パワハラの記録ノートの付け方:事実の欄と気持ちの欄を分ける
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パワハラの記録ノートは、見開きの左ページに「事実」、右ページに「気持ちと体の反応」を書く2欄方式がおすすめです。事実と気持ちを同じ文の中に書くと、後から相談先が読みにくくなるうえ、書くたびに出来事を感情ごと思い返すことになり、記録そのものがつらくなりがちです。欄を分けておけば、左は短く淡々と、右は気が済むまで、と書き方を変えられます。この記事では、欄の見本、それぞれに書くこと、つらくならない続け方、相談に持っていくときの使い方を説明します。
2欄方式とは:見開きの左に事実、右に気持ちを書く
ノートを開いたとき、左のページを「事実の欄」、右のページを「気持ちの欄」と決めます。1つの出来事につき、左右の同じ高さから書き始めると、どの事実に対する気持ちなのかが一目で分かります。
| 左ページ:事実の欄 | 右ページ:気持ちの欄 |
|---|---|
| 10月14日(水)16:10〜16:30 | 帰りの電車で書いた |
| 場所:営業部の島(自席の前) | 頭が真っ白になった。言い返せなかった自分が情けない |
| 相手:A課長 周りにいた人:Bさん、Cさんほか3人 | 皆に見られて恥ずかしかった。明日の朝礼が怖い |
| 言葉:「こんな計算もできないなら辞めろ」(大声で、2回) | 体:胃が痛い。夕食を半分残した |
| きっかけ:見積書の金額の誤り1件(私のミス) | 夜は2時ごろまで眠れなかった |
| その後:誤りは17時までに修正して再提出 | 次の日にしたこと:朝、少し早く家を出て深呼吸した |
左の事実の欄は、相談先や会社、弁護士などの第三者が読む前提で書きます。右の気持ちの欄は、まず自分のために書きます。相手を責める言葉、自分を責める言葉が出てきても構いません。右に吐き出せる場所があるから、左を落ち着いて書ける、というのがこの方式の狙いです。
事実の欄に書くこと・書かないこと
事実の欄に書くのは、その場にいた誰が見ても同じように確かめられることです。項目は次の順に並べると、毎回迷いません。
- 日付と時刻:始まった時刻と終わった時刻。分からなければ「16時ごろ」。
- 場所:会議室、自席、オンライン会議、電話など。
- 相手とその場にいた人:名前が分かる人は名前で。分からなければ「隣の課の人」。
- 相手の言葉や行為:言われたままの言葉を「 」に入れます。声の大きさ、物を叩いたなどの動作も書きます。
- きっかけ:自分のミスや遅れがあったなら、それも短く書きます。
- その後に起きたこと:仕事を外された、謝罪を求められた、何もなかった、など。
逆に、事実の欄に書かないほうがよいのは次のようなものです。
- 推測:「課長は私を辞めさせたいに違いない」は、事実ではなく推測です。気持ちの欄に移します。
- 評価の言葉:「ひどいパワハラを受けた」「理不尽な指示」は、読む人が判断することです。事実の欄では「何を言われたか」だけを書きます。
- まとめ書き:「いつものように怒鳴られた」では、何回目なのかが分かりません。1回ごとに分けて書きます。
なぜここまで分けるのかというと、パワハラに当たるかどうかは、本人の受け止めだけでは決まらないからです。厚生労働省のパワハラ指針は、就業環境が害されたかどうかを「平均的な労働者の感じ方」を基準に判断するとしています。労災の精神障害の認定基準も、出来事の心理的負荷を、本人の主観ではなく、職種や立場、経験などが似た「同種の労働者」が一般的にどう受け止めるかで評価します。だからこそ、第三者がそのまま読める事実の欄が大切になります。
言葉の書き取り方をもっと詳しく知りたい人は、パワハラの記録の書き方(日時・言葉・場所・目撃者の記入例)を参照してください。
気持ちの欄の書き方:気持ち・体の反応・自分がしたこと
右の気持ちの欄は自由に書いて構いませんが、次の3つの見出しを意識すると、後から役立つ記録にもなります。
| 見出し | 書く例 | 後で役立つ場面 |
|---|---|---|
| 気持ち | 怖い、悔しい、恥ずかしい、明日が不安 | 相談の場で、何がいちばんつらいかを言葉にするとき |
| 体の反応 | 眠れない、食欲がない、動悸、朝起きられない、出勤前に涙が出る | 受診のとき、医師に経過を伝えるとき |
| 自分がしたこと | 誰かに話した、早退した、休んだ、病院を予約した | 時系列を作るとき、相談した日付を確かめるとき |
体の反応は、気持ちと違って日付ごとに変化を追いやすい情報です。「9月は週に1回眠れない日があった、10月はほぼ毎日」のように変化が見えると、受診や休職を考えるときの判断の手がかりになります。体調や通院の記録をもっと整理したいときは、パワハラによる体調の変化を記録する方法とパワハラで診断書をもらうにはを読んでみてください。
眠れない日や食べられない日が続く、仕事のことを考えると消えてしまいたくなる、という状態なら、記録よりも先に誰かに話してください。電話やLINEで話せる窓口を仕事がつらくて限界のときの相談先にまとめています。
記録がつらくならないための続け方
記録を続けるうちに、書くこと自体が重荷になることがあります。次の工夫で負担を軽くできます。
- 書く時間と場所を決める:寝る直前は避け、帰りの電車やカフェなど、書き終えたら別のことに移れる場所にします。
- 事実の欄から書く:先に左を数行で書き、右は書きたい日だけ書きます。右が空欄の日があっても問題ありません。
- 書き終えたらノートを閉じて、しまう:読み返すのは週に一度と決めます。毎日読み返すと、そのたびに出来事を思い出すことになります。
- 書けない日は日付と一行だけ:「10/16 朝礼で同様の叱責あり。詳細は後日」と残し、元気な日に書き足します。書き足した日付も添えます。
- ノートの最後のページに「よかったこと」を書く:同僚が声をかけてくれた、仕事がうまくいった、など。記録が出来事の全部ではないと思い出せます。
紙に手で書くのがつらい人は、スマホのメモでも同じ2欄方式が使えます。見出しを「事実」「気持ち」に分けておくだけです。紙・アプリ・パソコンの使い分けはパワハラの記録はアプリ・パソコン・紙のどれがよいかの比較で扱っています。
ノートを相談に持っていくとき:事実の欄から時系列表を作る
相談に行くときは、ノートをそのまま渡すより、事実の欄だけを抜き出した時系列表を1〜2枚作って持っていくと、短い面談時間でも伝わりやすくなります。
- 事実の欄から、日付・相手・言葉や行為・その場にいた人を、古い順に表に写します。
- 同じような出来事が続いている部分には、印をつけます。
- 体の反応のうち、受診や欠勤につながったものだけを、別の列に短く書きます。
- ノートの原本は自分で持ち、見せる必要があれば、その場で該当ページを開いて見せます。渡すならコピーにします。
表の項目の例はパワハラ記録のテンプレートに、相談に持っていくもの全体はパワハラ相談の準備チェックリストにまとめました。ノートは会社に置きっぱなしにせず、家族にも見られない場所に保管してください。置き場所の選び方はパワハラの記録の保管方法で説明しています。業務の指示や量もあわせて残したい人はパワハラと指導の境目を示す記録の残し方も参考になります。
よくある質問
Q. 書き間違えたときは、修正テープで消してもいいですか?
修正テープや消しゴムで消すより、二重線で消して横に正しい内容を書くほうがおすすめです。後から読む人に、どこをいつ直したかが見えるので、書き換えたのではと疑われにくくなります。気づいた日に直したなら、直した日付も小さく添えておきましょう。
Q. ルーズリーフや手帳でも構いませんか?
使い慣れたものなら手帳でも構いません。ただ、ページを抜き差しできるルーズリーフは、順番が入れ替わったり、なくなったりしやすい面があります。綴じてあるノートにページ番号を振って使うと、抜けがないことを示しやすくなります。
Q. 気持ちの欄は、相談先に見せなければいけませんか?
見せるかどうかは自分で決めて構いません。相談のときは事実の欄を中心に見せ、気持ちの欄は話すときの手がかりとして手元に置くだけでも役に立ちます。ただ、体調や眠れなかったことなど体の反応の記録は、受診や労災の相談で役立つことがあるので、捨てずに残しておきましょう。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文を収録)(厚生労働省)
- 心理的負荷による精神障害の認定基準(令和5年9月1日付 基発0901第2号)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。