マタハラ発言の例:妊娠報告・つわり・時短・育休明けの言葉を場面別に確かめる
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マタハラになりうる発言は、厚生労働省の資料では「休みを取るなら辞めてもらう」「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」のような言葉が例に挙がっています。上司が解雇や昇進への影響をほのめかす言葉は1回でも、それ以外の嫌味や仕事外しは繰り返し・継続的なものが当たる、という分かれ目があります。この記事では、場面ごとに言葉の例を早見表にし、記録の要点を添えます。定義そのものはマタハラとは?2つの型の解説にまとめています。
早見表:場面別にマタハラになりうる発言の事例
表の左側は厚生労働省のパンフレットにある例の言葉、右側は同じ型に入る言い方の例です。右側は型を分かりやすくするために並べた言い換えで、実際の言葉が少し違っても、同じ型に当たるかどうかで考えます。
| 場面 | 厚生労働省の資料の例 | 同じ型に入る言い方の例 | 型 |
|---|---|---|---|
| 妊娠を報告したとき | 「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」(上司) | 「妊娠したなら、今の役職は外れてもらうことになる」 | 状態型・不利益の示唆(1回で該当) |
| 妊娠中(つわり・体調) | 「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返し言い、仕事をさせない | 「つわりで休む人に大事な案件は回せない」と言われ続け、担当を外されたまま | 状態型・嫌がらせ(繰り返し・継続) |
| 妊娠中(時期) | 「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返し言う | 「この時期に妊娠なんて計画性がない」と会議のたびに言う | 状態型・嫌がらせ(繰り返し・継続) |
| 産休・制度の相談 | 産前休業の相談に「休みを取るなら辞めてもらう」(上司) | 健診の時間の申し出に「通院で抜けるなら評価は下げる」(上司) | 制度型・不利益の示唆(1回で該当) |
| 残業・深夜の制限 | 時間外労働の制限の相談に「次の査定の際は昇進しないと思え」(上司) | 残業免除の申し出に「それなら正社員は難しい」(上司) | 制度型・不利益の示唆(1回で該当) |
| 育休の相談 | 「男のくせに育児休業を取るなんてあり得ない」(上司。取得をあきらめざるを得ない) | 「育休を取るなら戻る席はないと思って」(上司) | 制度型・利用の阻害/不利益の示唆 |
| 育休の取得を伝えたとき | 同僚が「迷惑だ。自分なら取得しない。あなたもそうすべき」と繰り返し言う | 「みんなに負担をかけるのに本当に取るの?」と同僚が何度も言う | 制度型・利用の阻害(同僚は繰り返しで該当) |
| 復帰後(時短・残業免除) | 「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」と繰り返し言う/「所定外労働の制限をしている人には大した仕事はさせられない」と言い、雑務だけさせる | 「時短の人は戦力外」と言われ続け、会議にも呼ばれなくなった | 制度型・利用後の嫌がらせ(繰り返し・継続) |
育休や時短は、男女とも育児・介護休業法25条の「育児休業等に関するハラスメント」の対象です。女性の場合も、復帰後の時短への言葉は、この育介法の枠組みで扱われます。
1回で当たる言葉と、繰り返しで当たる言葉の分かれ目
厚生労働省のパンフレットは、言葉の種類と言った人によって、次のように整理しています。
| 言葉の中身 | 上司が言った | 同僚が言った |
|---|---|---|
| 解雇・降格・昇進なしなど、不利益な取扱いをほのめかす | 1回でも該当 | (上司による言動の型) |
| 制度を使わないよう・取り下げるよう言う | 1回でも該当 | 繰り返し・継続的なものが該当 |
| 妊娠や制度の利用を理由にした嫌味・仕事外し・雑務だけ | 繰り返し・継続的なものが該当 | 繰り返し・継続的なものが該当 |
どの場合も、本人が「やめてほしい」と意に反することを伝えたのに、さらに言われた場合は、繰り返し・継続的であることは求められない、とされています。
また、言葉は「労働者への直接的な言動」であることが前提です。本人のいない場で言われた陰口は、この表の型にそのまま当てはまらないことがあります。ただし、指針は会社の措置として、妊娠・出産等に関する否定的な言動(本人に直接言わないものも含む)がハラスメントの原因や背景になりうることを周知するよう求めています。陰口が続く職場なら、そのことも会社に伝える材料になります。
マタハラに当たらない言葉と、配慮が一方的になるとき
次のような言葉は、業務上の必要性に基づくものとしてマタハラに当たらない例に挙がっています。
- 「業務体制を見直したいので、育休はいつからいつまで取る予定か教えてほしい」
- 「次の妊婦健診は、この日は避けてほしいが調整できるか」(強要しない場合)
- 「妊婦には負担が大きいだろうから、もう少し楽な業務に変わってはどうか」
- 「つわりで体調が悪そうだが、少し休んだ方が良いのではないか」
違いは、相談や提案か、決めつけや強要かです。同じ「楽な業務に変わっては」でも、本人の希望を聞かずに担当を外し、戻してほしいと伝えても「妊婦なんだから」と取り合わない状態が続くなら、状態への嫌がらせ型の整理に近づきます。言葉だけでなく、その後に何が起きたかまで記録しておくと、相談先で伝わりやすくなります。
人格を否定する暴言や、妊娠とは関係のない叱責は、パワハラの枠組みで考えます。言葉の例はパワハラになりうる言葉の例、性的な内容の言葉はセクハラになりうる発言の例にまとめています。
言われた言葉の記録の要点
マタハラの相談では、「何を言われたか」に加えて「何の後に言われたか」が大切です。型の判断が、妊娠の報告や制度の申し出との結びつきで決まるからです。
- 言葉はそのまま書く。 要約せず「 」で残します。語尾や前後の一言で意味が変わります。
- 言った人と立場。 上司か同僚かで当たり方が変わるので、役職も書きます。
- きっかけとの時間関係。 妊娠の報告日、健診や時短の申し出日、育休の申出日と、言われた日を並べます。
- 回数と、やめてほしいと伝えたか。 2回目以降は「○回目」と書き、意に反すると伝えた日と言い方も残します。
- その後に起きたこと。 担当替え、会議から外れた、評価面談での発言など。
伝え返すときは、短く、事実だけにします。
文例:「先日の『時短の人には大した仕事は任せられない』という言葉はつらかったので、今後はやめていただけますか。今の担当業務は時短の範囲で続けたいと考えています。」
記録の型全般はパワハラの記録の書き方の記入例がそのまま使えます。
言葉を相談につなげるとき
社内の相談窓口や人事に伝えるときは、記録した言葉を2〜3個に絞り、「いつ、誰に、何の後に、何と言われたか」と「どうしてほしいか」を書いて持っていきます。会社には、相談に応じ、事実を確認し、配慮の措置をとる義務があります(均等法15条・育介法25条)。
社内で言いにくい、相談しても変わらないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。連絡先はパワハラの相談窓口一覧にあります。妊娠中の体調や通院に関わる言葉に悩んでいる人は、使える制度とあわせて妊娠中のマタハラを読んでください。
よくある質問
Q. 女性の上司や同僚から言われた言葉もマタハラになりますか?
なります。指針は行為者を「上司又は同僚」としていて、性別を限っていません。同じ立場で子育てをした先輩からの「私のときは休まなかった」という言葉も、利用をやめさせる趣旨で繰り返されれば、型に当てはめて整理できます。
Q. 冗談めかして言われた場合はどう考えればいいですか?
指針は言い方の軽さではなく、客観的にみて制度の利用をあきらめざるを得ない状況になるか、就業に看過できない支障が出るかで考えます。冗談の形でも、同じことを繰り返し言われているなら、日時と言葉を記録しておきましょう。「やめてほしい」と一度伝えておくと、その後の言動の整理がしやすくなります。
Q. 妊娠の報告前に言われた言葉は対象になりますか?
マタハラ指針の対象は、妊娠・出産したことや制度の利用に関する言動です。報告前の言葉は、内容によってセクハラやパワハラの指針で整理することになります。性的な事実を尋ねる言葉はセクハラの例として、プライベートへの過度な立ち入りはパワハラの個の侵害として、それぞれ別の記事で扱っています。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(令和8年10月1日適用時点)P15〜19(厚生労働省)
- 妊娠・出産等に関するハラスメント指針(平成28年厚生労働省告示第312号)令和8年10月1日適用(厚生労働省)
- 育児休業等に関するハラスメント指針(平成21年厚生労働省告示第509号)令和8年10月1日適用(厚生労働省)
- 男女雇用機会均等法 第15条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。