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精神障害の労災の申立書の書き方:出来事・時期・相手を整理する

この記事のもくじ
  1. 申立書とは何か:出す理由と、様式の構成
  2. 書く前の準備:記録と時系列表から素材をそろえる
  3. 症状と勤務状況の欄の書き方(質問1〜4)
  4. 出来事の欄の書き方(質問5):何が・いつ・誰が
  5. 仕事以外・理由・資料の欄の書き方(質問6〜11)
  6. 提出前のチェックと、代筆・代行について

労災の申立書は、精神障害の労災請求を出すときに労働基準監督署(以下、労基署)から提出を求められることが多い書面で、病気の経過・仕事の状況・発病前おおむね6か月の出来事・仕事以外の出来事などを本人の言葉で書きます。書き方の要は、記録や時系列表に残した日付と事実を、様式の項目に沿って並べ直すことです。この記事では、労働局のサイトに載っている「精神障害用 申立書」の項目を順に追いながら、何を書くか、記録のどこから拾うか、文例とあわせて説明します。

申立書とは何か:出す理由と、様式の構成

労災の請求が行われると、労基署は保険給付ができるかを判断するための調査を行い、請求した本人から詳しく話を聞く「聴取」をします。様式の冒頭の「提出についてのお願い」には、申立書を出してもらえれば聴取を省略できる場合があり、聴取をするときも短時間でできる、と書かれています。同じ冒頭に、提出は強制ではないこと、書いた内容は労災保険給付の決定のためだけに使うことも書かれています。

様式(精神疾患用)は、次のような番号つきの質問でできています。副業先で働いていた人は、12〜16番の副業先の欄も書きます。

区分 質問の番号 聞かれること
ご病気について 1〜3 症状が始まった時期、症状の経過と受診のきっかけ、産業医面談の有無と治療の経緯
仕事について 4〜5 勤務状況(事業場名・配属先・作業内容・所定労働時間・休日・時間外労働)、ストレスとなった出来事と時期
仕事以外について 6〜7 発病前6か月の仕事以外の出来事、飲酒による問題、以前の精神科の受診歴
本人の背景 8〜9 学歴・職歴、家族構成
資料・理由 10〜11 健診記録や勤務状況の記録の有無、業務が原因と考える理由
副業先 12〜16 副業先の勤務状況と出来事(副業先がない人は書かない)

どの欄も、精神障害を発病した本人について書くものです。請求書そのものの出し方はパワハラの労災申請の流れで説明しているので、ここでは申立書に絞ります。様式は労働局のサイトや労基署で入手でき、版や書式が地域で少し違うことがあるため、手元に届いた様式の項目に従ってください。

書く前の準備:記録と時系列表から素材をそろえる

申立書は、いきなり清書せずに、素材を先に1か所へ集めると短時間で書けます。次の順で進めてください。

  1. 発病の時期を決める。主治医の診断書や診療録にある初診日・診断日を手元に置き、「症状が始まったと思う時期」と区別して書き出します。
  2. 発病前おおむね6か月の範囲を数える。診断された月から6か月さかのぼった期間が、出来事を書く中心の範囲です。
  3. 時系列表を作る。日付、相手、言われた言葉や行為、自分の対応、会社の対応を1行ずつ並べます。作り方はパワハラの時系列表の作り方にあります。
  4. 時間外労働の材料を集める。出退勤の記録、メール送信時刻、手帳などから、月ごとの残業時間を割り出します。残業の証拠の残し方が使えます。
  5. 仕事以外の出来事を洗い出す。引っ越し、家族の病気、金銭の出来事などを、時期だけメモします。

6か月より前から続くパワハラは、書く範囲を6か月に切らなくて構いません。認定基準は、嫌がらせが繰り返される出来事は一体として評価し、発病前おおむね6か月の間にも続いていれば、始まった時からの行為が評価の対象になるとしています。最初の出来事の日付も時系列表に残して、申立書の出来事欄や別紙に書きます。

早見表:申立書の項目と、書き起こす元の材料
申立書の項目 書き起こす元 気をつけること
1〜2 症状の始まりと経過 診断書、診療録、日々の記録 初診日は書類の日付と合わせる
3 治療の経緯 診察券、お薬手帳、領収書 転院したら全部の医療機関を書く
4 勤務状況 雇用契約書、シフト、タイムカード 所定の始業・終業・休憩を書く
5 出来事と時期 時系列表 出来事ごとに日付をつける
6〜7 仕事以外・既往 自分の手帳、通院履歴 該当しない項目は空欄でなく「なし」と分かるように
10 資料 健診結果、手帳、メール コピーを添付する
11 理由 時系列表の要約 事実から書き、評価は短くする

症状と勤務状況の欄の書き方(質問1〜4)

症状の欄(1〜2)は、「いつごろから、どんな症状が、どのくらい続いたか」と「病院に行くきっかけ」を問うています。診断名ではなく、眠れない、朝に動けない、出社前に吐き気がする、涙が止まらないなど、体と気持ちに出たことを時期順に書きます。パワハラの出来事と症状の関係が分かるよう、出来事の日付を括弧で添えると読み手に伝わります。

文例:「○年○月ごろから、出勤前に動悸と吐き気が出るようになりました。○月には夜に2〜3時間しか眠れない日が週に4日ほど続き、○月○日に近くの心療内科を受診しました。受診したのは、○月○日の会議で(上司の名前)に〜と言われた翌週です。」

治療の経緯(3)は、医療機関名・受診期間・病名を書く表です。転院している人は全部の医療機関を書きます。産業医の面談があったかどうかも聞かれるので、あった場合は日付と話した内容を一言添えます。

勤務状況(4)は、事業場名、配属先、具体的な作業の内容、所定労働時間と休憩、所定休日に加えて、発病前おおむね6か月の時間外労働を問います。時間外労働は「発病前1か月」と「発病前1か月を含む6か月」のそれぞれについて、時間数の程度と、毎日あった・月の半分以上あった・全くなかったなどの頻度を選ぶ形です。月ごとの数字が割り出せない場合は、最も長い月と短い月の見当を書き、根拠にする資料の名前を添えておきます。

出来事の欄の書き方(質問5):何が・いつ・誰が

申立書でいちばん大事なのが、質問5の出来事の欄です。様式は、発病前おおむね6か月の間に仕事で体験し、発病の直接の原因と考えている出来事を、パンフレットの別表1(業務による心理的負荷評価表)を参考に、「具体的出来事」と「発生時期」で書くよう求めています。出来事は4つ分の欄があり、書ききれないときは別紙を付けます。

別表1は、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」のような項目で構成されています。評価表の項目名を書き写す必要はなく、自分の体験をそのまま書けば、どの項目に当てはまるかは労基署が調べて評価します。項目を探しすぎて文章が止まるより、先に事実を書くほうが進みます。

出来事は、次の4点をそろえると読み手に伝わります。

  • いつ:日付、または「○月上旬」「毎週月曜の朝礼で」などの時期と頻度
  • 誰が:相手の氏名(または役職)と、自分との関係(上司、同僚、取引先)
  • 何を:言われた言葉や行為。覚えている範囲で、そのままの言葉を書く
  • どうなった:その場の自分の対応、周囲の人の様子、その後の会社の対応

文例:「○年○月から○月まで、ほぼ毎日、課長の○○さんから、他の社員がいるフロアで『お前は使えない』『辞めてしまえ』と大声で言われました。○月○日には、提出した書類を目の前で床に投げられました。○月に部長の○○さんへ相談しましたが、『様子を見よう』と言われ、その後も変わりませんでした。」

文例のとおり、会社に相談した日付と、会社が何をしたか(しなかったか)も出来事の一部として書きます。認定基準の評価表では、会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかったことが、評価を「強」の方向に動かす例として挙がっています。評価表の中身は精神障害の労災認定基準を読むで確かめられます。

書くときに避けたいのは、相手への評価だけの表現です。「人格を否定された」「いじめられた」は、そう受け止めた気持ちの説明としては大事ですが、先に「何と言われたか」「何をされたか」を書き、そのあとに自分の受け止めを一文添える順にします。

仕事以外・理由・資料の欄の書き方(質問6〜11)

仕事以外の出来事(6)は、発病前6か月の間に起きた、離婚や別居、自分の重い病気やケガ、家族の死亡や重い病気、多額の財産の損失や突然の大きな支出、災害や犯罪に巻き込まれたことなどの表に、該当があれば丸と時期を書く欄です。認定基準は、業務以外の心理的負荷や、もともとの病歴などの個体側要因も調べて、病気の原因を判断するとしています。聞かれていることに事実のとおり答えることが、聴取での説明のしやすさにもつながります。

飲酒の問題と以前の精神科の受診歴(7)も、事実を書く欄です。以前に受診歴がある人は、病名、時期、治療期間、医療機関名を書きます。以前の通院歴があっても、認定基準には、症状が悪化した場合や、安定したあとに新たに発病した場合の判断のしかたが定められていて、個別に医学的に見られます。経過を隠さず書くほうが、説明が通りやすくなります。

資料の欄(10)は、人間ドックや健康診断の記録と、出勤・帰宅時刻や残業時間を記録したもの(手帳、日記、カレンダー、メールなど)があるかを問い、あればコピーを添付するよう求めています。原本は手元に残し、コピーを出します。

最後の理由の欄(11)は、自分の発病が業務に原因があると考える理由を、詳しく書く場所です。ここは、5で書いた出来事を長く繰り返す欄ではありません。次の3点を短くまとめると、読み手に伝わります。

文例:「○月に○○課長の言動が始まり、○月まで続きました。それ以前は通院歴がなく、○月には眠れなくなり、○月○日に受診して○○と診断されました。仕事以外で大きな出来事はありませんでした。会社に○月○日に相談しましたが、その後も同じ言動が続いたため、業務が原因と考えます。」

提出前のチェックと、代筆・代行について

清書したら、提出前に次の点を見直します。

  • 日付:診断書や診療録の日付、時系列表の日付と食い違っていないか
  • 範囲:発病前おおむね6か月の出来事が、抜けていないか。6か月より前に始まった行為の始まりの日を書いたか
  • 事実と気持ち:言動の事実の部分と、自分の受け止めの部分が分かれているか
  • 名前:相手の氏名や役職の表記が、全体で同じか
  • 書ききれない部分:別紙に書き、申立書にその旨を書いたか
  • コピー:提出前の全ページの写しを手元に残したか

申立書の内容は、聴取で質問される下敷きになります。書いたことと違う話をすると、どちらが事実か聞き直されるため、写しを見返せる状態で聴取に臨んでください。聴取の流れはパワハラの労災調査では何をされる?にまとめています。

このサイトでは、申立書の代筆や代行はしません。文例は書き方の型で、中身は本人の体験を入れるものです。手が止まるときは、主治医や家族に事実を一緒に思い出してもらう方法があります。書類の作成を専門家に頼むかどうかは、精神障害の労災申請は社労士・弁護士に頼むかで整理しています。

よくある質問

Q. 申立書は出さないといけませんか?

様式の冒頭に、提出は強制ではなく、職員に直接話したい場合などは出さなくてもよいと書かれています。出すと聴取を省ける場合があり、聴取をする場合も短時間で済むと説明されています。書くのがつらいときは、先に労基署へ相談して進め方を決める方法があります。

Q. 家族が代わりに書いてもよいですか?

様式には、請求人と申立書の作成者が違うときに作成者の氏名と請求人との関係を書く欄があります。ただし中身は、発病した本人の体験が基本です。本人が読んで事実と合っているか確かめる時間を取ってください。

Q. 日付や言葉を正確に思い出せません。空欄にすべきですか?

「○年○月ごろ」「夏ごろ」のように幅を持たせて書いて構いません。正確に覚えている部分と、うろ覚えの部分を分けて書いておくと、聴取で聞かれたときも話が食い違いにくくなります。手帳やメールの日付が手がかりになります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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