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一方的な減給はパワハラ?同意していない減給の考え方と相談先

この記事のもくじ
  1. 減給の3つの種類と、それぞれの根拠
  2. 懲戒の減給には上限がある:労基法91条の計算例
  3. 合意がない賃金の引き下げをどう考えるか:労働契約法8条・9条・10条
  4. 減給を言い渡されたときの手順:確認、記録、署名しない
  5. 相談先の使い分け:労働局・労基署・弁護士
  6. パワハラとして整理するときの見方

同意していない減給は、それだけで「パワハラ」とは決まりません。パワハラかどうかの前に、まず「その減給が何にあたるか」を見ます。懲戒処分としての減給なのか、降格や評価にともなう賃金の引き下げなのか、賃金規程そのものの変更なのか。この3つで根拠も上限も違い、相談先の使い方も変わります。 労働契約法は、合意なく就業規則を変えて労働者に不利益な変更をすることを原則として認めていません(9条)。ただし、変更が合理的で周知されているなど一定の場合は例外があります(10条)。懲戒の減給には、別に額の上限があります(労働基準法91条)。この記事では、減給の種類の見分け方、確かめる順番、会社への確認メールの文例、相談先を説明します。減給がパワハラにあたるかどうかの判断は、読者の個別の事情によるため、ここでは材料の整理までにとどめます。

減給の3つの種類と、それぞれの根拠

「減給」と一口に言っても、会社が使う根拠は次の3つに分かれます。通知書や面談の説明がどれにあたるかを、最初に確かめます。

種類 会社の説明の例 主な根拠・制限 先に確かめること
懲戒処分としての減給(減給の制裁) 「ミスの責任として今月から減給」 就業規則に懲戒の種類と程度の定めが要る(労基法89条)。1回の額と総額に上限(労基法91条) 就業規則に懲戒の項目があるか。上限を超えていないか
降格・評価にともなう賃金の減 「等級が下がったので基本給が下がる」 賃金規程・等級制度の定め。降格の理由はパワハラとしての降格:降格の理由を確かめる方法と相談先で扱う 等級と賃金表の対応。降格の通知の有無
賃金制度そのものの変更 「手当を廃止する」「賃金規程を改定した」 本人の合意(労契法8条)、または就業規則の合理的な変更(同10条) 変更の周知、説明会、同意書の有無

この3つは別の論点です。たとえば、降格に伴う賃金の減は、懲戒の減給の上限(91条)とは別の問題として扱われます。降格の部分はリンク先に任せ、この記事では「賃金が下がった」という結果に絞って確認の方法を書きます。

懲戒の減給には上限がある:労基法91条の計算例

就業規則で減給の制裁を定める場合でも、労働基準法91条が上限を決めています。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1賃金支払期(多くは1か月)の賃金総額の10分の1までです。 この上限を超える就業規則の部分は無効とされ(92条1項)、労基署長は就業規則の変更を命じることができます(92条2項)。

筆者の計算で例を挙げます。平均賃金の1日分が1万円の人なら、1回の減給は5,000円までです。月給30万円の人が1か月に何度か減給の制裁を受ける場合、その月の減給の総額は3万円までです。たとえば「1回の遅刻の制裁として月給の2割(6万円)を引く」といった扱いは、この例に当てはめると上限を超えます。平均賃金は、直前3か月の賃金総額を、その期間の暦日数(土日を含む)で割って求めます。賞与などは算入しません。

なお、遅刻や欠勤をした時間分の賃金を支払わない扱いは、一般に「働いていない時間は賃金が発生しない」という整理で、減給の制裁とは区別されます。ただし、就業規則の定めによって扱いが変わることがあるため、自分の会社の規程で確かめてください。

合意がない賃金の引き下げをどう考えるか:労働契約法8条・9条・10条

減給が懲戒ではなく、降格や制度変更に伴うものである場合、基本になるのは次の条文です。

  • 8条:労働者と使用者は、合意により労働契約の内容である労働条件を変更できる
  • 9条:使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更して労働者の不利益に労働条件を変更することはできない(10条の場合を除く)
  • 10条:変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、変更が不利益の程度・変更の必要性・内容の相当性・労働組合等との交渉の状況などに照らして合理的なときは、変更後の就業規則による

つまり、本人が同意していないという事実は大きな材料ですが、それだけで有効か無効かが決まるわけではありません。会社が就業規則の変更で賃金を下げる場合には、10条の要件(周知と合理性)を会社が満たしているかが論点になります。なお、個別の合意で就業規則より低い賃金にされていた場合、その部分は無効で、就業規則の基準によるとされています(12条)。個別の変更が合理的かどうかは、不利益の大きさなどを総合して判断されるもので、このサイトが結論を出すことはできません。判断が必要な場面では、後述の窓口に事実をそのまま伝えてください。

賃金の一部を会社が勝手に差し引く場合は、別の条文も関係します。賃金は全額を支払うのが原則で(労基法24条)、税や社会保険料など法令で認められた控除や、労使協定がある場合を除き、一部を引くことは許されません。「損害を弁償させる」という理由での天引きも、この点から確かめる対象になります。

減給を言い渡されたときの手順:確認、記録、署名しない

減給の通知を受けた日から動くと、後の相談が楽になります。次の順番で進めます。

  1. その場で署名・返答をしない。 同意書、承諾書、辞令の受領印を求められたら、「内容を確認して後日回答します」と伝えて持ち帰ります。合意が要件となる場面(労契法8条)で、署名は同意の証拠として使われます。
  2. 通知を書面で受け取る。 口頭のみの場合は、いつ、誰から、何と言われたかを日付つきでメモします。記録の書き方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきが使えます。
  3. 根拠を書面で尋ねる。 就業規則の何条にもとづくのか、いつから、いくらからいくらになるのか、算定方法を聞きます。
  4. 給与明細と就業規則を手元に確保する。 就業規則は職場で見られる状態にあるはずです。写真やコピーで保存します。
  5. 理由に上司の言動が絡むなら、その言動を別に記録する。 減給と言動を同じ時系列表に並べておくと、相談先で説明しやすくなります。

会社への確認メールは、次のような形で送れます。異議を述べるだけでなく、根拠の説明を求めるのがポイントです。

件名:賃金の変更について(根拠のご説明のお願い) 本文:「○月○日に、○月分の給与から基本給を○円から○円に変更するとのご通知をいただきました。私はこの変更に同意しておりません。つきましては、①変更の根拠となる就業規則・賃金規程の条文、②変更の理由、③変更後の金額の算定方法、④変更について従業員に周知された時期と方法を、書面またはメールで○月○日までにご教示ください。内容を確認のうえ、改めて回答いたします。」

送ったメールの日付と返信は、そのまま記録になります。返事が来ない場合も「尋ねたが回答がなかった」という事実が残ります。

相談先の使い分け:労働局・労基署・弁護士

減給は賃金の問題なので、パワハラの窓口だけでなく、賃金や労働条件を扱う窓口が使えます。

相談先 向いている話 注意
総合労働相談コーナー(労働局・労基署内などに設置、無料・予約不要) 賃金の引下げ全般。どの窓口が合うか分からないとき 窓口ごとに受付時間が違う。来庁前に電話で確認。詳しくは総合労働相談コーナーとは?
労働基準監督署 懲戒の減給の上限超過、賃金の天引きなど労基法に関わる点 パワハラそのものの所管は労働局の雇用環境・均等部(室)。労働基準監督署に相談する方法を参照
労働局の助言・指導、あっせん 労働条件の不利益変更をめぐる話し合い あっせんは相手方が参加しなければ打ち切りになる。労働局のあっせんの流れ
弁護士 減額分の請求、制度変更の有効性の検討など個別の判断 準備はパワハラを弁護士に相談する前の準備へ

窓口の電話番号と受付時間は変わることがあるため、この記事には書かず、一覧の記事にまとめています。パワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表から確かめてください。

減給を言われたときの確認の流れ
  1. 種類を見分ける(懲戒/降格・評価/制度変更)
  2. 根拠を書面で尋ねる(就業規則の条文・算定方法)
  3. 上限と合意を照らす(91条の上限/8条・9条・10条)
  4. 相談先を選ぶ(賃金は労基署・総合労働相談コーナー、言動は雇用環境・均等部(室))

パワハラとして整理するときの見方

減給の背景に上司の言動がある場合、厚生労働省のパワハラ指針は、職場のパワハラを「優越的な関係を背景とした言動」で「業務上必要かつ相当な範囲を超え」、「就業環境が害される」ものと定義しています。3つをすべて満たすことが要件です。減給そのものが指針の6類型にあるわけではなく、減給の決定に至る経緯での暴言や、仕事を与えないといった行為が別に指針の例に当たるかどうかを見ます。判定は窓口や専門家が事実を聞いて行うため、ここでは、減給の前後に起きた言動を日付つきで残しておくことをおすすめします。パワハラの基準の全体像はパワハラとは?3要素と6類型・指導との境目を指針の言葉で整理にあります。

あわせて、仕事を取り上げられたり自宅待機を命じられたりしている場合は、自宅待機の命令を受けたら:給料・期間・理由を書面で確かめる方法も読んでください。減給と自宅待機は同時に起きることがあります。

よくある質問

Q. 減給の通知書にサインしないと、そのまま減給されてしまいますか?

署名がなくても、会社が就業規則の根拠にもとづく人事上の措置として実施することはあります。署名の有無で結論が決まるわけではありません。その場で署名せず、「内容を確認して後日回答します」と伝えて持ち帰り、根拠の条文と算定方法を書面で尋ねるのが安全です。

Q. すでに減額された給料を何か月も受け取ってしまいました。もう争えませんか?

受け取ったことだけで争えなくなるとは言い切れませんが、会社が「同意があった」と主張する材料にされることはあります。気づいた時点で、同意していない旨と理由の説明を求める内容をメールで送り、日付を残してください。賃金の請求権には時効があり、退職手当以外の賃金は当分の間3年です。

Q. 減給された理由が上司とのトラブルだと思うのですが、パワハラとして相談できますか?

相談はできます。ただ、減給そのものは人事上の措置なので、パワハラかどうかは上司の言動が指針の3要素に当たるかを別に見ます。減給の根拠の確認は労働局や労基署、上司の言動の整理はハラスメントの相談窓口と、論点を分けて話すと伝わりやすくなります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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