パワハラの後の転職が怖い:次の職場で繰り返さないための準備
この記事のもくじ
次の職場で同じ目に遭うかどうかは、入社前に言い切れることではありません。ですが、起きたときにすぐ動ける職場かどうかは、求人の段階、面接、内定後、入社後の4つの場面で確かめられます。怖さをなくそうとするより、怖さを「確かめる項目」に変えていくのが、この記事の進め方です。
転職の全体の進め方はパワハラで転職するときの進め方:在職中に探すか辞めてから探すかにあります。
怖さの中身を、確かめる項目に分ける
「また同じことが起きるのでは」という怖さは、中身を分けると対策が見えてきます。どれが一番近いか、当てはまるものに印をつけてください。
| 怖さの中身 | 確かめる方法 | 確かめる時期 |
|---|---|---|
| 厳しい上司に当たるのでは | 配属先の上司・チームの人数を聞く。可能なら配属先の人と話す機会を頼む | 面接〜内定後 |
| 辞めにくい雰囲気なのでは | 平均的な勤続年数や、中途入社者の定着の様子を聞く | 面接 |
| 起きても相談できないのでは | 相談窓口の有無・窓口の担当者・外部窓口の有無を聞く | 面接〜内定後 |
| 起きても自分が耐えてしまうのでは | 入社前に相談先と「ここまで来たら動く」目安を決めておく | 内定後〜入社後 |
| 求人の内容と実際が違うのでは | 労働条件通知書で業務内容・勤務時間・賃金を照合する | 内定後 |
最後の「自分が耐えてしまう」は、職場を選ぶ話ではなく、自分の動き方を決めておく話です。この項目は、入社前に相談先と動く目安を紙に書いておくことで、準備できる部分です。なお、正社員で戻ること自体が怖いという人は、働き方を変える選択肢も並べて比べてかまいません。比較は正社員以外の働き方:派遣・パート・業務委託の違いと選ぶ前の確認点にあります。
会社に求められている体制を知っておく
質問を作る前に、会社が法律上どんな体制を求められているかを知っておくと、聞く内容が定まります。労働施策総合推進法第31条は、事業主に対し、職場でのパワハラにより労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ適切に対応するための体制の整備その他の措置を講じることを義務づけています。この義務は、大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から課されており、現在は企業規模を問わず対象です。
厚生労働省のパワハラ指針が挙げる措置の例は次のとおりです。
| 指針の措置 | 内容の例 | 面接・内定後に聞く質問 |
|---|---|---|
| 方針の明確化と周知 | パワハラを行ってはならない方針と、行為者への対処を就業規則などに定めて周知する | 「ハラスメントに関する規定は、就業規則のどこにありますか」 |
| 相談窓口の設置 | 担当者を定める、外部の機関に委託するなど | 「相談窓口は社内ですか、外部ですか。誰が対応しますか」 |
| 事後の対応 | 事実関係の確認、被害者・行為者への措置、再発防止 | 「相談があったとき、その後の流れはどう決まっていますか」 |
| プライバシーの保護 | 相談者・行為者の情報を守り、その旨を周知する | 「相談内容は、誰まで共有されますか」 |
| 不利益取扱いの禁止 | 相談したことを理由とする不利益な取扱いをしない旨を周知する | 「相談した人が不利にならない決まりは、どこに書いてありますか」 |
指針は、窓口の担当者に対し、パワハラに該当するか微妙な場合であっても広く相談に対応することを求めています。つまり「これくらいで相談していいのか」と迷う段階でも、窓口は使ってよいものとして設計されています。
応募前と面接で確かめること
求人の段階では、厚生労働省の「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」が使えます。企業の勤務実態や採用状況などの職場情報を検索・比較できるサイトで、掲載企業は2026年10月1日時点で15万社を超えています。載っていない会社もあるため、載っていないこと自体を悪い材料にはしません。口コミサイトの読み方は転職先のパワハラを口コミで調べる:評判サイトの読み方と限界、公開情報から職場を見る方法はパワハラが少ない職場の選び方:公開情報で確かめる10項目で詳しく扱っています。
面接では、次のように「入社後の安心のため」という形で聞くと、角が立ちません。
文例(面接の逆質問):「入社後に安心して力を発揮したいので、困りごとが出たときの相談先を知りたいです。社内の窓口や、上司以外に相談できる方はいらっしゃいますか。」
配属先や上司、離職状況を聞く質問の文例は、面接でブラック企業の見分け方:逆質問と職場見学で確かめる点にまとめています。この記事では質問を増やすより、上の表で自分が何を怖がっているかを先に決め、その項目に絞って聞くほうを勧めます。
質問に対する反応も見どころです。落ち着いて具体的に答える会社と、「うちは風通しがいいから」と抽象的に返す会社では、体制の整い方が違うことがあります。ただし、一度の面接の印象で判断が固まるわけではないので、内定後にもう一度確かめる機会を残しておきます。求人票や面接での見分け方の全体はブラック企業の見分け方:求人票で確かめる12項目と危ない書き方と面接でブラック企業の見分け方:逆質問と職場見学で確かめる点で整理しています。
内定後、入社前に書面で確かめること
内定が出たら、入社を承諾する前に確かめられる最後の機会です。
- 労働条件通知書を受け取り、業務内容・勤務地・勤務時間・賃金を求人票と照らす。職業安定法第5条の3は、募集や職業紹介にあたり、業務の内容と賃金・労働時間などの労働条件を明示するよう求めています
- ハラスメントの規定と相談窓口の連絡先を、人事に教えてもらえるか聞く
- 配属先と直属の上司が決まっているかを確かめ、決まっていれば、一度話せる機会を頼む
- 試用期間の長さと、その間の評価の方法を確かめる
文例(内定後に人事へ送るメール):「内定のご連絡をありがとうございます。入社に向けて、労働条件通知書に加えて、就業規則のハラスメントに関する部分と、相談窓口の連絡先を教えていただけますでしょうか。」
求人票と実際の条件が違うと感じたときは、ハローワークの求人ホットライン(03-6858-8609、8時30分〜17時15分、土日祝も受付、年末年始を除く)に申し出る道もあります。条件の食い違いは、入社後の整理を扱った転職したばかりで会社を辞めたい:短期離職の前に確かめることと伝え方で詳しく見られます。
入社後に、早めに相談できる体制を自分で作る
入社後の最初の3か月は、環境が整うまでの時期です。次の準備をしておくと、何かあったときに動き出しが早くなります。
- 入社初日に、相談窓口の連絡先と、外部の窓口の番号を手帳やスマートフォンに控える(番号はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表で確かめる)
- 上司以外に、気軽に話せる相手を1人つくる(人事、同期、近い部署の先輩など)
- 違和感を覚えた出来事は、小さいうちに日付と言葉で残す。書き方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つき
- 自分で決めた「相談する目安」を、手帳に書いておく(例:同じ言動が2回続いたら、人事に連絡する)
目安を事前に決めておくのは、渦中では「もう少し様子を見よう」と判断を先送りしやすいためです。迷ったときに従える基準を、落ち着いている入社前のうちに、低めに設定して紙に書いておきます。
転職支援サービスを使うなら、職場の雰囲気や配属先の様子を、求人情報にない範囲で担当者から聞けるかを確かめる選択肢があります。ただし、担当者が知っている範囲には限りがあり、企業側の立場の情報であることも踏まえておきます。
それでも起きてしまったときの備え
どれだけ確かめても、起きる可能性をゼロにはできません。起きたときのために、次の2つだけ頭に入れておいてください。
- 入社直後でも、社内の窓口と外部の窓口の両方が使えること。入社まもない時期の動き方は転職した後にまたパワハラに遭ったら:入社直後でも使える相談先と4つの道で整理しています
- 転職活動が思うように進まず不安なときは、パワハラ退職後に転職が決まらないとき:見直す3つの点と公的支援で見直す点を扱っています
怖さが強く、眠れない日が続くなど、転職どころではないと感じるときは、転職活動を急ぐ必要はありません。仕事がつらい・限界のときの相談先:電話・LINEの窓口と受付時間にある窓口を使い、回復を優先してください。
よくある質問
Q. 転職先で同じことが起きないと、前もって分かりますか?
起きないと言い切れる方法はありません。ただ、相談窓口があるか、窓口を使った人が不利に扱われない決まりがあるか、上司以外に相談できる相手がいるかは、面接や内定後に聞いて確かめられます。起きる確率を読むより、起きたときにすぐ動ける職場かどうかを見るほうが、現実的な備えになります。
Q. 面接でハラスメント対策を質問すると、悪い印象になりませんか?
聞き方次第です。「前の職場でこうだった」と持ち出すのではなく、「入社後に安心して働くために、相談窓口の使い方を知りたい」と、働き方の確認として聞けば、不自然な質問ではありません。会社には相談体制を整える義務があるため、体制の説明を求めること自体は、会社の責任に沿った質問です。
Q. 入社後すぐに相談したら、評価に響きませんか?
労働施策総合推進法第31条は、相談したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。評価への影響が気になるときは、まず相談窓口の担当者に、相談内容がどの範囲で共有されるかを聞いてください。プライバシーを守る措置も、会社が講じるべき措置に含まれています。
出典・参考にした公的な情報
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針本文を収録)(厚生労働省)
- 職場情報総合サイト(しょくばらぼ)(厚生労働省)
- 職業安定法 第5条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。