うつ・適応障害を会社に伝えるときの伝え方:誰に・どこまで・例文
うつや適応障害の診断を会社に伝えるときは、最初に直属の上司(話しにくければ人事)に、休む必要と期間を伝えるのが基本の順番です。伝える中身は「病名」より「療養が必要なこと・いつまで・何を配慮してほしいか」を中心にします。病歴は法律上も特に配慮が必要な情報なので、どこまで共有してよいかを自分の言葉で伝えておくと、知られたくない範囲を守りやすくなります。
うつ・適応障害を会社に伝えるときの基本:誰に・何を・どの順で
伝える相手は、会社の規模や関係によって変わりますが、役割で分けると選びやすくなります。
| 相手 | 役割 | 伝える中身の中心 |
|---|---|---|
| 直属の上司 | 仕事の割り振り、休む間の引き継ぎ | 休む必要・期間・引き継ぎの段取り |
| 人事・総務 | 休職の手続き、就業規則、給与や社会保険の案内 | 診断書の提出、休職の条件、手続きの流れ |
| 産業医・保健師 | 健康の面から働き方の意見を述べる | 体調、仕事への影響、配慮してほしいこと |
| 上司の上司・別の管理職 | 直属の上司が加害者などで話せないときの代わり | 直属の上司を通さずに相談したいこと |
上司がパワハラの相手で話すのがつらいなら、上司を飛ばして人事や上司の上司に伝えて構いません。産業医は常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任が義務づけられていて(労働安全衛生法施行令第5条)、労働安全衛生法第13条により、働く人の健康を確保するために必要なときは会社に勧告できます。話しにくい相手しかいない職場では、産業医を入り口にする方法もあります。
伝える順番の一例は次のとおりです。
- 主治医に「会社にどう伝えるか」を相談し、必要なら診断書を書いてもらう。
- 上司(または人事)に、面談かメールで、休む必要と期間を伝える。
- 人事から、休職の手続き・提出書類・連絡の方法を聞く。
- 産業医がいれば、働き方の配慮や復帰の相談の窓口として面談を申し込む。
休職を切り出すこと自体に強い抵抗がある人は、適応障害で休職を言い出せないとき:上司・人事への伝え方の例文で、言い出すまでの準備を詳しく扱っています。
どこまで伝えるか:病名・原因・見通しの線引き
会社に伝える情報は、多ければよいわけではありません。個人情報保護法は、病歴を「要配慮個人情報」として、取扱いに特に配慮を要する情報に位置づけ、会社などがあらかじめ本人の同意を得ずに取得することを原則として禁じています(第2条第3項・第20条第2項)。労働安全衛生法第104条も、会社が働く人の心身の状態に関する情報を集めて使うのは、健康の確保に必要な範囲に限るとしています(本人の同意がある場合などを除く)。
この考え方に沿って、伝える範囲を3段階で整理しておきます。
| 範囲 | 中身 | 伝える場面 |
|---|---|---|
| 最低限 | 療養が必要なこと、期間、連絡の方法 | 休むときは誰にでも |
| 必要に応じて | 病名、通院の頻度、仕事でできること・難しいこと | 人事・産業医との相談、配慮を求めるとき |
| 自分で決める | 原因となった出来事、私生活の事情 | 伝える意味があると判断したときだけ |
病名は、診断書に書かれていれば人事は知ることになります。診断書の記載は医師が判断するので、「会社に出すもの」と伝えて記載の内容を相談してください。会社が診断書に何を求めているか(病名の記載が必要か、期間だけでよいか)は、先に人事に聞いておくと話が早く進みます。診断書の受け取り方と出し方はパワハラで休職する診断書のもらい方:医師に伝えることと出し方にまとめています。
原因がパワハラの場合、体調の報告と出来事への対応を一つの会話に混ぜると、話がこじれやすくなります。休むための連絡では体調と期間を伝え、出来事については社内の相談窓口や人事に、記録をもとに別に申し出るほうが、それぞれ前に進みます。病気と損害賠償・労災の関係を考えている人はパワハラでうつ・適応障害になったとき:慰謝料と労災の関係を参考にしてください。
伝え方の例文:休むとき・働きながら配慮を求めるとき
文例は、自分の状況に合わせて言葉を変えて使ってください。共通するのは、事実(診断と期間)→ お願い(休む・配慮)→ 共有の範囲の順で伝えることです。
上司に対面・電話で休むことを伝える
文例:「お時間をいただきありがとうございます。体調のことで報告があります。心療内科を受診したところ、しばらく療養が必要と言われ、診断書をいただきました。〇月〇日から〇週間、休ませていただきたいです。引き継ぎは〇〇さんにお願いできるよう、明日までにメモを用意します。職場の皆さんには、体調不良でお休みするとだけ伝えていただけると助かります。」
メールで伝える(対面が難しいとき)
文例:「件名:体調不良による休養のご相談(〇〇)/〇〇課長 お疲れさまです。〇〇です。直接お伝えできず申し訳ありません。先日受診した医療機関で、〇週間程度の療養が必要との診断を受けました。診断書は人事部にも提出いたします。〇月〇日からお休みをいただけないでしょうか。担当中の案件の状況は添付のとおりです。体調に関することは、必要な方以外への共有を控えていただけますと幸いです。」
人事に手続きを確かめる
文例:「〇〇部の〇〇です。医師から〇週間の療養が必要と言われました。休職の手続きと提出書類、休んでいる間の連絡の方法、給与と社会保険の扱いについて教えてください。診断書に病名の記載が必要かどうかも確認させてください。」
休まずに働き続けて配慮を求める
文例:「主治医から、通院を続けながら働くことはできるが、残業を控え、強い叱責を受ける状況は避けるように言われています。しばらくの間、残業のない業務と、〇〇さんとの直接のやり取りを減らす形での担当にしていただけないか、ご相談させてください。」
産業医に面談を申し込む
文例:「適応障害と診断され通院しています。仕事を続けるうえでの配慮について相談したく、産業医の面談をお願いできますでしょうか。面談の内容のうち会社に伝えてよい範囲は、面談の場で相談させてください。」
産業医に話した内容がどこまで会社に伝わるかは、パワハラを産業医に相談するとき:面談で伝えることと守秘の範囲で法令に沿って整理しています。
伝えたあとに確かめること
伝えた後は、休む間と戻るときに必要なことを確かめておきます。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、休業の始まりの段階で会社から本人に情報提供する例として、傷病手当金などの経済的な保障、不安や悩みの相談先、休業できる最長の期間などを挙げています。会社から説明がなければ、こちらから聞いて構いません。
- 就業規則の休職の定め:休職できる期間、期間中の給与、期間が満了したときの扱い。
- お金の制度:給与が出ない期間の傷病手当金の申請の流れ(休職中の傷病手当金はいくら?条件・計算式・期間を協会けんぽで確認)。
- 連絡の方法と頻度:誰と、どのくらいの間隔で、メールか電話か。
- 伝えた記録:いつ、誰に、何を伝えたかを日付つきでメモする。メールで伝えた場合は送信したメールを保存する。
- 共有の範囲:上司や人事に「誰にどこまで伝えたか」を聞いておく。
医師には刑法第134条の守秘義務があり、正当な理由なく業務上知った秘密を漏らすことは禁じられています。会社が病状を知りたいときは、本人の同意を取って診断書や意見書で受け取るのが通常の形です。会社とのやり取りで困ったときは、主治医に「会社からこう言われた」と相談しながら進めると、伝える範囲の判断がぶれにくくなります。休職の前後で心の負担が大きいときは、地域の公的な相談先として精神保健福祉センターとは?心の不調を相談できる都道府県の公的窓口も使えます。
よくある質問
Q. 病名を会社に言わずに休むことはできますか?
休むために会社が求めるのは、多くの場合「療養が必要であること」と「期間」です。病名をどう書くかは、診断書を書く医師に「会社に出すもの」と伝えて相談できます。ただし会社の就業規則で診断書の提出や記載事項が決まっていることがあるので、提出先の人事に必要な項目を先に聞いておくと安心です。
Q. パワハラが原因だと会社に伝えたほうがいいですか?
体調の報告と、ハラスメントの相談は分けて考えると整理しやすくなります。休むための連絡では体調と期間を中心に伝え、出来事への対応を求めるなら、社内の相談窓口などに別に申し出ます。原因を伝えることで配置の配慮につながる場合もあるので、伝える範囲は主治医や産業医とも相談してください。
Q. 上司に伝えた内容が職場の同僚に広まらないか心配です。
病歴は個人情報保護法で取扱いに特に配慮を要する情報とされ、会社が健康に関する情報を集めて使う範囲も労働安全衛生法第104条で健康の確保に必要な範囲に限られています。伝えるときに「同僚には体調不良で休むとだけ伝えてほしい」と、共有の範囲を言葉にして頼んでおくことが一番の予防になります。
出典・参考にした公的な情報
- 個人情報の保護に関する法律 第2条第3項・第20条第2項(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働安全衛生法 第13条・第104条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働安全衛生法施行令 第5条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第134条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。