管理職の仕事を辞めたいとき:降格希望・異動・転職の選び方
管理職の仕事を辞めたいときの答えは、辞めるか続けるかの二択ではありません。役職だけ降りる(降格希望)、部署を変える(異動)、一度休む、会社を変える(転職・退職)という4つの道を、つらさの原因に合わせて選びます。原因が「責任の重さや板挟み」なら降格や異動が合いやすく、「上からのパワハラ」や「会社そのものが合わない」なら相談と転職が候補になります。
管理職がしんどい理由を4つに分ける
「管理職 しんどい」と感じる理由は人によって違います。先に原因を分けると、使える手が見えてきます。
| 原因 | 具体的な場面 | 合いやすい道 |
|---|---|---|
| 責任の重さ・板挟み | 上の方針と現場の不満の間に立つ。数字の責任だけ重い | 降格希望、担当の見直し、異動 |
| 上からの圧力 | 人前での叱責、達成不能な目標、役割を奪うような扱い | 記録と相談、異動、転職 |
| 下からの突き上げ | 部下が集団で反発する。指示に従わず、人事へ訴えると言われる | 上司・人事への報告、体制の見直し |
| 待遇と実態のずれ | 役職は付いたが権限がなく、残業代も出ない | 名ばかり管理職の確認、労基署への相談 |
複数が重なっていることも多いので、1つに絞れなくて大丈夫です。紙に4行書き出して、いちばん重いものに印を付けてください。会社を辞めたい理由全般の整理は会社を辞めたい理由を書き出す:仕事量・待遇・働き方の整理表の表も使えます。
上からのパワハラと、部下からの突き上げをどう見るか
管理職であっても、職場のパワーハラスメント(パワハラ)の相談はできます。厚生労働省の指針では、職場のパワハラを次の3つをすべて満たすものとしています。①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、です。
上からの言動。 指針の6類型には、管理職に関係する例があります。過小な要求の「該当すると考えられる例」に、管理職である労働者を退職させるため、誰にでも遂行可能な業務を行わせることが挙がっています。精神的な攻撃の例には、他の労働者の面前での大声での威圧的な叱責を繰り返し行うことがあります。自分の経験に近いものがないか、指針の表で見てください。
下からの言動。 優越的な関係は上司だけとは限りません。指針は、業務に必要な知識や豊富な経験を持ち、その人の協力がないと仕事が進まない部下の言動や、抵抗しにくい部下の集団による行為も、例として挙げています。部下から集団で無視される、必要な情報を渡してもらえないといった状況は、人間関係からの切り離しの類型と照らして整理できます。
一方で、管理職の適正な指導や業務指示は、指針の上でもパワハラに当たりません。部下への指導に自信をなくしている人は、パワハラが怖くて指導できない管理職へ:指針が示す適正な指導の線を読むと、線の引き方が分かります。
どちらの場合も、当たるかどうかをここで決める必要はありません。日時、相手、言葉、その場にいた人を残してから、会社の窓口か外部に相談します。記録の取り方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきにあります。
名ばかり管理職になっていないかを確かめる
役職名が管理職でも、労働基準法の「管理監督者」に当たるとは限りません。労働基準法第41条第2号は、事業の種類にかかわらず「監督若しくは管理の地位にある者」について、労働時間・休憩・休日の規定を適用しないとしています。ここでいう管理監督者かどうかは、肩書きではなく実態で見られます。
厚生労働省のQ&Aは、職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金などの待遇を基準に挙げ、当てはまらない要素がなくても実態に照らして総合的に判断されるとしています。自分の働き方を、次の項目で確かめてみてください。
- 採用や部下の評価、人員配置に、実際に関われているか
- 出社・退社の時間を、自分の判断で決められるか
- 役職手当や賞与が、一般の社員より明らかに高いか
- 残業が続いても、時間給に直すと最低賃金に近い水準になっていないか
当てはまらない項目が多い場合は、労働基準監督署への相談を考えてください。扱える問題と流れは労働基準監督署に相談する方法:扱える問題と相談の流れ・持ち物で確かめられます。残業の記録の残し方は残業の証拠の残し方:長時間労働を自分で記録する方法と注意点にまとめています。管理監督者に当たるかどうかの判断は、労基署などの窓口が事実を見て行うものです。
降格希望・異動・転職を比べる
役職がつらいだけなら、会社を辞めずに済む道があります。4つを同じ軸で並べます。
| 道 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 降格希望(役職を降りる) | 仕事や職場は好きで、責任の重さだけがつらい | 役職手当などの減額幅、元の等級に戻れるか、周りへの見え方 |
| 異動 | 原因が特定の上司や部署にある | 異動先の候補があるか、希望が通るまでの期間 |
| 休む(休職) | 眠れない、食欲がないなど体に出ている | 就業規則の休職の定め、傷病手当金の条件 |
| 転職・退職 | 会社の方針や文化そのものが合わない | 引継ぎの期間、転職先で同じ立場を求められないか |
降格希望。 役職を降りたいときは、まず就業規則や賃金規程で、役職手当・等級の決まりを確かめます。労働条件は、働く人と会社が合意すれば変えられます(労働契約法第8条)。一方、会社が合意なしに就業規則を変えて不利益に変えることは、原則としてできません(同法第9条。第10条に例外があります)。自分から希望する場合は、合意の中身を後で説明できるように書面を残してください。
人事への伝え方の例:「現在の管理職の責任を担い続けることが難しくなりました。一般職としての役割に戻ることを相談させてください。時期、役職手当の扱い、後任への引継ぎ期間について、書面で確認したいと考えています。」
異動。 上からのパワハラが原因なら、指針は事実が確認された場合の被害者への配慮の例として、引き離すための配置転換を挙げています。会社が実際に何をするかは事案ごとに違うので、希望として伝える形にします。伝え方はパワハラで異動したいとき:異動希望の伝え方と会社が配慮すべきことに文例があります。
休む。 体の不調が出ているなら、決める前に休むことを先に考えてください。管理職でも、健康保険の傷病手当金の対象になりえます。要件と計算は休職中の傷病手当金はいくら?条件・計算式・期間を協会けんぽで確認で確かめられます。限界を感じているときの電話・LINEの窓口は仕事がつらい・限界のときの相談先:電話・LINEの窓口と受付時間にあります。
辞める・転職するときの進め方
辞めると決めたら、段取りは次の順番です。
- 退職希望日と引継ぎの案を書き出す。 部下の人数、進行中の案件、決裁の流れ、取引先との窓口を一覧にします
- 直属の上司か人事に、書面を添えて伝える。 期間の定めのない雇用は、退職の申入れから2週間で終了します(民法第627条第1項)。就業規則との関係は退職は2週間で成立する?民法627条・628条と即日退職の考え方で整理しています
- 部下への説明を、上司と相談して決める。 先に噂が広がると、引継ぎが進みにくくなります
- 引継ぎ資料を残す。 何を残せばよいかは退職の引き継ぎをしないとどうなる?最低限残すものと伝え方が参考になります
転職先を探すときは、管理職の経験を数字で書き出しておくと伝わります。部下の人数、担当した予算や売上の規模、改善した指標を、それぞれ書いておきます。転職理由を聞かれたときの言い方は、転職理由が人間関係のとき:面接で伝わる言い換えの例文に例があります。
面接での言い方の例:「前職では管理職として部下の育成と数字の責任を担いました。次は、自分の専門を深めながらチームに貢献できる役割を探しています。」
管理職を続ける転職か、専門職として働く転職かで、探し方が変わります。求人探しや面接の準備を一人で進めるのが負担なら、転職支援サービスを使う方法もあります。
辞めるかどうか自体を決めきれない人は、全体の順番を仕事を辞めたいとき最初にすること:辞める・休む・異動を比べる判断の順番で見直してください。人手が足りず辞めづらい人は、次の人手不足で仕事を辞めたいけど辞めづらいとき:退職できる理由と伝え方に進みます。人間関係が主な原因なら、人間関係で仕事を辞めたいとき:異動・相談・転職の選び方も合います。
営業の部署を率いていて数字の詰めがつらい人は営業の仕事を辞めたい:ノルマと詰めがつらいときの整理、育児と管理職の両立で悩む人は子育て中に仕事を辞めたいとき:両立の制度を使う・転職するの比較も参考になります。
よくある質問
Q. 管理職は降格を自分から願い出てもよいのですか?
願い出ること自体は禁じられていません。ただし、降格に伴って役職手当や基本給が下がる場合は、減る額と時期を書面で確かめてから合意してください。賃金などの労働条件は、働く人と会社の合意で変えるのが原則です(労働契約法第8条)。
Q. 管理職でも、パワハラの相談窓口を使えますか?
使えます。労働施策総合推進法第31条の措置義務は、会社が雇う労働者全体を守るためのもので、管理職を外してはいません。厚生労働省の指針も、方針の周知を管理監督者を含む労働者に行うよう求めています。
Q. 部下に辞めたいと伝える前に、上司へ先に話すべきですか?
退職の意思を最初に伝える相手は、自分の直属の上司か人事が一般的です。部下や同僚に先に話すと、噂が先に広がって引継ぎの段取りが崩れやすくなります。退職希望日と引継ぎの案を書面にしてから話すと、話が進みます。
出典・参考にした公的な情報
- 労働基準法 第41条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A(厚生労働省)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点)(厚生労働省)
- 労働契約法 第8条〜第10条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第627条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。