仕事を辞めたいけどお金ないとき:辞める前に確かめる制度と順番
この記事のもくじ
貯金がなくて辞められないとき、先にやるのは「辞める日を決める」ことではなく、辞めたあとの2〜3か月の収入と支出の見通しを立てることです。使える制度は、失業保険(雇用保険の基本手当)、傷病手当金、保険料の軽減や免除、公的な貸付、職業訓練中の給付などがあります。ただし、失業保険は辞めた直後には出ず、空白の期間があります。この記事では、その空白を含めた収入の時系列、毎月の支出の見積もり、足りないときの制度、動く順番を示します。
辞めたあとに入るお金:失業保険の目安と、もらえるまでの空白
失業保険は、就職する意思と能力があるのに仕事に就けない人に出る手当です。病気やけがですぐに働けない人は対象外で、その場合は受給期間の延長(後述)を使います。
受給の条件と日数の考え方は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受給の条件 | 離職日以前2年間に、被保険者期間が通算12か月以上(特定受給資格者・特定理由離職者は、離職日以前1年間に通算6か月以上) |
| 日額 | 離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金(賞与を除く)の合計÷180が「賃金日額」。基本手当日額はその約50〜80%(60〜64歳は45〜80%) |
| 日額の上限 | 令和8年8月1日現在、30歳未満7,450円、30〜44歳8,270円、45〜59歳9,110円、60〜64歳7,830円(毎年8月1日に改定。最新額はハローワークで確かめる) |
| 所定給付日数 | 自己都合などの一般の離職者は90〜150日。特定受給資格者は年齢と被保険者期間で90〜330日 |
賃金日額の例(筆者の計算)として、離職前6か月の毎月の賃金が24万円の場合は、24万円×6÷180=8,000円です。基本手当日額はこの約50〜80%の範囲、つまり1日あたり4,000円〜6,400円の幅に収まります。手取りではなく、賞与を除いた額面から計算する点に注意してください。
支給までの空白
求職申込みをしてから最初の振込までの流れは次のとおりです。
- 求職申込みと離職票の提出(住居地のハローワーク)。受給資格が決まります。
- 待期7日:失業している日が通算7日に満たない間は支給されません。
- 給付制限:正当な理由のない自己都合退職は、待期のあと原則1か月(離職日が令和7年4月1日以降)。5年間に2回以上受給資格の決定を受けている場合などは3か月です。
- 失業認定:原則4週間に1回、ハローワークで認定を受けます。認定日から通常5営業日で振り込まれます。
このため、自己都合で辞める場合は、待期と給付制限だけで約5週間は支給がなく、そのあとに認定と振込が続くことになります。生活費は、辞めてから2か月近くは失業保険に頼れない前提で見ておくと安全です(この期間の見方は筆者の整理です)。
給付制限は、特定受給資格者・特定理由離職者にはかかりません。指示された公共職業訓練を受ける人も、給付制限がかかりません。教育訓練等を受けた(受けている)場合の解除もあります。パワハラで辞めたときの離職理由の扱いはパワハラ退職を会社都合にするには:離職理由の異議とハローワークでの申し出に、手続きの流れは失業保険の手続きの流れ:ハローワークでの求職申込みから受給までにあります。
体調が悪いとき:先に休む道と、受給期間の延長
心や体の不調で働けない状態なら、辞める前に確かめる制度が二つあります。
- 傷病手当金(健康保険):業務外の病気やけがで仕事に就けず、連続する3日間の待期を含めて4日以上休み、給与が出ない(傷病手当金の額より少ないときは差額)ときに支給されます。支給は開始日から通算1年6か月です。仕組みは休職中の傷病手当金はいくら?条件・計算式・期間を協会けんぽで確認で扱っています。退職後も続けて受ける条件は休職から退職後も傷病手当金を受け取る条件:辞める前の確認にあります。
- 受給期間の延長:辞めたあとに病気などで引き続き30日以上働けない場合、失業保険の受給期間(原則1年)を延長できます。延長できるのは最長3年で、受給期間と合わせて最大4年です。手続きはすぐ働けないときの失業保険:受給期間延長の手続きと期限で扱っています。
退職日の過ごし方で結果が変わることがあるため、傷病手当金を退職後も受けたいときは、退職日を決める前に加入先(協会けんぽなど)に条件を聞くのが先です。
パワハラが原因の心の病気であれば、労災保険の対象になる道もあります。パワハラによる精神障害の労災認定:3つの要件と申請の流れで要件を確かめてください。労災が認められると、傷病手当金の対象外(業務上の病気は労災の扱い)になる点も、窓口で併せて聞きます。
毎月の支出を見積もる:辞めたあとに増える費用
在職中は給与から引かれていた費用が、退職後は自分で払う支出になります。
| 費用 | 目安・払い方 | 軽くする制度・相談先 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 任意継続(退職時の標準報酬月額×保険料率)か、国民健康保険(市区町村が計算) | 特定受給資格者・特定理由離職者は国保料の軽減(前年の給与所得を100分の30として計算)。市区町村の国保窓口 |
| 国民年金 | 令和8年度は月17,920円。納付期限は翌月末日 | 失業等による特例免除・納付猶予。市区町村の国民年金窓口 |
| 住民税 | 前年の所得にかかるため、収入がなくなっても請求が続く。辞めた月で払い方が変わる | 市区町村の税務窓口に納期限前に相談 |
| 家賃・光熱費 | 契約どおり | 住居確保給付金(離職・廃業後2年以内など)。自立相談支援機関 |
健康保険の選び方は退職後の健康保険の選び方:任意継続・国民健康保険・家族の扶養に、年金と住民税の手続きは退職後の年金・住民税の手続き:辞めた月で変わる払い方にあります。紙に「入るお金」と「出るお金」を月ごとに並べると、足りない月が分かります。次の形で書き出せます(金額は自分の数字に置き換え、国民年金の月17,920円は令和8年度の額です)。
| 月 | 入るお金 | 出るお金 | 差し引き |
|---|---|---|---|
| 退職月 | 最後の給与(住民税の一括徴収があれば差し引く) | 家賃・光熱費・食費、国保または任意継続の保険料 | |
| 翌月〜2か月目 | (自己都合なら)失業保険は未支給。傷病手当金・貯金の取り崩し | 上に加えて国民年金(令和8年度は月17,920円)、住民税の納付書 | |
| 3か月目以降 | 失業認定後の基本手当(賃金日額×率×認定日数) | 同上 |
足りないときの公的な制度:給付と貸付の違い
入るお金と出るお金を並べて足りないとき、公的な制度を返済が要るかどうかで分けて見ます。
| 制度 | 給付か貸付か | 主な中身 | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 住居確保給付金 | 給付(返済なし) | 離職・廃業後2年以内の主たる生計維持者などに、家賃相当額を原則3か月(延長は2回まで、最大9か月)。自治体から貸主へ直接支払い。収入・資産・求職活動等の要件があり、額の上限は市区町村ごと | 自立相談支援機関 |
| 職業訓練受講給付金(求職者支援制度) | 給付(返済なし) | 訓練受講中に月10万円ほか。本人収入・世帯収入・金融資産などの要件がある | ハローワーク |
| 公共職業訓練(離職者訓練) | 手当 | 雇用保険の受給者が指示を受けて受講すると、所定給付日数が終わったあとも訓練終了まで基本手当が出る。受講手当・通所手当もある | ハローワーク |
| 緊急小口資金 | 貸付(返済あり) | 10万円以内。無利子、保証人不要 | 市区町村の社会福祉協議会 |
| 総合支援資金(生活支援費) | 貸付(返済あり) | 単身で月15万円以内、二人以上で月20万円以内。原則3か月(最長12か月)。連帯保証人を立てれば無利子、立てない場合は年1.5% | 市区町村の社会福祉協議会 |
貸付は「給付」ではなく、返す必要のあるお金です。対象は低所得世帯などに限られます。職業訓練受講給付金の要件は、ここに書いたもの以外にもあるため、申込みの前にハローワークで全体を聞いてください。休職中の人向けの詳しい整理は休職中でお金がないとき:公的な貸付・支援制度の探し方と相談先にあり、辞めたあとの人も同じ制度を使えます。
辞める順番の目安:6つのステップ
- 入社からの期間を数える。 離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あるか(特定受給資格者などは1年間に6か月以上)を、雇用保険被保険者証や給与明細で確かめます。体調が許すなら、退職日を決めるときの材料にします。
- 体調が悪ければ、先に受診して休めるかを医師に相談する。 休職中に傷病手当金を受けられる道があるか、会社の規程とあわせて確かめます。
- 辞めたあとの生活費を月ごとに書き出す。 上の費用表を使い、2か月分の空白をカバーできるかを見ます。
- 有給休暇の残りと最後の給与の支払日を確かめる。 退職日の調整ができれば、収入のない期間を短くできます。有給の扱いは退職時の有給消化:拒否されたときの考え方と伝え方の例文で扱っています。
- 足りない分の制度を、市区町村の窓口で聞く。 自立相談支援機関、社会福祉協議会、国保・年金の窓口です。
- 辞めるかどうかの判断は、別に整理する。 辞めるか、休むか、異動を求めるかの比較は仕事を辞めたいとき最初にすること:辞める・休む・異動を比べる判断の順番で扱っています。
心身が限界に近く、お金の整理どころではないと感じるときは、仕事がつらい・限界のときの相談先:電話・LINEの窓口と受付時間の窓口を先に使ってください。
避けたいこと
お金が足りないと、手近な借入や、受給をうたう民間のサービスに手が伸びがちです。返済の見通しが立たないまま高い利息で借りると、その後の暮らしを圧迫します。「退職後に給付金が受け取れる」とうたう有料の支援は、申し込む前に「退職給付金」サポートは使うべき?国民生活センターの注意喚起を読んでください。公的な制度は、いずれも自分で窓口に申請して受けられるものです。
よくある質問
Q. 貯金がほとんどなくても、先に辞めてしまって大丈夫ですか?
体や心が限界に近いときは、お金の見通しより健康を優先する判断もありえます。ただし、失業保険は支給までに空白があり、国民健康保険料や年金、住民税の請求も続くため、辞める前に数週間分でも生活費の見通しを立てておくと、あとで選べる道が広がります。医師の判断で休める状態なら、先に休職して傷病手当金を受ける道も確かめてください。
Q. 失業保険は辞めたらすぐにもらえますか?
すぐには出ません。求職申込みのあと、失業している日が通算7日になるまでは支給されず、正当な理由のない自己都合で辞めた場合は、離職日が令和7年4月1日以降なら原則さらに1か月の給付制限があります。会社都合の扱いになる場合や、指示された公共職業訓練を受ける場合は、この給付制限がかかりません。
Q. お金を借りるなら、まず何を確かめればよいですか?
返済が要らない制度を先に確かめます。傷病手当金、失業保険、住居確保給付金などです。そのうえで、借りる場合は市区町村の社会福祉協議会が窓口の生活福祉資金など公的な貸付を先に検討し、民間の高い利息の借入は最後にします。制度が分からないときは、市区町村の自立相談支援機関が入口になります。
出典・参考にした公的な情報
- 基本手当(失業保険)の概要・日額・上限額・受給期間・傷病手当(ハローワークインターネットサービス(厚生労働省))
- 基本手当の所定給付日数(ハローワークインターネットサービス(厚生労働省))
- 令和7年4月1日以降の自己都合離職者の給付制限(厚生労働省)
- 雇用保険の具体的な手続き(受給手続きの流れ)(ハローワークインターネットサービス(厚生労働省))
- 傷病手当金(支給の条件・支給期間)(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 生活福祉資金貸付制度(厚生労働省)
- 住居確保給付金(厚生労働省(生活支援特設ウェブサイト))
- ハロートレーニング(公的職業訓練・求職者支援制度)(厚生労働省)
- 失業等による特例免除(国民年金保険料)(日本年金機構)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。