相談先と窓口 / Q&A

パワハラは労基に相談できる?労基署が動かないと言われる理由と窓口

この記事のもくじ
  1. パワハラは労基に相談できる?相談はできるが、担当は労働局
  2. 労基署が動かないと言われる理由:根拠になる法律と権限が違う
  3. 労基署が扱えるパワハラ関連の問題:混ざっていないかを探す
  4. 「労基は意味ない」と感じたときの次の窓口
  5. 労基署・労働局で話すときは、問題を2つに分けて伝える

パワハラは、労基署(労働基準監督署)の建物の中にある総合労働相談コーナーなどで相談すること自体はできます。ただ、労基署の労働基準監督官が会社に立ち入って違反を正させる権限は、労働基準法などの違反に向けたものです。パワハラについて会社に防止の措置を義務づけているのは労働施策総合推進法で、その相談や会社への助言・指導を受け持つのは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。「労基は動かない」と言われるのは、この担当の違いが大きな理由です。このページでは、その理由と、パワハラの中に労基署が扱える問題が含まれていないかの探し方、次に向かう窓口を整理します。

パワハラは労基に相談できる?相談はできるが、担当は労働局

厚生労働省の相談窓口の一覧では、労働基準監督署の相談内容は「労働時間、賃金、解雇等の労働条件」「職場の安全や衛生」「労災保険」とされています。一方、雇用環境・均等部(室)の相談内容には「パワーハラスメント」がはっきり挙げられています。パワハラの相談を正面から受けるのは雇用環境・均等部(室)です。

それでも労基署へ行く意味があるのは、多くの監督署の中に総合労働相談コーナーが置かれているからです。このコーナーは、パワハラを含むあらゆる分野の労働問題を無料・予約不要で受け付け、内容に応じて雇用環境・均等部(室)や監督署など権限を持つ部署に取り次ぎます。つまり、労基署の建物に行けば、パワハラの相談の入口にはたどり着けます。

窓口 パワハラの相談 主な役割
労働基準監督署(監督官) 主な担当ではない 労働基準法・労働安全衛生法などの違反の監督、労災保険の給付
総合労働相談コーナー(労基署内などに設置) 受け付ける あらゆる労働問題の相談、担当部署への取次ぎ、紛争解決の制度の案内
雇用環境・均等部(室)(都道府県労働局) 担当 パワハラ・セクハラ・マタハラなどの相談、会社への助言・指導、援助と調停の受付

労基署が動かないと言われる理由:根拠になる法律と権限が違う

労働基準監督官は、事業場に立ち入って帳簿や書類を確かめ、使用者や労働者に尋問できます(労働基準法第101条)。法律違反の罪については、刑事訴訟法の司法警察官の職務も行います(第102条)。この強い権限は、労働基準法などの違反を正すためのものです。

パワハラの防止を定める労働施策総合推進法第31条は、会社に「相談に応じ適切に対応するための体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」を取るよう義務づけています。義務を負うのは会社で、パワハラの行為そのものに罰則はありません。この法律に基づいて会社に働きかける仕組みは、次のように監督署の監督とは別に用意されています。

比較表:労基署の監督と、労働局のパワハラ対応の違い
項目 労働基準監督署の監督 労働局のパワハラ対応
根拠の法律 労働基準法・労働安全衛生法など 労働施策総合推進法
対象 賃金・労働時間・解雇予告・安全衛生などの違反 会社の防止措置(相談体制・事後対応など)と、それをめぐる紛争
会社への働きかけ 立入り調査、改善を求める、重大・悪質な違反は送検 助言・指導・勧告。勧告に従わない会社は公表されうる(第42条)
本人と会社の争いの解決 扱わない 労働局長の援助(第36条)、紛争調整委員会の調停(第37条)
本人が受けられる保護 申告を理由とする不利益な取扱いの禁止(労基法第104条) 相談・援助の求め・調停の申請を理由とする不利益な取扱いの禁止(第31条・第36条・第37条)

監督官に「パワハラは扱えない」と言われたとしても、それは相談を退けられたのではなく、担当の法律と部署が違うという案内です。同じ労働局の中の別の部署が担当している、と受け止めて窓口を移れば、話は先に進みます。

労基署が扱えるパワハラ関連の問題:混ざっていないかを探す

パワハラの最中には、労働基準法などに違反する扱いが一緒に起きていることがあります。その部分については、労基署が正面から扱えます。次の点検表で、自分の状況に当てはまるものがないか確かめてください。

点検する項目 関係する決まり
「仕事が遅いのは自分の責任」と言われ、残業代が払われていない 賃金の全額払い(第24条)と割増賃金
有給休暇を申請したら、理由を問いただされて取り下げさせられた 年次有給休暇(第39条)
「辞めるなら損害を払え」「辞めたら罰金」と言われ、誓約書を書かされた 賠償予定の禁止(第16条)
ミスのたびに給料から罰金を引かれる 減給の制裁は1回が平均賃金の1日分の半額まで、総額が1賃金支払期の総額の10分の1まで(第91条)
「明日から来なくていい」と言われ、予告も予告手当もない 解雇の予告(第20条)
長時間労働が続き、健康診断も受けさせてもらえない 労働安全衛生法
パワハラで心の病気になり、仕事が原因の病気として補償を受けたい 労災保険(請求先は所轄の労基署)

当てはまるものがあれば、パワハラの相談とは別に、その問題を記録をそろえて監督署に相談できます。たとえば有給の扱いは有給を取らせてくれないのはパワハラ?時季変更権と相談先、仕事が原因の心の病気の補償はパワハラによる精神障害の労災認定:3つの要件と申請の流れで詳しく扱っています。監督署への相談の流れと持ち物は労働基準監督署に相談する方法:扱える問題と相談の流れ・持ち物にまとめています。

「労基は意味ない」と感じたときの次の窓口

監督署で思うような対応が得られなかったときは、パワハラの担当窓口に移ります。順番の目安は次のとおりです。

  1. 雇用環境・均等部(室)に相談する。 厚生労働省は、ハラスメントの相談を匿名でも可・無料と案内しています。会社に防止の措置が取られているか、相談後に会社が適切に動いたかを確かめ、必要なら会社への助言・指導につながります。窓口の役割は労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできることで説明しています。
  2. 援助や調停を考える。 会社との間で解決したいことがあるなら、労働局長の援助(助言・指導・勧告)や、紛争調整委員会の調停を求められます。パワハラの措置に関する紛争は、個別労働関係紛争解決促進法のあっせんではなく、この援助と調停で扱う決まりです(第35条)。仕組みは労働局の助言・指導と調停:パワハラ・カスハラの紛争を解決する仕組みで扱っています。
  3. 社内の動きを確かめ直す。 会社に相談したのに対応がない場合、そのこと自体が労働局に伝える材料になります。外へ出す前の確認はパワハラを相談しても会社が対応しないとき:外へ出す前に確かめることを参考にしてください。

公務員は民間と相談先が異なり、労働局による援助や調停の対象からも外されています(第48条)。人事院や人事委員会、教育委員会など、身分に合った窓口から始めてください。どの窓口でも解決に向かわないと感じたときの選択肢はパワハラを相談しても解決しないとき:次に打てる手の一覧にまとめています。

労基署・労働局で話すときは、問題を2つに分けて伝える

パワハラと労働基準法の問題が混ざっているときは、窓口で最初に2つに分けて伝えると、担当部署への振り分けが早くなります。

文例:「上司からの暴言について相談したいことと、残業代が払われていないことの、2つの相談があります。それぞれどちらの窓口が担当になるか教えてください。」

文例:「パワハラについては雇用環境・均等部(室)が担当と伺いました。こちらの監督署では、有給休暇を取らせてもらえない件についてご相談できますか。」

出来事を日付順に並べたメモを1枚用意し、言動の記録と、給与明細や勤怠の記録を分けてクリップしておくと、どちらの窓口でも話がしやすくなります。

労働局の入口と手続は総合労働相談コーナーとは?予約不要・無料でできる相談と次の手続きにまとめています。

よくある質問

Q. 労基署の窓口で「パワハラはうちでは扱えない」と言われました。相談は無駄だったのでしょうか?

無駄ではありません。監督官が会社に立ち入って違反を正させる権限は労働基準法などの違反に向けたもので、パワハラの相談は労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーが受ける、という役割の違いを案内されたと考えられます。その場で、パワハラを扱う窓口と、残業代や有給休暇など監督署で扱える問題がないかを聞き直しておくと、次の一歩が決まります。

Q. 公務員がパワハラを受けた場合も、労基署や労働局に相談できますか?

国家公務員は人事院の相談窓口や所属府省の人事担当、地方公務員は人事委員会(公平委員会)や人事担当課、公立学校の教員は教育委員会が相談先として案内されています。労働施策総合推進法の労働局による援助や調停も、公務員には適用が外されています。民間と同じ窓口を前提にせず、自分の身分に合う窓口を先に確かめてください。

Q. パワハラをした上司に、労基署や労働局が罰を与えることはありますか?

労働施策総合推進法には、パワハラの行為そのものを罰する規定はありません。法律が義務づけているのは会社の防止の措置で、労働局は会社に助言・指導・勧告を行い、勧告に従わない場合は会社名を公表できる仕組みです。暴行や脅迫など刑法に関わる行為は、別に警察への相談を考えます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

労働基準監督署に相談する方法:扱える問題と相談の流れ・持ち物

労働基準監督署ができること・できないこと:相談前の早見表

労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできること

パワハラを相談しても解決しないとき:次に打てる手の一覧