね」 | 「あなたにも悪いところがあったんじゃない?」 | 原因探しは本人の自責を強めやすい |
| 落ち込んでいるとき | 「今は休むことを一番にしよう」 | 「頑張って」「気にしすぎだよ」 | 頑張れない自分を責める気持ちを強めることがある |
| 辞めたいと言ったとき | 「そう思うくらい大変なんだね。体が落ち着いたら一緒に考えよう」 | 「すぐ辞めなさい」「我慢しなさい」 | どちらも本人の決める余地を奪う |
| 元気がない休日 | 「何もしなくていい日にしよう」 | 「気分転換に旅行でも行こう」 | 消耗しているときの外出や集まりは負担になる |
この表の「控えたい理由」は、こころの耳の家族向けページの説明に沿っています。同ページは、頑張りすぎて不調になっている人への励ましが「もう頑張れない」という思いを強めることがあること、不調の原因はさまざまなことが関わって特定できないことが多く「今できること」を中心に考えるほうがよいこと、気分転換の旅行や飲み会がかえって負担になることがあると説明しています。励ましが役立つ時期もあるため、その判断は主治医に相談するよう添えられています。
続柄によって、言葉の選び方も少し変わります。
例文(夫・妻に):「最近帰ってきてから黙っていることが多いから、気になってた。何があったか全部じゃなくていいから、話せるところだけ聞かせて。」
例文(社会人の子どもに):「親だから口を出したくなるけど、どうするかはあなたが決めていい。ただ、体のことだけは心配だから、眠れているかだけ教えて。」
例文(本人が話さないとき):「無理に話さなくていいよ。話したくなったら、夜でも休みの日でも聞くから。」
受診と休むことの後押し:言い方と付き添い
眠れない、食べられない、朝起き上がれないといった状態が続いているなら、受診を後押しします。こころの耳は、病名を出さずに「疲れが抜けない状態が続いていて心配」のように、家族の気持ちとして伝えることを勧めています。「うつじゃないの?」と病名で言われると、本人が身構えてしまうことがあるからです。
例文:「ここ何週間か、ずっと疲れが取れていないように見えて心配なんだ。一度お医者さんに相談してみない?予約や付き添いは手伝うよ。」
受診先は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)で探すことができ、かかりつけ医がいれば専門医を紹介してもらえることもあります。初回の受診に付き添えると、本人も安心しやすくなります。付き添う場合も、診察は本人と医師の場なので、家族は家での様子(眠れていない日数、食事の量など)を短く伝える程度にとどめます。
休むことについては、「会社に迷惑がかかる」と本人が抵抗することがよくあります。そのときは、休むかどうかを家族が決めるのではなく、「医師に休んだほうがいいか聞いてみよう」と、判断を医師に委ねる言い方にすると受け入れやすくなります。休職の流れや給付の仕組みは本人が落ち着いてから一緒に確かめれば十分で、適応障害・パワハラで休職するには:診断書から復職・退職までの流れが全体像の参考になります。
本人が「死にたい」「消えたい」と口にしたり、「自分はだめな人間だ」「みんなに迷惑をかけている」と強く自分を責めたりしているときは、危険が高まっているサインと考えられています。主治医がいれば連絡して相談し、いなければ受診を急ぎ、仕事がつらい・限界のときの相談先:電話・LINEの窓口と受付時間にある窓口も使ってください。
家族が会社へ乗り込まない方がよい理由と、代わりにできること
家族がパワハラを受けていると分かると、上司や会社に抗議したくなるのは自然な気持ちです。それでも、家族が本人の代わりに会社へ乗り込むのは控えたほうがよい場面が多くあります。会社への相談や労働局の手続きは働く本人が進めるもので、家族が先に動くと、本人がどこまで話すか・いつ動くかを選べなくなるからです。理由の詳しい整理は、本人向けに書いたパワハラを家族に相談するとき:話し方と心配させたくないときの選択にあります。
その代わりに、家族だからこそできることがあります。
- 記録を手伝う:本人が話したことを、日付と一緒に書き留めておく。本人の記録の抜けを補う材料になる
- 家族として相談窓口を使う:こころの耳の電話相談は、働く人だけでなく家族も対象です。こころの耳の家族向けページは、職場のハラスメントが疑われる場合の情報源として総合労働相談コーナーを挙げ、長時間労働の相談では家族からの相談も可能だと案内しています
- 相談の場に付き添う:本人が窓口へ行くときに同行する(同席できるかは事前に窓口へ確かめる)
- 生活面を支える:家事や育児の分担を一時的に変え、本人の休む時間を確保する
夫や妻の勤め先に連絡するかどうか迷ったときは、「本人が頼んだときだけ、頼まれた範囲で」を目安にしてください。たとえば、本人が電話もできないほど体調を崩しているときの欠勤連絡は、その典型です。
支える家族が倒れないために
支える側が疲れ切ってしまうと、本人を支え続けることができません。家族の側にも、次のような工夫が必要です。
- 家族の中で支える役を一人に集中させず、きょうだいや親族とも分担する
- 自分の睡眠と食事を後回しにしない
- 本人の回復を急がず、良い日と悪い日があるものと考えておく
- 家族自身も、こころの耳などで話を聞いてもらう
こころの耳には、家族自身が抱えすぎないための学習コンテンツや、家族の様子を見る「疲労蓄積度セルフチェック(家族支援用)」もあります。本人が仕事を辞めたいと考え始め、親など他の家族にどう伝えるかで悩んでいる場合は、次の仕事を辞めたいと親に言えないとき:家族への話し方と準備することで、話す順番と生活の見通しの立て方を整理しています。本人が毎日をしのぐ工夫は職場のストレス対処法:パワハラの最中に心身を守る毎日の工夫を一緒に読んでみてください。
家族のほかに、友人や同僚が相談を受ける場面もあります。聞き手側の心得は友達や同僚からパワハラを相談されたら:話の聞き方と窓口のすすめ方にまとめています。
よくある質問
Q. 本人が「大丈夫」としか言わず、何も話してくれません。
無理に聞き出さず、「話したくなったらいつでも聞くよ」と伝えて見守るのも一つの方法です。そのうえで、睡眠や食事、休日の過ごし方など、目に見える変化には気を配っておきます。本人が話さない間も、家族自身が働く人と家族向けの電話相談に、関わり方を相談することができます。
Q. 本人が「もう辞める」と言い出しました。賛成すべきですか?
気持ちは受け止めつつ、その場で賛成も反対もしないほうが落ち着いて考えられます。心の不調があるときは視野が狭くなり、悲観的な選択しか見えにくくなることがあるためです。「まず体を休めて、少し元気になってから一緒に考えよう」と伝え、退職前に確かめたい制度は落ち着いてから一緒に調べてください。
出典・参考にした公的な情報
- 関わり方のポイントを知る ご家族にできること(こころの耳)(厚生労働省)
- ストレスへの気づき(こころの耳)(厚生労働省)
- こころの耳電話相談(対象:働く人・家族・人事労務担当者)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。