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パワハラの労災認定は難しい?認められにくい理由と準備できること

この記事のもくじ
  1. パワハラの労災認定は本当に難しいのか:令和7年度の数字
  2. 認められにくくなる5つの理由
  3. 認定で見られる点に合わせた準備
  4. 不支給になったとき・一人で進めるのが不安なとき

パワハラで心の病気になったときの労災認定は、数字で見ると、一律に「狭き門」とは言えません。厚生労働省の令和7年度の統計では、精神障害全体の認定率は28.2%ですが、出来事が「上司等からのパワーハラスメント」と評価された事案に限ると、決定403件のうち222件が支給決定でした(約55%、筆者の計算)。難しくなりやすいのは、出来事がパワハラとして評価されるところまで事実を示せるかという点です。同じ上司との問題でも「上司とのトラブル」として評価された事案は、決定1,061件のうち支給は36件でした。この記事では、統計から見える「認められにくさ」の正体と、認定で見られる点に合わせて今から準備できることを整理します。認定の要件そのものはパワハラで労災は認められる?精神障害の3つの要件と申請の流れで確かめてください。

パワハラの労災認定は本当に難しいのか:令和7年度の数字

「労災は認められない」という話の根拠になりやすいのが、認定率の低さです。令和7年度(2026年7月15日公表)の精神障害の数字は、請求4,958件、決定3,839件、支給決定1,082件、認定率28.2%でした。ただ、この認定率はあらゆる出来事を合わせた値です。出来事別の表から、パワハラに関係する行を抜き出すと次のようになります。

評価された出来事(評価表の項目) 決定件数 うち支給決定 支給決定の割合(筆者の計算)
上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた 403 222 約55.1%
同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた 133 62 約46.6%
退職を強要された 61 11 約18.0%
上司とのトラブルがあった 1,061 36 約3.4%

出典は厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」の別添資料2(表2-8)です。割合は資料にない値で、筆者が件数から計算しました。

この表から読み取れるのは、「パワハラを受けたと訴えた人」と「パワハラの項目で評価された人」は同じではない、ということです。上司との間の出来事を請求しても、調査で業務指導の範囲内の叱責と判断されれば「上司とのトラブル」の項目で評価され、支給は決定1,061件のうち36件にとどまります。この数字の読み方や5年間の推移は精神障害の労災認定件数【令和7年度】請求・支給決定とパワハラの割合で扱います。

認められにくくなる5つの理由

厚生労働省のパンフレットにある認定のフローチャートでは、業務による心理的負荷の総合評価が「弱」や「中」にとどまると、その時点で労災にはならないと示されています。不支給になりやすい場面を、認定基準の仕組みから5つに分けると次のとおりです。

  1. 出来事がパワハラの項目に当てはまらない。 評価表の項目22は平均的な強度が最も重い「Ⅲ」ですが、業務指導の範囲内と判断されると項目24(平均「Ⅱ」)で評価されます。叱責に業務上の必要性がなかったことや、時間・場所・言葉が社会通念の範囲を超えていたことを示す事実が足りないと、この分かれ目で不利になります。
  2. 「強」に届かない。 項目22でも、反復・継続していない攻撃は「中」の例とされています。何回、どれくらいの期間続いたか、会社に相談したのに改善されなかったかといった事実が分からないと、「中」と評価されることがあります。
  3. 物差しが本人の感じ方ではない。 評価は、職種や立場、年齢、経験が似た「同種の労働者」が一般的にどう受け止めるかで行われます。本人にとってどれだけつらかったかだけでは「強」の根拠にならず、出来事の中身を具体的に示す必要があります。
  4. 関係者の説明と食い違う。 労働基準監督署は上司や同僚からも聴き取ります。会社側が「指導だった」「そんな発言はない」と説明した場合、本人の記録やほかの資料で事実を確かめられるかが判断を左右します。認定基準は、主張が相反する場合などに法律の専門家の意見を求めるとしています。
  5. 発病の時期や病名がずれる。 評価の対象は発病前おおむね6か月の出来事です。受診が遅れて発病時期の見立てがずれたり、病名が対象疾病(心身症は含まれない)に当たらなかったりすると、出来事の評価以前のところで要件を満たさないことがあります。病名の範囲は精神障害の労災の対象疾病とはで整理しています。

このほか、私生活で離婚や家族の死亡など強い出来事があった場合は、それが発病の原因といえるかが詳しく調べられます。ただし認定基準は、仕事以外の出来事があっても、それで発病したことが医学的に明らかとはいえない場合には要件を満たすとしており、私生活の事情があるだけで対象外になるわけではありません。

認定で見られる点に合わせた準備

5つの理由は、裏返すと調査で確かめられる点の一覧です。それぞれに対応する準備を表にしました。

認定で見られる点と、今からできる準備
見られる点 準備すること
パワハラの項目に当たるか(指導との境目) 叱責の前後の業務の状況、指示の内容、言われた言葉をそのまま書く。業務と関係のない人格否定や、人前での長時間の叱責かを分かるようにする
「強」に届くか(続き方・会社の対応) 日付ごとの記録で回数と期間を示す。会社に相談した日・相手・回答と、その後も続いたかを残す
事実を確かめられるか メール・チャット・録音・同僚の名前・医療機関の受診日など、本人の申し立て以外の手がかりを記録に書き添える
発病時期と病名 体調の変化に気づいた日と、そのころの出来事を受診時に主治医へ伝える。通院歴も隠さない
業務以外の事情 私生活の出来事も時期を整理しておき、聴取で聞かれたら事実として答える

記録の書き方はパワハラの記録の書き方、指導との境目を示す残し方はパワハラと指導の境目を示す記録、会社への相談を書面にする方法はパワハラ相談の記録を会社に残してもらうが役に立ちます。体調の変化はパワハラによる体調の変化を記録するの型で残せます。

請求のときは、出来事を時期・相手・内容の順に並べた書面を作っておくと、調査で説明がぶれにくくなります。たとえば次のように、事実と回数を分けて書きます。

記入例:「2026年4月から6月まで、課長の○○から、朝礼後に他の社員の前で週3回ほど10〜20分叱責された。5月12日には『給料泥棒』『辞めてしまえ』と言われた。5月20日に人事部の△△に相談したが、その後も叱責は続いた。」

書面のまとめ方は精神障害の労災の申立書の書き方で扱います。記録が少なくても請求はできますが、思い出せる範囲で日付と言葉を書き出しておくことが、評価の土台になります。

不支給になったとき・一人で進めるのが不安なとき

不支給の決定に納得できないときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、労働者災害補償保険審査官へ審査請求ができます(労働保険審査官及び労働保険審査会法8条)。令和7年度の統計では、精神障害で審査請求などにより当初の決定が取り消され、新たに支給決定された件数が28件ありました(支給決定件数とは別に数えられています)。期限と手順は労災が不支給になったらを見てください。

手続きの負担が大きいと感じるときは、書類の作成を社会保険労務士に、会社への損害賠償も含めて考えるなら弁護士に相談する方法があります。違いは精神障害の労災申請は社労士・弁護士に頼むか、申請で得られるものと負担はパワハラで労災申請するメリット・デメリットで整理しています。労災に当たるかどうかの一般的な質問は、事業場を管轄する労働基準監督署でも聞けます。

体調が悪いときは、認定の見込みを考えるより先に休むことと受診を優先してください。電話やLINEで話せる窓口は仕事がつらい・限界のときの相談先にまとめています。

よくある質問

Q. 認定率が28.2%なら、請求した人の7割以上は認められないということですか?

認定率は、その年度に決定が出た件数(3,839件)に占める支給決定件数(1,082件)の割合で、請求件数で割った値ではありません。決定には前年度以前に請求された分も含まれます。また出来事別に見ると、パワハラの項目は決定403件のうち222件が支給決定で、全体の認定率とは差があります。

Q. パワハラとは別に、離婚や借金など私生活の悩みもありました。労災はあきらめるべきですか?

認定基準は、私生活で強い出来事があった場合に詳しく調べ、それが発病の原因といえるかを慎重に判断するとしています。私生活の出来事があるだけで対象外になる仕組みではありません。厚生労働省の認定事例にも、発病直前に家族の事故があったものの、顕著な要因ではないとして認定された例があります。隠さずに事実を伝えたうえで、職場の出来事の記録を厚くしておくことが大切です。

Q. 自分で集めた記録が少ないと、請求しても意味がありませんか?

労働基準監督署は、本人の申し立てだけでなく、上司や同僚などの関係者からの聴き取りや勤務記録も集めて事実を確かめます。記録が少なくても請求はできます。そのうえで、日時・言葉・回数をできるだけ思い出して書き出し、相談した相手やメールなど、ほかの人や資料で確かめられる手がかりを添えておくと、調査で事実をたどってもらいやすくなります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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