上司の暴言への対処:言われた言葉の記録と相談先へ伝えるまで
上司の暴言への対処は、言われた言葉を「そのまま」書き残し、それを持って社内か社外の窓口に相談するのが基本の流れです。暴言は形に残りにくい分、記録の書き方で伝わり方が大きく変わります。この記事では、逐語で残す方法、録音の考え方、厚生労働省の指針が挙げる例、相談先に伝えるときの要点を順に説明します。怒鳴り声の大きさや叱責の長さが中心の悩みなら、上司が怒鳴るときの対処も合わせて読んでください。
上司の暴言は「言われたまま」書き残す
暴言の記録でいちばん大切なのは、言葉を自分の言葉に言い換えないことです。「ひどい言い方をされた」「人格を否定された」とまとめると、何を言われたのかが相談先に伝わりません。鉤括弧で、語尾まで覚えているとおりに書きます。
書き方の手順です。
- その日のうちに、日時・場所・その場にいた人を書く
- 言われた言葉を鉤括弧で書く(「給料泥棒」「親の顔が見たい」など、そのまま)
- 思い出せない部分は「〜という趣旨」と書き分ける
- 直前の会話(何の話をしていて暴言が出たか)を1〜2行で書く
- 同じ言葉が過去にもあれば、「○月○日にも同じ言葉」と書き添える
| よくない例 | 伝わる例 |
|---|---|
| 課長にひどいことを言われた | 10/23 9:40 朝礼後、課長から「お前みたいなのを給料泥棒って言うんだ」と言われた |
| 毎日のように暴言を吐かれる | 10/20・21・23 の3日、いずれも朝礼後に「使えない」と言われた(10/20は2回) |
| 人前でばかにされた | 課の8人の前で「こいつは小学生以下」と言われた。○○さん・△△さんが近くにいた |
5番のように同じ言葉が繰り返されているかを書いておくと、相談を受ける側が状況をつかみやすくなります。1回ごとの記録をためておくと、回数や頻度を数字で示せます。記録の型はパワハラの記録の書き方と記入例に、逐語メモと録音の組み合わせ方はパワハラの暴言を証拠にする方法にあります。
録音を使うときに考えておくこと
暴言は、録音があると言葉と口調がそのまま残ります。ただ、録音には始めるタイミングや保存の仕方、会社の規則との関係など、事前に考えておくことがあります。
- 録音は、暴言が繰り返される場面(定例の面談、朝礼後の呼び出しなど)の前から準備しておく
- 録音したファイルは編集せず、元のまま別の場所にも保存する
- 録音だけに頼らず、その日の逐語メモも並行して書く(録音が取れなかった日の穴を埋められる)
- 録音をSNSなどで公開しない
録音してよいかの考え方はパワハラを無断で録音してもいい?で、録音の手順はパワハラの録音の仕方と保存の手順で確かめてください。録音がなくても、逐語の記録と、メールやチャット、同僚の見聞きした内容で補えます。メールの保存の手順はパワハラのメールを証拠にする方法で確かめてください。
指針が挙げる「精神的な攻撃」の例と照らし合わせる
厚生労働省のパワハラ指針は、パワハラの6類型の1つ「精神的な攻撃」(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)に当たると考えられる例として、次を挙げています。
| 指針の例(精神的な攻撃) | 記録で残しておきたい点 |
|---|---|
| 人格を否定するような言動(性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を含む) | 言葉そのもの。仕事の中身ではなく人柄・能力全体に向いているか |
| 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと | 叱責の時間と回数 |
| 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと | その場にいた人数と名前、声の大きさ |
| 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を、相手を含む複数の労働者宛てに送信すること | メールの宛先、送信日時、本文 |
厚生労働省のパンフレットは、人格を否定する言動には、外国人であることや特定の国・地域の出身であることへの侮蔑的な言動も含まれると説明しています。一方で、再三注意しても遅刻が改善されない労働者に一定程度強く注意することなどは、当たらないと考えられる例です。
指針の例は典型を示したもので、当てはまるかどうかは個別の事情を総合して判断されます。記事を読んで自分で結論を出す必要はありません。表の右の列の点を記録に入れておけば、判断する側が見たい材料をそろえられます。暴言になりうる言葉の例をもっと知りたい人はパワハラになりうる言葉の例を参照してください。
相談先に暴言を伝えるときの要点
記録がたまったら、相談先に伝えます。暴言の記録を持って相談するときも、相談を理由とする不利益な扱いは労働施策総合推進法 第31条で禁じられています。社外では、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーが無料で相談を受けています。
どの窓口でも、次の順で話すと短い時間で伝わります。
- 誰から:上司の役職と、自分との関係(直属か、何年一緒か)
- いつから・どのくらい:始まった時期と頻度(例:今年4月から、週2〜3回)
- 何を言われたか:代表的な言葉を2〜3個、記録から読み上げる
- どんな影響があるか:体調、仕事への影響、休んだ日数
- 何をしてほしいか:暴言をやめさせてほしい、席や担当を離してほしい、話を聞いてほしいだけ、など
社内窓口での伝え方の例:「○○課長から、今年4月から週に2〜3回、朝礼の後に『給料泥棒』『小学生以下』と言われています。日付と言葉は記録してきました。最近は眠れない日が続いています。まずは課長と二人で話す場面をなくしてほしいと考えています。」
社外の窓口で話す順番と例文はパワハラ相談の伝え方:窓口で話す順番と例文に、窓口ごとの違いはパワハラの相談はどこへ?窓口ごとにできることと選ぶ順番にまとめています。
「殺すぞ」のような脅しや、殴る・物を投げるといった行為が重なっているときは、暴言の記録に加えて、身の安全を守る相談が先になります。窓口は職場で暴力・脅しを受けたら:110番と#9110、警察への相談の仕方で確かめてください。
アルバイト先の店長からの暴言など、立場によって相談先が変わることもあります。その場合はアルバイトのパワハラの相談先を読んでください。暴言がつらくて上司との関係そのものに悩んでいるなら、上司が辛いとき、相性・厳しい指導・パワハラのどれか?分ける観点と相談の目安が手がかりになります。上司の言動の型を知りたいときは、次の記事パワハラ上司の特徴:言動の型を知って記録と距離の取り方に生かすへ進んでください。
よくある質問
Q. 暴言の言葉を正確に思い出せないときは、記録しても意味がありませんか?
意味はあります。覚えている部分だけを鉤括弧で書き、あいまいな部分は「〜という趣旨のことを言われた」と分けて書けば、記録の信用を落としません。次からはその日のうちに書く習慣をつけると、言葉の精度が上がっていきます。
Q. 暴言がメールやチャットで届いた場合は、どう残せばいいですか?
送信者・日時・宛先が見える状態で画面を保存し、元のメッセージは消さずに残します。複数の人が宛先に入っていたなら、その宛先も記録します。画面ごと保存して、日時と送信者が分かる形で残しておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文を収録)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条・第36条・第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。