辞めたい・退職 / Q&A

退職金がもらえない・減ると言われたら:規程の確かめ方

この記事のもくじ
  1. 退職金は規程次第:制度があるかどうかを最初に確かめる
  2. 規程の確かめ方:5つの手順
  3. 「減る」と言われたとき:規程のどこを見るか
  4. 懲戒解雇のとき:全額不支給にできるかは行為の中身で分かれる
  5. 払われないとき・時効・相談先

退職金は、法律で支払いが一律に義務づけられたお金ではなく、会社の就業規則や退職金規程で決まるお金です。「もらえない」「自己都合だから減る」と言われたら、まず自分の会社に退職金の制度があるかを確かめ、規程にある支給条件・計算式・支払時期を読みます。規程があれば、そのとおりに払われるのが原則です。ここでは、見る箇所の順番と、会社への聞き方、懲戒解雇のときの考え方を書きます。

退職金は規程次第:制度があるかどうかを最初に確かめる

大阪労働局のQ&Aには、20年勤めたパートが退職金を請求できるかという質問があり、「退職金を支払う義務を一律に定めた法律はなく、会社に退職金制度があるときに払う」という趣旨の回答が載っています。つまり、結論を分けるのは雇用形態よりも、規程があるかどうかです。

一方、制度がある場合は、会社の事情で払えないとは言えません。同じQ&Aは、退職金規程があるなら景気を理由に支払いを延ばすことはできず、規程の定める支払日に全額を払う必要があるとしています。払わないことは、賃金の全額払いを定めた労働基準法第24条の問題になります。

労働基準法第89条は、退職手当の定めをする場合には、適用される労働者の範囲、決定・計算・支払の方法、支払時期を就業規則に書くよう求めています。ですから、制度がある会社の規程には、少なくともこれらが書かれているはずです。

規程の確かめ方:5つの手順

  1. 就業規則を探す:会社は、就業規則を掲示、備え付け、書面の交付などで労働者に周知しなければなりません(労働基準法第106条)。社内ネットワーク、共有フォルダ、人事の書棚などを探します。
  2. 「退職金規程」「退職手当」の章を見る:本体の就業規則とは別の冊子になっていることが多いので、「別規程」と書かれていないかも確かめる。
  3. 次の点を抜き出す:対象者(正社員のみか、契約社員やパートも含むか)、勤続年数の条件、計算式、自己都合と会社都合での違い、支払時期。
  4. 入社時の書類と照らす:労働条件通知書や雇用契約書に、退職手当の有無が書かれていないかを見る。
  5. 見つからなければ、人事に書面で問い合わせる。口頭で済ませず、日付が残るメールにする。

人事への問い合わせの文例:「退職を予定しています。退職金制度の有無と、あれば退職金規程の写しをお送りください。あわせて、私の場合の支給額の計算方法と支払予定日も、書面で教えてください。」

写真やコピーを自分の手元に残すことが大切です。会社に問い合わせたやり取りを書面で残す考え方は、パワハラ相談の記録を会社に残してもらう:相談と回答を書面にする方法と同じです。

「減る」と言われたとき:規程のどこを見るか

退職金が減ると言われる場面は、規程のどこに書かれているかで整理できます。

早見表:「減る・もらえない」と言われたときに見る箇所
会社の言い分 規程で見る箇所 確かめること
自己都合だから減る 退職事由ごとの支給率・係数 自己都合と会社都合で計算が分かれているか。分かれていれば、自分の退職事由がどちらに当たるか
勤続が短いから出ない 支給の最低勤続年数 年数の数え方(入社日から退職日まで、試用期間を含むか)
契約社員だから出ない 対象者の範囲 範囲に自分の雇用区分が含まれるか
引き継ぎ不足だから減らす 減額・不支給の事由 規程にその事由が書かれているか。書かれていなければ、会社に根拠を尋ねる
同業へ転職するなら返還 競業避止や返還の定め 定めの内容と期間

「自己都合だから減る」という場面は、退職の理由が自己都合か会社都合かで金額が変わる規程のときに起きます。パワハラや退職勧奨が理由で辞める人は、離職票の離職理由だけでなく、退職届に書く理由が規程の区分にどう影響するかも確かめます。退職届の理由の書き方はパワハラで辞めるときの退職届の書き方で扱っています。

注意したいのは、減額や不支給の理由が規程に書かれているかどうかです。書かれていない理由で減らすと言われたら、その根拠を会社に説明してもらう必要があります。会社の言い分を聞いたら、「規程の何条ですか」と聞いて、条文の番号と本文を書面でもらいます。

懲戒解雇のとき:全額不支給にできるかは行為の中身で分かれる

懲戒解雇の場合に退職金を不支給とする規程を置いている会社があります。ただし、規程があるからといって、すべての懲戒解雇で全額が不支給になるとは限りません。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、減額や不支給を規程で定めること自体は認められるものの、それまでの功績を失わせるほどの重大な背信行為がある場合などに限られる、という方向性を示しています。厚生労働省の「確かめよう労働条件」に載る裁判例には、次のものがあります。

事件 事案 結論
小田急電鉄(退職金)事件(東京高裁・2003年12月) 職場外の非違行為で懲戒解雇され、退職金も全額不支給とされた 懲戒解雇は有効としつつ、退職金は全額不支給とせず3割の支給を命じた
京都市(懲戒免職処分取消等請求)事件(最高裁・2025年4月) 市営バスの運転手(地方公務員)が乗客の運賃の着服などで懲戒免職となり、退職手当が全部不支給とされた 支給制限の判断が裁量権の逸脱や濫用と認められる場合に限り違法とし、全部不支給を違法としなかった

公務員の退職手当の事件なので民間の会社にそのまま当てはまるとは限らず、この表は、結論が事件ごとに違うことを示すものです。自分の場合に何割が支払われるか、不支給が認められるかは、ここからは判断できません。懲戒解雇と言われたときの手順は懲戒解雇と言われたら:理由の確かめ方・退職金・転職への影響で扱っています。

払われないとき・時効・相談先

退職金の請求権は、大阪労働局のQ&Aによれば5年で時効になります(労働基準法第115条、附則第143条)。賃金一般の3年より長いので、退職から時間がたっていても、制度があるなら慌てて諦める必要はありません。

退職金が払われないときの動き方は、次の順になります。

  1. 規程の写しと、退職金の額・支払日を書いた書面(またはメール)を手元に集める。
  2. 会社に、規程の何条に基づく金額かを書面で尋ねる。
  3. 動かないときは、都道府県労働局や労働基準監督署内の総合労働相談コーナーに相談する。相談先の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧にまとめています。
  4. 金額の請求や会社との交渉を本人の代わりに任せたいときは、弁護士に相談する。選び方はパワハラを弁護士に相談するときの選び方:労働者側か確かめる7項目で整理しています。

退職代行を使うと退職金がどうなるかを心配する人もいます。その場合は退職代行を使うと退職金はどうなる?で、運営形態による違いを確かめてください。

退職金の手続きは、辞めたあとの生活費の見通しにも関わります。退職金のほかに使える給付は、失業保険の手続きの流れと、次に読む「退職給付金」サポートは使うべき?も参考にしてください。

よくある質問

Q. 退職金は、会社に支払い義務があるお金ですか?

退職金を払う義務を一律に定めた法律はなく、払うのは会社に退職金の制度があるときです。大阪労働局のQ&Aも、まず制度があるかを確かめるよう案内しています。就業規則や退職金規程で支払う定めがあるのに払わないと、賃金の全額払いを定めた労働基準法第24条に関わる問題になります。

Q. 退職金の請求は、いつまでできますか?

大阪労働局のQ&Aでは、退職金の請求権は5年で時効になると説明されています。賃金は3年なので、退職金のほうが長い扱いです。退職から年数がたっていても、制度があるなら請求できる場合があるので、規程の写しを手がかりに、労働局の総合労働相談コーナーに相談します。

Q. 懲戒解雇になると、退職金は全額もらえませんか?

一律にそうなるとは言えません。厚生労働省が掲載する裁判例には、懲戒解雇は有効でも、退職金は全額不支給ではなく3割の支給を命じたものがあります。一方で、公金の着服を理由とする全部不支給を違法としなかった最高裁の例もあります。規程の根拠と行為の中身で結論が分かれるため、通知を受けたら書面を残して専門家に相談します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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