労基署と労働局の違い:パワハラはどちらに相談するのが合うか
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労基署(労働基準監督署)と労働局(都道府県労働局)の違いは、労働局が都道府県ごとに置かれた厚生労働省の地方機関で、その管内で労働基準行政の第一線を担うのが労基署という関係にあります。パワーハラスメント(パワハラ)そのものを担当しているのは、労働局の中の**雇用環境・均等部(室)**です。労基署が担当するのは、残業代・賃金・労働時間・解雇の手続などの労働基準法の問題と、労災保険です。どちらか迷ったら、労働局と労基署の両方に置かれている総合労働相談コーナーに相談すれば、担当の部署へつないでもらえます。
労基署と労働局の違い:所管と権限の比較
まず、組織の関係と担当する分野を並べます。
| 比べる点 | 都道府県労働局 | 労働基準監督署(労基署) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 厚生労働省の地方機関。都道府県に一つずつ | 労働局の管内に置かれた、労働基準行政の第一線の機関 |
| 中の主な部署 | 雇用環境・均等部(室)、労働基準部、職業安定部 など | 監督・安全衛生・労災の担当 |
| パワハラ・セクハラ・マタハラ | 雇用環境・均等部(室)が担当。相談、労働局長の援助、調停 | 担当ではない(総合労働相談コーナーで相談は可) |
| 労働基準法の違反(賃金・労働時間など) | 労働基準部が施策を所掌 | 相談・申告を受け、事業場を監督・指導する |
| 労災保険 | 労働基準部が労災補償の事務を所掌 | 労災の請求の窓口 |
| 総合労働相談コーナー | 局内にある | 署内にもある |
| 受付 | 平日の日中(雇用環境・均等部(室)は平日のみ) | 平日の日中(祝日・年末年始を除く) |
東京労働局の業務案内では、雇用環境・均等部はパワハラ・解雇とマタハラ・セクハラの相談を一体的に扱い、紛争の防止と解決(調停・あっせん等)に取り組むとされています。労働基準部は労働基準法・労働安全衛生法の施行と労災補償の事務を、労働基準監督署は「労働基準行政の第一線機関として」労働条件の確保・改善、安全衛生の指導、労災保険給付などを担当すると説明されています。
パワハラの防止は、労働基準法ではなく労働施策総合推進法で定められています(会社の措置義務は第31条)。この法律に基づく紛争の解決は、労働局長の援助(第36条)と調停(第37条)で行うと定められています(第35条)。ここが、パワハラの担当が労基署ではなく雇用環境・均等部(室)になる理由です。
相談内容ごとの振り分け表:パワハラ・賃金・労災・解雇
実際の悩みは、パワハラと別の問題が重なっていることがよくあります。相談したい内容ごとに、行き先を分けます。
| 相談したいこと | 主な相談先 | 根拠になる法律 |
|---|---|---|
| 上司からの暴言・無視・過大な要求など、パワハラをやめさせたい | 労働局 雇用環境・均等部(室) | 労働施策総合推進法 |
| セクハラ、妊娠・出産・育休に関する嫌がらせ | 労働局 雇用環境・均等部(室) | 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法 |
| 残業代が払われない、賃金が遅れる | 労働基準監督署 | 労働基準法 |
| 長時間労働、休憩・休日が取れない | 労働基準監督署 | 労働基準法 |
| 有給休暇を取らせてもらえない | 労働基準監督署 | 労働基準法 |
| 予告なしに即日解雇された、解雇予告手当が払われない | 労働基準監督署 | 労働基準法第20条(解雇の予告) |
| 退職証明書を出してもらえない | 労働基準監督署 | 労働基準法第22条 |
| 解雇や退職勧奨そのものに納得できない | 総合労働相談コーナー(助言・指導、あっせんの案内)、弁護士 | 個別労働関係紛争解決促進法 など |
| パワハラで心身を壊した、労災を申請したい | 労働基準監督署 | 労働者災害補償保険法 |
| どれに当たるか分からない | 総合労働相談コーナー | — |
解雇の場合は、手続の問題と、解雇そのものの問題を分けて考えるのがポイントです。予告や予告手当といった労働基準法の手続が守られていないなら労基署の担当です。一方、「解雇の理由に納得できない」「辞めさせられ方がおかしい」という争いは、総合労働相談コーナーで労働局長の助言・指導やあっせんの案内を受けるか、弁護士に相談する分野です。
パワハラで体を壊したときの労災の流れはパワハラによる精神障害の労災認定:3つの要件と申請の流れ、労基署が扱えない分野の早見表は労働基準監督署ができること・できないこと:相談前の早見表で確かめられます。
労働局(雇用環境・均等部(室))でできること
パワハラを会社に働きかけてもらいたいときの中心は、雇用環境・均等部(室)です。できることは段階に分かれます。
- 相談:パワハラの相談を無料で受け付けます。ハラスメントの相談は匿名でもできます
- 労働局長の援助:当事者の申出を受けて、労働局長が双方の意見を聴き、会社に助言・指導・勧告を行います
- 調停:弁護士や大学教授などの調停委員が、働く人と会社の双方から事情を聴き、調停案を作って受諾を勧めます
厚生労働省の案内では、援助と調停は無料で、関係者以外に内容は公にされません。援助を求めたことや調停を申請したことを理由とする解雇などの不利益な扱いも禁じられています(労働施策総合推進法第36条2項・第37条2項)。
ただし、調停案を受け入れるかどうかは当事者が決めます。会社が応じなければ、裁判所の手続(労働審判など)や弁護士への相談を考える段階に進みます。手続の詳細は労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできることで扱っています。
労基署でできることと、パワハラで使う場面
労基署の強みは、労働基準法などの違反について、事業場を監督・指導する権限を持っていることです。労働者は、会社の労働基準法違反の事実を労基署や労働基準監督官に申告でき、申告したことを理由とする解雇などの不利益な扱いは禁じられています(労働基準法第104条)。
パワハラの相談で労基署が役に立つのは、次のような場面です。
- パワハラと一緒に、残業代の未払いや長時間労働がある:その部分を申告する
- パワハラで心身を壊し、労災の請求を考えている:労災の請求の窓口になる
- 辞めるときに、退職証明書や最後の給料で会社ともめている:労働基準法の定めに沿った対応を求める
逆に、「上司の暴言をやめさせてほしい」「慰謝料を払わせてほしい」という相談は、労基署の担当ではありません。労基署で担当の窓口を案内されたときの考え方は、パワハラは労基に相談できる?労基署が動かないと言われる理由と窓口で整理しています。申告の進め方は労働基準監督署への申告のしかた:申告書の書き方と相談との違いにまとめています。
迷ったら総合労働相談コーナーから:行く前の準備
労基署か労働局か決めきれないときは、総合労働相談コーナーが入口になります。労働局の中にも労基署の中にもあり、全国の労働局・労基署などに置かれています。無料で予約は不要ですが、専門の相談員が不在の日時があるため、行く前に電話しておくと確実です。
相談では、問題を一つずつ分けて話すと、担当の振り分けがスムーズです。
話し方の例:「相談したいことが二つあります。一つは、上司から毎日のように人前で怒鳴られていることです。もう一つは、先月分の残業代が払われていないことです。それぞれ、どこに何を相談すればよいか教えてください。」
持っていくとよいもの:
- 出来事の記録(日付・言われたこと・された内容)
- 給与明細・タイムカードや勤怠の記録(賃金・残業の問題があるとき)
- 雇用契約書・就業規則・会社とのメールやチャット
- 診断書や通院の記録(体調を崩しているとき)
それぞれの窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表で確かめてください。すでに退職した人が使える窓口と期限の考え方は、次の記事退職後でもパワハラを相談できる?辞めた後に使える窓口と期限で整理しています。
労働局の入口となる窓口は総合労働相談コーナーとは?予約不要・無料でできる相談と次の手続きで、労基署での相談の進め方は労働基準監督署に相談する方法:扱える問題と相談の流れ・持ち物で確かめられます。
よくある質問
Q. 労基署の中にある総合労働相談コーナーでパワハラを相談してもよいですか?
相談できます。総合労働相談コーナーは労働基準監督署の中にもあり、パワハラを含む労働問題全般を受け付けています。会社への援助や調停を求める段階になると、労働局の雇用環境・均等部(室)が担当するので、そこへつないでもらう流れになります。
Q. パワハラと残業代の未払いが両方あるときは、どちらに行けばよいですか?
二つに分けて考えます。残業代の未払いは労働基準法の問題なので労働基準監督署、パワハラは雇用環境・均等部(室)です。一度に済ませたいなら、まず総合労働相談コーナーで両方を話し、それぞれの担当につないでもらう方法もあります。
出典・参考にした公的な情報
- 東京労働局 各部の業務内容(雇用環境・均等部・労働基準部、労働基準監督署)(東京労働局)
- 相談窓口等一覧(労働基準監督署の相談内容・受付時間)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(雇用環境・均等部(室)の相談)(厚生労働省)
- 紛争解決援助制度と調停のご案内(令和7年度版)(厚生労働省)
- 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)(厚生労働省)
- 労働基準法 第20条・第22条・第104条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働施策総合推進法 第31条・第35条〜第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。