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パワハラ労災が認められた後の慰謝料:労災給付と損害賠償の関係

この記事のもくじ
  1. パワハラ労災が認められた後の慰謝料:給付に含まれないもの
  2. 二重に受け取らないための調整:条文にある3つの場面
  3. 認定の通知を受け取ったら:損害賠償を考える前の整理
  4. 弁護士に見せる資料のチェックリスト

パワハラで労災が認められても、労災保険の給付の中に慰謝料(精神的な苦痛への賠償)に当たるものはありません。慰謝料を求めるなら、会社や加害者に対する損害賠償という、労災とは別の手続きになります。一方で、治療費や休業中の収入のように労災の給付と重なる損害は、二重に受け取らないよう調整の規定があります。このページでは、認定の通知を受け取った人が、損害の項目ごとに「労災で補われた部分」と「残る部分」を見分け、相談の前に整理する手順をまとめます。

パワハラ労災が認められた後の慰謝料:給付に含まれないもの

業務災害で受けられる労災保険の給付は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付の7種類です(労災保険法第12条の8)。治療と収入と障害・遺族の生活を支えるための給付で、つらい思いをしたこと自体への支払いは、どの種類にも入っていません。

精神的な損害の賠償は、民法第710条が「財産以外の損害」として定めています。パワハラでいえば、加害者本人の不法行為(第709条)、会社の使用者としての責任(第715条)、職場の安全への配慮を欠いたこと(労働契約法第5条)などが、請求の根拠として挙げられる条文です。

ここで押さえておきたいのは、労災の認定と賠償の責任は、判断する機関も基準も違うという点です。認定は「業務による強い心理的負荷で発病したか」を労働基準監督署長が判断したもので、会社や加害者に責任があるかは別の場で判断されます。両者の結論が分かれた裁判例は、パワハラでうつ・適応障害になったとき:慰謝料と労災の関係で紹介しています。

早見表:損害の項目ごとに、労災で補われる部分と残る部分
損害の項目 労災保険で補われるもの 損害賠償で問題になりうる部分
治療費・薬代 療養補償給付(治療そのもの、または費用) 給付で補われた分は重ねて受け取れない。給付の対象外の出費があれば、その分
休業中の収入 休業補償給付=4日目から給付基礎日額の60%。最初の3日は会社が平均賃金の60%を補償(労働基準法第76条) 給付で補われなかった残りの部分
精神的な苦痛 なし 慰謝料
後遺障害・将来の収入 障害補償給付(年金または一時金) 年金との調整は労災保険法第64条
特別支給金 休業特別支給金=給付基礎日額の20%など 保険給付ではなく社会復帰促進等事業として支給(労災保険法第29条)

二重に受け取らないための調整:条文にある3つの場面

労災の給付と損害賠償のあいだの調整は、次の3つの場面で条文に出てきます。

  1. 会社が労働基準法の補償をした場合。 使用者が労働基準法による災害補償をしたときは、同じ事由について、その額の限度で民法による損害賠償の責任を免れます(労働基準法第84条第2項)。待期の3日分を会社が補償した場合などが当たります。
  2. 先に会社から賠償を受けた場合。 同じ事由で、保険給付で補われる損害の部分について会社から賠償を受けたときは、国はその額の限度で保険給付をしないことができます(労災保険法第64条第2項)。
  3. 障害や遺族の年金を受ける場合。 会社は、前払一時金の最高限度額に当たる額の限度で賠償の支払いを猶予でき、年金などが実際に支給されると、その分の責任を免れます(同条第1項)。

この条文は、調整の対象を「その給付によって補われる損害の部分」に限ると書いています。労災保険には精神的な苦痛を補う給付がないので、慰謝料は条文の書き方のうえでは調整の相手に挙がっていません。ただし、休業損害や後遺障害の部分をいくらと見るか、特別支給金をどう扱うかなど、実際の計算は事案ごとに専門家の判断が要ります。

順番にも気をつけてください。2の場面のとおり、示談や和解で会社から先にお金を受け取ると、その後の給付が減らされることがあります。示談の書面にサインする前に、受給状況を弁護士に伝えておくと、調整の見落としを防げます。

認定の通知を受け取ったら:損害賠償を考える前の整理

体調が落ち着いてから、次の順で手元を整えておくと、相談の場で話が早く進みます。

  1. 通知と入金の記録をまとめる。 支給決定の通知、振込の通知、受け取った給付の種類・期間・金額を一覧にする。調整の計算は、この一覧が土台になる。休業補償の額の出し方はパワハラ労災の休業補償給付:もらえる額の計算と待期の扱いで確かめられる。
  2. 認定で何が評価されたかを知る。 監督署の調査でどの出来事がどう評価されたかは、自分に関する記録として開示を請求できる(個人情報保護法第76条)。請求の窓口は労働局で尋ねる。
  3. 会社の規程を確かめる。 会社によっては、就業規則などで労災の給付に上乗せする補償を定めていることがある。規程があるかを人事に書面で尋ねる。
  4. 時効の日付を書き出す。 不法行為の損害賠償は、損害と加害者を知った時から3年、生命・身体を害した場合は5年(民法第724条・第724条の2)。安全配慮義務違反として構成する場合は、知った時から5年などの別の期間がある(第166条・第167条)。認定を待つ間もこれらの期間は進む。数え方はパワハラの時効は何年?で整理している。
  5. 相談先を選ぶ。 慰謝料の考え方はパワハラの慰謝料はどう決まる?、相談の持ち物はパワハラを弁護士に相談する前の準備を見て、弁護士や法テラスへ。

規程の有無を尋ねるときは、次のような短い文面で足ります。

文例(人事へのメール):「人事部 ご担当者様 〇〇部の〇〇です。業務上の疾病として労災の支給決定を受けました。就業規則やその他の規程に、労災保険の給付に上乗せする補償の定めがあるか教えてください。定めがある場合は、その規程の写しをいただけますか。」

弁護士に見せる資料のチェックリスト

資料 何のために使うか
労災の支給決定の通知・振込の通知 受け取った給付の種類と額を示し、調整の計算に使う
開示された調査の記録 認定でどの出来事が認められたかを示す
診断書・通院の記録・領収書 治療の経過と、給付の対象外の出費を示す
休業前後の給与明細・源泉徴収票 休業で減った収入と、給付で補われなかった部分を示す
パワハラの記録(日記・メール・録音) 誰が、いつ、何をしたかを示す
就業規則・上乗せ補償の規程 会社が独自に定める補償の有無を示す

損害の項目ごとの中身はパワハラの損害賠償で請求されうる項目に詳しくあります。労災を申請するか迷っている段階の人は、パワハラで労災申請するメリット・デメリット:会社との関係も含めてから読んでください。不支給の決定が届いた人は、損害賠償の話に進む前に労災が不支給になったら:審査請求の期限と手続きの流れで審査請求の期限を確かめてください。公務員の場合は補償の法律が違い、会社に当たる相手も国や自治体になるので、公務員のパワハラ労災は公務災害で制度を確かめてください。

よくある質問

Q. 労災が認められれば、会社は慰謝料を払わなければならないのですか?

労災の認定は、労働基準監督署長が「業務によって発病したか」を判断したものです。会社や加害者に賠償の責任があるかは、民法や労働契約法をもとに、話し合い・労働局の手続き・裁判などの別の場で判断されます。認定で集められた資料や事実は、その判断の材料として使われることがあります。

Q. 会社と示談をすると、労災の給付に影響しますか?

影響することがあります。労災保険法第64条は、会社から同じ事由の損害賠償を受けた場合、保険給付で補われる損害の部分について、その額の限度で国が給付をしないことができると定めています。示談や和解の前に、受け取った給付とこれから受け取る見込みの給付を一覧にして、弁護士に見せてください。

Q. 労災の給付を受けながら、会社に損害賠償を請求してもいいですか?

労災保険の給付と損害賠償は別の制度なので、給付を受けながら請求を考えることはできます。そのうえで、同じ損害を二重に受け取らないための調整が条文に定められているので、受給額の記録を残しておくことが大切です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

パワハラでうつ・適応障害になったとき:慰謝料と労災の関係

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パワハラで労災申請するメリット・デメリット:会社との関係も含めて

パワハラの慰謝料はどう決まる?考慮される事情と請求の流れ