記録と証拠 / 手順

パワハラで診断書をもらうには:受診で伝えることと証拠としての使い方

この記事のもくじ
  1. 診断書をもらうまでの手順:予約から受け取りまで
  2. 受診で医師に伝えること:いつから・何があったか・症状
  3. 診断書で示せること・示せないこと
  4. 診断書が使われる場面:休む・給付・労災・相談
  5. 診断書を出す前に確かめること

パワーハラスメント(パワハラ)で眠れない、出社前に体が動かないといった不調があるとき、診断書は心療内科や精神科などを受診し、診察した医師に「診断書をお願いしたい」と頼めばもらえる書類です。医師法第19条は、診察した医師が診断書の交付を求められたら、正当な理由がなければ拒んではならないと定めています。大切なのは受診の中身で、いつから・何があって・どんな症状が出ているかを医師に伝えておくと、診断書と診療の記録が後で会社への説明や労災の手続に役立ちます。眠れない・食べられない状態が続いてつらいときは、診断書の準備より先に仕事がつらい・限界のときの相談先も使ってください。休職や退職の手続きで診断書を使う場面はパワハラで休職する診断書のもらい方とパワハラ退職に診断書は必要?で扱い、このページは、証拠としての診断書のもらい方に絞っています。

診断書をもらうまでの手順:予約から受け取りまで

診断書は「書類だけください」と頼むものではなく、診察を受けた結果として書かれるものです。流れは次のとおりです。

  1. 受診先を決めて予約する。 心の不調なら心療内科・精神科が中心です。予約が取りにくいときは、かかりつけの内科で相談する方法もあります。受診先の選び方はパワハラで心療内科を受診するとき:初診で伝えることと準備にまとめています。
  2. 伝えることをメモにして持っていく。 緊張すると話が飛びます。次の章の項目を紙1枚にまとめます。
  3. 診察の最後に、診断書の用途を伝えて頼む。 何に使うかで、医師が書く項目が変わるからです。
  4. 料金と受け取り日を受付で確かめる。 診断書の料金は医療機関ごとに決められています。当日受け取れるか、後日になるかも確かめます。
  5. 受け取ったら写しを取る。 原本は提出先に渡すことが多いので、写真か写しを自分用に残し、受け取った日を控えておきます。

頼み方の文例:「職場のことで体調を崩していて、会社に休みが必要なことを伝えたいと思っています。診断書を書いていただくことはできますか。会社の人事に提出する予定です。」

用途を一つに絞れないときは、「会社に出す分」と「手元に残す分」で何通必要かも伝えます。提出先ごとに求められる書式が違う場合があるので、会社に出すなら、先に人事へ「どんな内容の診断書が必要か」を聞いておくと、二度手間を防げます。

受診で医師に伝えること:いつから・何があったか・症状

医師が診断や診断書の内容を判断する材料は、診察で聞いたことと、その場で見た様子です。パワハラの話をしてよいか迷う人もいますが、職場での出来事は症状の背景として医師が知りたい情報です。伝えるときは、感情の強さよりも時期と具体的な出来事を中心にします。

受診メモの型:紙1枚にまとめる項目
項目 書く内容 書き方の例
いつから 出来事が始まった時期/症状が出た時期 「4月に上司が替わってから。眠れなくなったのは6月ごろ」
何があったか 代表的な出来事を2〜3件、日付つきで 「6/3 会議で大声で30分叱責。以後ほぼ毎日」
症状 睡眠・食欲・気分・体の症状 「夜中に2〜3回目が覚める。朝に吐き気」
仕事への影響 遅刻・欠勤・ミス・集中できない 「9月に3日欠勤。メールを読んでも頭に入らない」
今の状況 出勤しているか、休んでいるか 「今週は有給で休んでいる」
診断書の用途 誰に出すか 「人事に休職の相談をするため」

出来事は全部を話す必要はありません。日付のある代表的な場面を2〜3件伝え、「詳しい記録はあります」と添えれば十分です。記録の付け方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきで扱っています。

医師に伝えた内容は診療の記録(カルテ)に残ります。精神障害の労災認定基準では、労働基準監督署が主治医に、疾患名・発病の時期・医師が考える発病の原因とその根拠について意見を求める、とされています。受診のときに出来事と症状の時期を話しておくことは、後で労災を考えることになった場合にも、主治医が経過を説明する土台になります。

診断書で示せること・示せないこと

診断書は、証拠としての役割がはっきりした書類です。示せることと示せないことを分けておくと、使い方を間違えません。

診断書で示せること 診断書だけでは示せないこと
医師が診察した日に、どんな症状・病名があったか 職場で何が起きたか(出来事そのもの)
休養や就労制限が必要という医師の判断 誰が、いつ、何を言ったか
症状が出た時期についての医師の見立て(書かれていれば) その言動が指針のパワハラの3要素に当たるか

診断書は「体と心にどんな影響が出たか」を示す書類で、出来事の記録や録音、メール、同僚の証言と組み合わせて初めて全体の経過が伝わります。出来事の側の証拠はパワハラのメールを証拠にする方法やパワハラの証拠になる証言を同僚に頼むときで扱います。

また、診断書の病名や「職場のストレスが原因と考えられる」といった記載があっても、それだけでパワハラかどうかが決まるわけではありません。該当するかは、出来事の事実を示したうえで、労働局や弁護士などに判断してもらうものです。

診断書が使われる場面:休む・給付・労災・相談

同じ診断書でも、出す先によって見られるところが違います。主な場面を並べます。

会社に休みや配慮を求めるとき。 休職の手続や必要な書類は、会社の就業規則で決まっています。診断書は、休む必要があることや、配置・勤務時間への配慮が必要なことを会社に伝える材料になります。休職を前提にした診断書の頼み方と出し方はパワハラで休職する診断書のもらい方にまとめています。

傷病手当金を申請するとき。 協会けんぽの傷病手当金は、業務外の病気やけがで仕事に就けず、連続3日の待期を含めて4日以上休み、給与が出ない(傷病手当金の額より少ない場合は差額)ときに支給されます。仕事に就けない状態かどうかは、療養を担当する医師の意見などをもとに、本人の仕事の内容を考えて判断されると協会けんぽは説明しています。医師の意見をどの書類で出すかは申請書の様式で決まっているので、会社に出した診断書とは別に、申請書の様式を医療機関に見せて相談します。仕組みは休職中の傷病手当金:受け取る条件・金額の計算・期間で確かめてください。

労災を考えるとき。 業務による心理的負荷で精神障害を発病したと認められるには、対象となる病気を発病していること、発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷があったこと、などの要件があります。発病していることと、いつ発病したかは、主治医の意見や診療の記録などをもとに判断されます。初診日や受診の経過が、ここで意味を持ちます。手続の全体はパワハラによる精神障害の労災認定:3つの要件と申請の流れにあります。なお、業務上と認められた病気は労災の対象となり、健康保険の傷病手当金は業務外が対象です。どちらで手続するか迷うときはパワハラの休職は傷病手当金と労災のどちら?違いと切り替えを見てください。

社内外に相談するとき。 会社の相談窓口や労働局に相談するとき、診断書の写しがあると、心身への影響が出ていることを短く伝えられます。相談の場では原本ではなく写しで足りることが多いので、原本は手元に置いておきます。

診断書を出す前に確かめること

診断書は個人の健康に関わる情報です。出す相手と範囲を自分で決めてから渡します。

  • 提出先が必要としている内容を確かめる。 病名まで必要か、休養期間と就労の可否が分かれば足りるのか。会社によっては決まった書式があります。
  • 写しを取ってから原本を渡す。 受け取った日、提出した日、提出した相手を記録しておきます。メールで送ったなら、その送信記録が提出の記録になります。
  • 渡す相手を絞る。 加害者とされる上司を通さずに人事へ直接出したいときは、その旨を人事に相談します。
  • 後で診療の経過が必要になったら。 民間の医療機関には、個人情報保護法第33条にもとづいて、自分の診療記録などの保有個人データの開示を求めることができます。手続や費用は医療機関の窓口で確かめてください。

診断書をもらった後は、通院や服薬、欠勤の記録も続けると、症状の経過がつながって見えるようになります。続け方はパワハラによる体調の変化を記録する:通院・服薬・欠勤の残し方で説明します。眠れない・食べられない状態が続いてつらいときは、仕事がつらい・限界のときの相談先も使ってください。

よくある質問

Q. 「パワハラが原因」と診断書に書いてもらえますか?

原因をどう書くかは、診察した医師が医学的に判断して決めます。患者が文言を指定して書いてもらうものではありません。医師が判断しやすいよう、出来事と症状が出た時期を受診のときに具体的に伝えておくことが、本人にできる準備です。

Q. 会社に出すと、病名まで知られてしまいますか?

診断書に書かれた内容は、提出した相手が読むことになります。会社に出す前に、病名の記載が必要な提出先かどうかを人事に確かめ、医師には「会社に休みの必要を伝えるために使う」と用途を話して相談してください。原本を渡す前に写しを取っておくと、後で内容を確かめられます。

Q. 一度受診しただけでも診断書は出ますか?

出すかどうか、何を書くかは医師の判断です。医師法第19条は、診察した医師が診断書の交付を求められたとき、正当な理由がなければ拒んではならないと定めています。休養の期間や書く項目は、診察で分かったことをもとに医師が決めるので、初診の日に希望どおりの内容になるとは限りません。気になる点は、その場で医師か受付に尋ねてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

パワハラで休職する診断書のもらい方:医師に伝えることと出し方

パワハラで心療内科を受診するとき:初診で伝えることと準備

パワハラによる体調の変化を記録する:通院・服薬・欠勤の残し方

パワハラの証拠になる証言を同僚に頼むとき:頼み方の文例と陳述書