ハラスメントの種類 / 悩み整理

妊娠中のマタハラ:つわり・通院への嫌味と使える制度の確かめ方

この記事のもくじ
  1. 妊娠中に使える制度:母性健康管理の措置と労基法の保護
  2. つわり・通院への嫌味は、指針のどの型に当たるか
  3. 嫌がらせを受けたときに動く順番
  4. 妊娠中のストレスと体を守るために
  5. 解雇・退職をほのめかされたとき

妊娠中に「また通院?」「つわりで休まれると困る」と言われ続けているなら、まず知っておきたいのは、会社には妊婦健診の時間を確保し、医師の指導に沿って通勤緩和や勤務時間の短縮などの措置をとる義務があり(男女雇用機会均等法17条・18条)、その利用への嫌がらせは防止すべきマタハラだということです。動く順番は、①使える制度を書面で申し出る、②言われた言葉を記録する、③社内か労働局に相談する、です。マタハラの定義そのものはマタハラとは?2つの型の解説にまとめています。

妊娠中に使える制度:母性健康管理の措置と労基法の保護

妊娠中の働き方を守る制度は、均等法(母性健康管理)と労働基準法(母性保護)に分かれています。どれも「本人が求める・請求する」ことで動く制度なので、知らないままだと使われずに終わりがちです。

早見表:妊娠中に使える主な制度
制度 根拠 中身 動かし方
健診などの時間の確保 均等法17条、施行規則2条の5 妊娠23週までは4週間に1回、24〜35週は2週間に1回、36週から出産までは1週間に1回、健診などを受ける時間を確保できるようにする(医師・助産師の別の指示があればそれに従う) 会社に申し出る
指導事項を守るための措置 均等法18条 健診で受けた指導を守れるよう、勤務時間の変更、勤務の軽減など必要な措置をとる 母健連絡カードなどで指導内容を伝える
軽易な業務への転換 労基法65条3項 妊娠中の女性が請求したら、他の軽易な業務に転換させる 請求する
時間外・休日・深夜の制限 労基法66条 妊産婦が請求したら、時間外労働・休日労働・深夜業をさせない。変形労働時間制でも1日・1週の法定労働時間を超えさせない 請求する
産前休業 労基法65条1項 出産予定の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から、請求すれば休業できる 請求する

母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード) は、医師などの指示を会社に正しく伝えるための様式です。厚生労働省のサイトによると、主治医などが通勤緩和や勤務時間の短縮などが必要と判断したときに記入して本人に渡し、本人がそれを会社に出して措置を申し出ます。会社はカードの記載に従って措置を講じます。カードがなくても、本人の申出などから内容が明らかなら会社は必要な措置をとる必要があるとされています。様式は「女性にやさしい職場づくりナビ」から入手できます。

つわり・通院への嫌味は、指針のどの型に当たるか

妊娠中によく聞かれる悩みを、指針の2つの型に当てはめると次のようになります。

悩み 当てはまる型 分かれ目
健診の時間を申し出たら「通院が多すぎる」「評価に響く」と言われた 制度等の利用への嫌がらせ型(母性健康管理措置) 上司が不利益をほのめかせば1回でも、嫌味は繰り返し・継続的なら
つわりで休んだことを会議で何度も責められる 状態への嫌がらせ型(妊娠に起因する症状) 繰り返し・継続的か、やめてほしいと伝えた後も続いたか
残業の免除を請求したら「それなら担当を外す」と言われた 制度等の利用への嫌がらせ型(時間外労働の制限) 上司のほのめかしは1回でも
妊娠を報告したら、相談なく重要な仕事から外された 状態への嫌がらせ型、または会社の不利益取扱い(9条3項) 業務上の必要性に基づく配慮か、本人の意向を聞いたか

一方で、指針は業務上の必要性に基づく言動はマタハラに当たらないとしています。「次の健診はこの日は避けてほしいが調整できるか」と相談されること、「つわりで体調が悪そうだから少し休んでは」と配慮されることは、その例です。指針は、つわりなどで周囲の業務負担が増えることがマタハラの背景になるとして、会社に業務分担の見直しなどを求めています。周りの負担への遠慮から制度を我慢する必要はなく、負担の調整は会社の役割です。

具体的な言葉の例はマタハラになりうる発言の例にまとめています。

嫌がらせを受けたときに動く順番

体調を優先しながら、次の順で進めると、相談先で話が通りやすくなります。

  1. 制度を書面で申し出る。 口頭で「通院で抜けます」と伝えるだけだと、制度の利用なのか私用なのかがあいまいになります。母健連絡カードやメールで「均等法の母性健康管理の措置として」「労基法66条の時間外労働の制限として」と目的を書いて申し出ると、後の言動が制度の利用に関するものだと整理しやすくなります。

文例(人事・上司宛てのメール):「妊娠○週となり、主治医から通勤時間帯の混雑を避けるよう指導を受けました。母性健康管理指導事項連絡カードを添付しますので、時差出勤の措置をお願いします。また、労働基準法66条に基づき、出産まで時間外労働の免除を請求します。」

  1. 言われた言葉と、その前後を記録する。 日時・相手・言葉・何の後か(申し出・通院・欠勤)・回数を残します。体調の記録(つわりで休んだ日、健診の日)も同じノートにつけると、時系列が一目で分かります。
  2. 社内で伝える。 直属の上司から言われているなら、その上の上司、人事、ハラスメント相談窓口へ。会社には相談に応じ、事実を確認し、配慮する措置をとる義務があります(均等法15条)。
  3. 社外に相談する。 社内で動かないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ。母性健康管理の措置そのものを会社が講じない場合も、ここが相談先です。連絡先はパワハラの相談窓口一覧、できることは労働局のハラスメント相談窓口にあります。

妊娠中のストレスと体を守るために

妊娠中は、職場の言葉がふだん以上にこたえます。眠れない、食べられない、出勤前に涙が出るといった状態が続くときは、健診の医師や助産師に職場の状況も含めて伝えてください。医師が勤務の軽減や休業が必要と判断すれば、母健連絡カードでその指導を会社に伝えられます。

気持ちを誰かに聞いてほしいときは、働く人のための公的な相談窓口があります。番号と受付時間は仕事がつらい・限界のときの相談先にまとめています。家族やパートナーには、記録したノートを見せながら話すと、状況を共有しやすくなります。

解雇・退職をほのめかされたとき

妊娠中の言葉の中でも、「辞めてもらうしかない」「契約は更新しない」のように仕事そのものを失わせる言葉は、別の重みがあります。均等法9条3項は、妊娠・出産や母性健康管理措置の利用などを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じています。9条4項は、妊娠中と出産後1年以内の解雇を無効とし、ただし会社が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明したときは別としています。

「辞める」と口にする前に、言われた言葉を記録し、退職届を出さずに相談してください。応じる前に確かめることはマタハラで退職を迫られたらで、産休・育休の後に起こりやすい降格や配置転換は育休明けのマタハラで扱っています。

よくある質問

Q. 妊婦健診で休む時間は有給になりますか?

均等法と施行規則が会社に求めているのは、健診などを受けるための時間を確保できるようにすることです。その時間の賃金をどう扱うかは会社の就業規則などで決まるので、就業規則か人事に確かめてください。

Q. つわりがひどくて休むと、評価を下げると言われました。

つわりなど妊娠に起因する症状で働けないこと・能率が下がったことは、均等法施行規則で妊娠・出産に関する事由に挙がっています。上司が評価の引き下げなどをほのめかすことは、指針の「状態への嫌がらせ型」で典型例に挙がる、不利益のほのめかしに近い形です。言われた言葉と日時を記録し、医師の指導があれば母健連絡カードで会社に伝えたうえで、人事か労働局に相談してください。

Q. 妊娠中のストレスで眠れない日が続いています。

体の状態とあわせて、まず妊婦健診の医師や助産師に伝えてください。医師から勤務の軽減や休業の指導があれば、それを会社に伝える仕組みがあります。気持ちを話せる窓口は、働く人のための心の相談の記事にまとめています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

マタハラとは?制度利用への嫌がらせ型・状態への嫌がらせ型を解説

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